海外ベンダーが猛威をふるう中、「国産AI」に勝ち筋はあるのか?開発者×政府×弁護士が現状を徹底議論
日本企業がAI活用を成功させるために、変革すべきこととは
「イチバンじゃないと意味がない」は間違い 日本がAI領域で優位に立つためにすべきこととは
佐久間:では、次のテーマに移ろうと思います。次のテーマは「国産AIは実現するのか」です。先ほどまでの話を踏まえると、翻訳AIなどの特定の専門分野に対して高度なAI活用を実現したいときに、国産AIが重要になるのではないかと思うのですが、あらためて日本でAI活用を前向きに進めていく際に、国産AIの文脈で取り組むべきことをうかがえればと思います。まず、今城さんはどう思われますか。
今城:LLMは、事前に学習させた知識・情報によって出力結果が大きく左右されます。なので、そのモデルの中にどれだけ国内のデータが読み込まれているかが重要な視点になってきますよね。その点で言うと、弊社のモデルは日本の上場企業に付与される証券コードや社名なども学習させています。このように、国内の詳細なデータを扱える事前学習モデルを保持できるという部分に、国産AIの意義があるのではと思います。
佐久間:ありがとうございます。LLMベースのサービスに焦点を絞った際、日本企業の今後の課題として「データの整備」が挙げられると思うのですが、今城さんはどう思われますか。
今城:データ整備に関しては、社内向けデータと社外に公開可能なデータの判断が難しいという点は課題だと思います。たとえば、社外に既に出しているマニュアルであれば、学習データとして社外のLLMに読み込ませても良いはずですが、判断が難しく結局読み込ませないこともありますよね。公開可能な情報を積極的に読み込ませれば、国産モデルの性能向上にもつながります。どのデータは社外公開OK、どのデータはNGといったかたちで、しっかり整理していただきたいです。
佐久間:ありがとうございます。続いて、楠さんは実際にデジタル庁で国産AIを導入されてみて、どのように感じていらっしゃいますか。
楠:現時点で庁内にはPLaMo翻訳しか入っていないので「まだまだこれから」というのが本音ですが、データの整備に関しては、LLM開発者の方と一緒にディスカッションしながら進められたことが国産AIを入れて良かったと思う点ですね。
一方で、日本はまだAIに対しての投資額が他国と比べると劣っている現状があります。その中で、どう戦っていくのかというのは重要な焦点になるのではないでしょうか。ただ、今までのITの歴史を振り返っても、「大きい投資をしている人が勝つ」わけではないですよね。きちんと戦略を立てて勝ち筋を考えられることと、たくさん試行錯誤することが重要なので、積極的にいろんなことを試してみることは大事だと思います。
佐久間:ありがとうございます。落合さんはどう思われますか。
落合:まず、生成AIの台頭によってデータ整備の重要性に気づく方々が増え始めたことは、注目すべき点だと思います。それを踏まえた次のアクションとして、どのデータなら社外に出しても良いのかという議論が進んでいますよね。データをシェアしやすい環境をどのように作っていけばよいのか、具体的な仕組みをしっかり作ることが重要だと考えています。
そういう意味で言うと、PETs(プライバシー強化技術)などの技術的手法も組み込まれていけば、自動化もしやすくなるので環境整備がスムーズに進むのではないでしょうか。加えて、実例が増えていけばデータ整備や国産AIの活用も自ずと進んでいくと思うので、今後も期待したいところです。

佐久間:ありがとうございます。最後に、皆さんの今後の展望についてうかがえればと思います。では、今城さんからお願いいたします。
今城:繰り返しにはなりますが、PLaMo翻訳をもっと高性能にすることが第一の目標です。技術的な精度も海外LLMに追いついてきた今、チャット性能でも十分戦える、なおかつ特化モデルとして国内での勝ち筋を見つけていきたいです。
楠:日本は1980年代の「Japan as No.1」という印象が強く、「イチバンじゃないと意味がない」という意識が蔓延している気がするのですが、そうではないと思うんですよね。30年前にLinuxが出てきたときに、まさか世界中で何十億台も動くような時代が来るとは思っていなかったですし。
また、今はAIによって世界で新卒採用が減っていますが、日本ではまだ新卒採用の文化が続いている企業が多いです。変化が生じているときこそ、若い人たちの柔軟な考え方が活きるはずです。加えて、我々人間がAI活用におけるボトルネックになることも、悪いことだとは思いません。それによって我々の行動が変わり、新しい発見につながる可能性があるんですから。今は、従来の方法に固執せず、自らが主体的に変わっていくべき時期だと思います。
落合:私も、自らの行動を変えて「使ってみる」「試してみる」ことが大事だと思います。規制のルールを定めるときも、「まずはやってみてから判断したらどうか」という話をよくしますので。
AIに関して法制度の観点から言うと、日本はちょうどいいバランス感で進められていると思います。厳しく規制するのではなく、どちらかといえばAIをより活用できるための法改正を行ってきた。今後、AIが真価を発揮してくれるのは、自動化による人手不足への対応、生産性向上などの側面だと思いますが、補助的利用にとどまらない、オートメーション化に対する法制度に関してはまだ議論が十分できていません。そのため、今後は規制や責任分担なども含め、そこの議論を進めていければと思います。
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