Databricksとの対比でみえたSnowflakeの真価:なぜ他社に“乗換可能”な環境に拘るのか
AIの成否を分けるのは「明確なデータ戦略」、自社の“コンテキスト”をAIに反映させるには
実は技術の囲い込みも? 競合・Databricksと差別化する「3つの強み」
特に日本の大手企業において、全社規模のデータプラットフォームを整備しようとした際に、Snowflakeと並んで比較検討されることが多いのがDatabricksだろう。Snowflakeは「AIの自律実行エンジン」として進化することを掲げているが、具体的にどのように差別化を図っているのか。クライナーマン氏は、Snowflakeの戦略の柱として「使いやすさ(シンプル性)」「接続性」「信頼性」という3つの軸を挙げ、競合との違いを示す。
まず第一の差別化要因である「使いやすさ(シンプル性)」について、クライナーマン氏は次のように語る。
「Databricksのアプローチは、ユーザーが自分たちで調整しなければならない機能が非常に多く、システムが複雑になりがちだ。これに対し、Snowflakeは可能な限り複雑さを裏側で処理し、ユーザーが直感的に、かつシンプルに使えることを追求している」(クライナーマン氏)
こうした使い勝手の良さは単なる利便性の問題ではなく、IT部門だけでなくビジネス部門のユーザーまでAI活用の裾野を広げるための戦略であることを示唆している。
2つ目の差別化要因として挙げたのが、10年以上注力してきた「接続性」だ。Snowflakeは社内データだけでなく、エコシステム内の他企業とのデータ共有を容易にする機能を多く有しており、これがデータのサイロ化を根底から打破する力をもつとクライナーマン氏。「Databricksも近年この領域を強化しているが、Snowflakeは長年の蓄積により、より洗練されたデータ共有モデルを確立している」と自負する。
そして3つ目の差別化要因が「信頼性」。これはセキュリティ、プライバシー、ガバナンスを設計段階から組み込んでいることを意味する。各クラウドプロバイダーをまたいだ自動的なフェイルオーバーとレプリケーションによる事業継続性の担保は、エンタープライズ企業が安心してAIを業務に組み込むための前提要件となる。
クライナーマン氏は、データの価値をいかに引き出すかという点において「どのようなクエリに対しても常に正しい結果を出し、かつ安全に運用できるのはSnowflakeだ」と断言する。両社のルーツを振り返ってみると、DatabricksがApache Sparkを用いたデータ変換から始まったのに対し、Snowflakeは最初から「データの活用」を主眼に置いてきたことに触れた。この出発点の違いが、現在のプロダクトの完成度と方向性に色濃く反映されているという。
オープン性を巡る攻防とSnowflakeの勝ち筋
同社はApache Iceberg形式のテーブルを管理するオープンソースのカタログサービス「Polaris Catalog」を提供するなど、ベンダーロックインを解消するオープンな機能を積極的に発表している。Databricksもオープン性を標榜しているが、クライナーマン氏はその実態に対して以下のように分析する。
「かつてオープンであることを強調していた競合他社は、顧客の離脱を恐れ、次第に独自のプロプライエタリな実装や、独自の仕様によるロックインを構築し始めている。特定の技術に紐づいたクローズドなカタログ機能などがその例だ」(クライナーマン氏)
こうした競合に対し、Snowflakeの勝ち筋は「製品の質そのものにある」という。顧客がいつでも他社へ乗り換えられるオープンな環境をあえて提供する理由について、同氏は「自分たちの製品の使い勝手とイノベーションのペースが他社を圧倒しているという自負があるからだ」と述べる。顧客をテクノロジーで縛り付けるのではなく、圧倒的な利便性と信頼によって選ばれ続ける状態を作ることこそが、Snowflakeが考える真のオープン戦略だ。
専門家とビジネスユーザーを支える二極のAI戦略
そんなSnowflakeのAI戦略は、高度な専門職向けと、広範なビジネスユーザー向けの両輪で構成されている。まず開発者向けには「Cortex Code」を提供することで、開発者を煩雑な作業から解放し、より高度なロジック開発に注力するためのサポートを行う狙いだ。Cortex CodeにはSnowflakeを熟知したエンジニアの知見が技術アシスタントとして組み込まれており、自分のラップトップ上で安全に、かつ高精度に実行できる環境を開発者へ提供できる環境を整えている。
一方で、ビジネス部門のユーザーを支援する機能として提供されているのが「Snowflake Intelligence」だ。これは、自然言語で質問を投げればAIが回答を導き出す「会話型インテリジェンス」で、「従来のダッシュボードを見てユーザー自身で分析するBI(Business Intelligence)ツールのあり方を一変させるものだ」とクライナーマン氏。ビジネスユーザーはSQLなどの技術的知識を必要とせず、あたかもアシスタントと対話するようにデータから洞察を得ることができるようになる。
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