前編の最後には、金融業界特有のヒエラルキー構造がDXを難しくしていると語った岸和良氏(金融IT協会 デジタル人材育成委員長)。しかし課題はそれだけではなく、後編では「IT部門もこれまでの立ち位置やマインドから変わるべき」という問題提起が行われた。本稿で引き続き議論の内容をお届けする。昨今のトレンドであるAIが金融業界のIT体質にもたらすインパクトや、そもそも業界横断のコミュニティを作る意味にも言及があった。
かつて傍流だったIT部門/情報システム部門も“本流”へと変わる時
岸氏:(前編の最後で話題に出た)越境は有効な手段ですが、もう一つ、新しいことに挑戦するうえで考えなければいけない課題があります。それは、テクノロジーの進展による「ITの民主化」についてです。
情報システム部門が何かを作らなければITやDXの物事が進まないというのは、かなり大きなネックです。情報システム部門は、基本的に社内で発注されたものしか作らないというカルチャーで長年やってきたため、新しいことに挑戦するのを怖がる傾向にあります。
ただ、それが変わるのを待っているようでは、いつまで経っても変革が前に進みません。基幹システムのようなものはIT側の部門に任せるしかないですが、周辺のシステムであれば、事業部門の人間でも使えるようなツールがたくさんありますから、起点はIT側でなくても可能ですし、こうした民主化の流れはどんどん広がっていくと思います。
岡田氏: 私は、金融業界を変えていくためには、IT部門も変わらなければいけないと考えています。たしかに今まではIT部門は傍流でしたが、今やテクノロジーは企業の競争を左右しますし、そこにAI時代の到来も重なって、IT部門は本流側になってきています。
金融業界でも、IT部門が「カッコいい存在」になるべきだと思います。他の業界では、IT部門出身の方が本流になり、将来的にその会社のトップになるような方が現れる可能性は十分にあるでしょう。金融業界でも、そのくらいの動きが起これば変わると思います。
──たしかに重要なことだと思います。ただ、従来は傍流だったために他社との直接的な競争領域ではなかったITが、経営や事業の中核になっていくわけですよね。そうなると、いずれ越境で情報共有することが難しくなっていく可能性はありませんか。
岡田氏:もちろん難しくなる分野もあるでしょう。デジタルを活用した事業などは、すでに競争領域になっています。ただ、「非競争領域」というのは必ずあるはずなんです。基盤の技術的な部分や、ガイドライン、セキュリティなどのリスク対策といった分野は、競争領域になることはないでしょう。
当然、ガチンコで戦うことになる競争領域はITの世界でもこれから増えていきますが、競争・非競争の領域をしっかり定義できていれば、いつの時代だって絶対に業界横断で知見を共有し合えるはずですし、非競争領域はむしろ増えていくと思っています。
この記事は参考になりましたか?
- 金融業界のDX・IT民主化を「コミュニティ」の力で前へ!連載記事一覧
-
- 金融業界で長年「傍流」だったIT部門が変わる時──AI時代で「中央集権型」のITカルチャー...
- 住友生命保険・岸和良氏と語る「金融DX」の現在地、業界特有ピラミッド型組織も「越境」の力で...
- 金融業界横断でIT・DX課題を乗り越える──発足から1年過ぎた金融IT協会が190社超コミ...
- この記事の著者
-
森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
