「今こそ経理が輝くチャンス」野村不動産HD 今川氏に訊く、社員への“強制力”で推進した経理DXの裏側
ガバナンス強化の視点から、強気の施策で業務プロセスを変革
膨大な経費明細処理や根強い業界特有の課題、ガバナンス面の懸念などを解消すべく、野村不動産ホールディングスで積極的な経理DXを推進しているのが、資金部 副部長の今川友博氏だ。同社の取り組みは、2020年の電子帳簿保存法緩和などの法改正を追い風に加速。「Concur Expense」や「Bill One」といったツールの導入に加え、交通系ICカード利用履歴の自動連携サービス「ICCI」の利用を義務化するなど、徹底したデジタル化を図ってきた。単なるシステム導入に留まらず、利用状況の可視化や徹底した注意喚起を行うことで、名実ともに業務プロセスを変革。その結果、経理部が「感謝される組織」へと変化を遂げたという。
125万件に及ぶ明細の処理に追われていた
連結従業員数8,732人、関連会社数50社以上(ともに2025年3月末時点)と不動産業界でも大きな規模を誇る野村不動産グループ。その持株会社である野村不動産ホールディングスで経理業務のデジタル化を積極的に進めているのが、同社 資金部 副部長 兼 事務推進二課長の今川友博氏だ。
同氏は2003年に野村不動産へ入社し、マンション「プラウド」の販売や用地仕入などを担当。その後、2010年にほぼ未経験の状態で経理部に異動した。当初は簿記3級の勉強をするところからスタートし、2015年に現在の部署である資金部に移ったという。
資金部は、金融機関からの資金調達や、入金・出金、出納業務など文字どおり「資金を扱う部署」だ。いわゆる財務部門のような働きをしている部署だと今川氏は説明する。2019年に会計基幹システムをスクラッチからSAPに切り替えるプロジェクトに参加して以降、同氏は経理業務のDXに取り組んできた。
同社が進める経理DXの軸には、「業務・プロセスの変革」がある。今まで続いてきた無駄な作業を自動化・効率化し、本質的な価値創造に割ける時間を最大化することを目的に、経費精算の自動化や請求書処理の効率化など、さまざまな施策を打ってきたという。
そもそも、同社が経理業務のデジタル化を進める以前は、経費精算における金額の打ち間違えや日付のミスなどをチェックする手間が大きな負担となっていた。また、経費の立替に関する社内ルールが厳格に定まっていなかったこともあり、社員の中には私的なポイント付与などを目的に、個人用のカードで経費を立て替えたがる者もいたという。これは、ガバナンス面でも大きな問題につながりかねない。
また、不動産業界ならではの課題もあった。主な取引会社であるゼネコンなどではいまだ紙文化が色濃く残っており、請求書のやりとりを紙で行うことも多い。そのほか、不動産業界の働き方として「細かな近隣場所への移動が多い」という特徴があるという。配信ドラマ『地面師たち』を見た方は想像に難くないと思うが、不動産業界では土地所有者との顔合わせや物件の調査など、必然的に細かな移動が生じる。同社が年間で処理する明細の件数は約125万件に及び、そのうちの約100万件が近隣電車やバス、タクシーの明細だ。
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