首都圏を中心に店舗展開する、スーパーマーケットチェーンのサミット。同社は日本の小売業界で、堅実かつ先進的にデジタル変革を進める企業として知られており、一過性のトレンドに流されることなく、現場の業務改善と顧客価値の向上に直結するデータ活用を追求してきた。その過程で、多様な業務アプリケーションのバックエンドとしても機能する、新たなデータプラットフォームを構築している。大量データを扱いながら運用負荷を抑え、業務アプリケーションまで支えるデータ基盤をどう実現したのか。その中心にあるデータベース「TiDB」をなぜ選び、どのような価値を見いだしているのか。インフラを意識させない設計思想について、同社 情報システム部の小池朋昭氏に話を聞いた。
「小売DX」を推進するサミット 直面してきたデータ運用の変遷
サミットが本格的に「DX」をキーワードに掲げ、組織的にデータ分析・活用の取り組みを進めたのは約3年前のことだ。それ以前の同社には、データ分析専用システムが存在していた。旧システムは列指向の分析に強みをもっており、大量のデータ処理において一定の性能を発揮していたが、サポート終了の時期を迎えた。
これを契機として、同社はデータ基盤の近代化へと舵を切り、クラウドのリレーショナルデータベース環境へと移行。しかし、移行後の環境では旧システム並みの処理性能や、現場が求めるだけの柔軟かつ即応的なデータ運用を十分に実現できなかった。小売業におけるデータ活用は、日々の流行や店舗の状況によって、要求されるデータの切り口が絶え間なく変化する。インフラの制約でデータ運用の柔軟性が損なわれれば、現場の意思決定は遅れてしまう。
こうした状況下、最初の分析基盤は、グループ全体における小売業データ活用のニーズに応えるため、グループ内に新設された専門企業へと移管されることとなった。分析基盤がグループ全体の共通領域へと移ったことで、サミット自身で試行錯誤や、現場が求めるスピードにあわせたシステム変更などを柔軟にコントロールすることが難しくなる。そこでサミットは、現場や本部が独自の業務改革を自律的に進めるため、より柔軟かつ拡張性に優れた、新たなデータ環境を確保する必要性に直面した。
ラフに扱っても止まらない 設計思想に共感した「TiDB」との出会い
自社に最適な環境を模索する中、小池氏は単一のサーバー性能に依存しない分散型データベースに注目し、新しく検討を進めた。その過程で見出したのが「TiDB」だ。
選定にあたって大きな利点となったのは、TiDBにコミュニティ版(TiDB Community Edition)が存在していたことだった。大規模な初期投資や複雑な契約手続きを経ることなく、オープンソースソフトウェアとして手軽に検証できる環境は、スモールスタートを重視する同社のスタンスに合致していた。実際にTiDBを用いて環境を構築・検証してみたところ、データベースエンジニアなどの専門家による手の込んだパフォーマンスチューニングを行わなくても、初期段階から期待以上の性能を発揮できたという。
「データベースを細かくチューニングし、設定を突き詰めること自体がエンジニアの本来の姿ではないと考えています。情報システム部の本質的な使命は、業務改革に直接貢献すること。インフラの背後にある複雑な調整にリソースを奪われることなく、ある程度ラフな使い方をしても止まらずに機能しつづける基盤こそが、現場の業務改善や新たなサービスのリリースを後押ししてくれます」(小池氏)
小池氏は、必要十分な処理性能を確保するための運用負荷を小さくするという、TiDBの設計思想を高く評価している。チューニングにかける時間を減らせれば、その分をビジネス価値につながるアプリケーション開発やデータ定義の見直しに振り向けられるからだ。この手応えを得たサミットでは、TiDBの利用範囲を社内で徐々に拡大していくことを決めた。
7年分のPOSデータを一元的に扱い、データのサイロ化も防ぐ サミット流のTiDB活用法
運用開始から現在に至るまで、サミットはTiDB環境を段階的に改善しながら、蓄積するデータの範囲を拡張してきた。現在は、クラウド上に独自のTiDB環境を構築し、過去7年分の膨大なPOSデータ、基幹系システムから抽出されたデータ、その他の各種周辺業務システムで発生する多種多様な業務データを集約している。
これほどの大容量データを保持しているにもかかわらず、小池氏は「期待していた以上に、とても高速に動作しています」とTiDBを評価した。大規模なデータに対して高いレスポンスを維持するためには、一般的にインデックスの設計、クエリの最適化などのチューニングが重要になる。小池氏は、「実は導入初期に想定した性能が出ない時期がありました。そこでアーキテクチャを見直し、『TiFlash』を正しく組み込んだところ、劇的にパフォーマンスが改善したのです。TiFlashの効果は大きいものでした」と明かす。TiDBは、TiKVとTiFlashを組み合わせることで、トランザクション処理と分析処理の負荷を分散させやすく、複雑なクエリに対しても安定したレスポンスを得やすい構成を実現できる。日常的なデータ更新を担う「行指向型ストレージ(TiKV)」とは別に、分析用のクエリを高速処理する「列指向型ストレージ(TiFlash)」をあわせもつ、TiDBの特性が活きているという。

この特性は、サミットのデータ活用を「単なる分析」から、多様な業務アプリケーションを支える「データプラットフォーム」へと進化させる原動力にもなっている。同社におけるTiDBは、“バックエンドの統合データ基盤”として位置づけられている。つまり、情報システム部やデータサイエンティストによる複雑な集計処理だけでなく、店舗の従業員や本部スタッフが利用するWebアプリケーションから発行される、予測が難しい多種多様なクエリに対しても高いパフォーマンスを保ったまま柔軟に応答しているのだ。また、アプリケーションの日常的な動作を支える、データ更新処理も同一環境で行われている。
何よりも小池氏が評価するのは、アプリケーションの機能や利用シナリオごとに、専用のデータマートやデータベース自体を個別に用意しなくてよくなった点だ。以前の環境では、データマート間で整合性を担保するための運用が複雑化していたが、現在は単一のTiDB環境だけで分析から業務アプリケーションのバックエンドまで一貫して対応できている。業務内容の変更にともなってアプリケーションの使い方や要求されるデータ構造が変わったとしてもインフラの柔軟性が高いため、変化に追随した開発環境も実現した。
なお、今回の導入にあたっては、MySQLとの高い互換性が功を奏している。新たなデータベース技術の導入にともなう開発者の学習コストや手間を最小限に抑えながら、環境構築後は、速やかに実業務での利用を開始できたからだ。また、オフショアの協力パートナーによるサポート体制も整っていたため、移行から運用の立ち上げまでを極めてスムーズに進められたとした。
TiDBのポテンシャルを解放へ マネージドサービスという選択肢でDXを加速させる
自社運用を通じてTiDBを活用してきたサミットは、DXにおける要件を満たすための強力なデータ基盤として機能することを実証した。しかし、小池氏は既にその先を見据えている。
「これまでの運用において、TiDBの強みを発揮することはできました。しかし、そのポテンシャルを十分に引き出せているとは言えません」(小池氏)
データベースがもつ本来のパフォーマンスを解放し、これからの小売業に求められるリアルタイムな意思決定、次世代アプリケーションの展開を加速させるために同社は、開発元のPingCAPが提供するマネージドサービスへの移行を次の選択肢に入れている。
マネージドサービスへと切り替える理由は、サミット側から見れば明快だ。監視やバックアップ、パッチ適用、複雑なリソース最適化といったインフラ運用を専門性の高いサービス基盤に委ねることで、社内のエンジニアはインフラの維持管理から解放され、より本質的な業務改革やアプリケーション開発に注力できるようになる。さらに、継続的なアップデートや運用監視を通じて、セキュリティ水準の維持・向上にもつなげられる点は大きなメリットだ。余計な運用負荷を抑えながら、TiDBの性能や機能を最大限に引き出せる環境を整えることで、データを活用した業務改革や次世代アプリケーションの開発スピードが高まり、ビジネスの変化に俊敏に対応するための基盤はより強固なものとなる。
データベースの専門知識や職人的なノウハウがなくとも、TiDBの設計に基づいたサービスを活用することで、パフォーマンスの課題を抑えつつ、安定したデータ活用環境を構築できる。高度なインフラ技術が標準機能として隠れているからこそ、サミットは技術そのものではなく、現場の業務をどのように変えていき、どんなサービスにつなげるかという本質的な業務に集中できる。同社のDXの歩みは、これからもTiDBをはじめとする最新テクノロジーとともに進化していくだろう。

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提供:PingCAP株式会社
【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社
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