“オブザーバビリティ3.0”はIT運用変革の起爆剤となるか New Relicが拓く自律運用の新局面
爆増する監視データ、国外サーバーでの運用リスク……AI時代のインシデント管理はどう変わるのか
スマートフォンアプリから企業の基幹システムまで、ビジネスの根幹を支えるIT基盤では、データを収集・分析してインサイトを得る「可観測性(オブザーバビリティ)」が欠かせない存在になっている。一方で、生成AIの普及によりソフトウェアの開発スピードが爆発的に向上するなか、システム運用の現場では人間の管理能力を超える複雑さへの対応が課題になりつつある。New Relicは、AIと人間が協働しながらこの課題に向き合う状況を「スーパーヒューマン時代」と呼んでいる。こうした時代に、システムの健全性を維持するオブザーバビリティはどう進化すべきか。3月12日、New Relicはその一つの解として、自律型AI技術機能とアジア太平洋地域初となる日本データセンターの開設予定を発表した。本稿では、AIのためのオブザーバビリティと、AIエージェントによる自律的なインシデント管理がもたらす運用変革についてレポートする。
「スーパーヒューマン時代」に求められる“オブザーバビリティ第3世代”とは
生成AIの普及により、GitHubへのコードプッシュ数は爆発的に増加し、エンジニアの生産性は飛躍的に向上している。しかし、その裏側で運用負荷の増大が深刻化していることも事実だ。人間が到底追いつけないスピードでコードが追加・デプロイされる現在では、システムの全体像を把握し、トラブルを未然に防ぐことは人間の能力だけでは不可能になりつつある。
New Relic CEOのアシャン・ウィリー氏は、この現状を「AIと人が一緒に対応していく『スーパーヒューマン時代』に突入した」と表現する。ウィリー氏はAIによって生産性が向上した一方で、システム停止による損失(アウテージコスト)が「1時間あたり平均200万ドルに達する」と同社の調査結果を示した。エンジニアがトラブル対応に費やす時間は全体の33%に上るとし、「膨大なノイズを排除し、データ、洞察、アクション間のギャップを解消することが、これからのオブザーバビリティの課題だ」と指摘した。
New Relicが提唱する「インテリジェント・オブザーバビリティ」は、単にデータを収集して可視化する段階(オブザーバビリティ1.0)、すべてのデータを1つのプラットフォームに統合する段階(同2.0)を超え、AIがデータを分析して原因を特定し、アクションまで実行する「第3世代(同3.0)」を指す。同社は、これが複雑化しすぎたITスタックを管理するための解決策になると位置づけている。
「AIの監視」と自律型エージェントの構築
AI時代にオブザーバビリティが果たす役割には、2つの側面がある。1つは「AIのパフォーマンスや運用の監視」であり、もう1つは「AIを活用した自律運用」だ。前者で多くの企業が直面する課題は、LLMの運用、アプリケーションのパフォーマンス管理とコストの最適化である。New Relicはこの課題へのアプローチとして、「New Relic for AI」を通じて、OpenAIやAnthropicといった多様なモデルの稼働状況やAIエージェントの動作を包括的に可視化するソリューションを提供している。
また後者に挙げた自律運用をサポートするものとして、今回発表されたのが「Agentic Platform」だ。これは企業が独自のAIエージェントをノーコードで構築・デプロイ・管理するためのエンタープライズ向けプラットフォームとなる。従来、運用現場におけるAI活用は、特定タスクの自動化や固定的なスクリプトの置き換えにとどまるケースが多かった。一方Agentic Platformは、複数のAIエージェントを連携させ、より複雑なワークフローを自律的に実行できるよう設計されている。
エージェント間および外部システムとの連携には、オープンな標準プロトコルとして普及しつつある「Model Context Protocol(MCP)」を採用している。これにより、様々なデータソースや社内ナレッジベースとシームレスに接続でき、高度なコーディングスキルをもたないSREエンジニアや運用担当者でも、自社の知見を反映したカスタムAIエージェントを構築しやすくなる。
ウィリー氏は「これらの一連の機能群が、企業のIT運用を“AIによるインシデント管理と自律的運用”へと引き上げる原動力になる」と強調する。
この記事は参考になりましたか?
- 週刊DBオンライン 谷川耕一連載記事一覧
-
- “オブザーバビリティ3.0”はIT運用変革の起爆剤となるか New Relicが拓く自律運...
- データベースの主役はAIエージェントに “未知の負荷”をどう捌くか?「TiDB X」から探...
- なぜ日本IBMやJCBは「OpenText」を選ぶのか? 失敗しない「エンタープライズAI...
- この記事の著者
-
谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
