社内でのAI活用がPoCから「全社展開」へと進まないワケ──AIの有用性だけでは突破できない3つの壁
解決策となる「生成AIエージェント基盤」には2つの機能が必要、セゾンテクノロジーが出した答えとは?
【権限の壁】誰が管理し、誰がどの範囲で利用するのか。責任者は誰か
PoCから全社展開のフェーズへ移ると、まず「権限」の観点で変化が起こる。限定的なトライアル期間ともいえるPoCにおいては、AIの利用者は特定部門の数名に限られるうえ、誰が使っているのかも把握しやすい。「まずは使ってみる」「反応を見る」というのが目的だからだ。
しかし部門展開、さらには全社展開へ進むと、管理者は誰か、利用者は誰か、異動や退職があったときに誰が権限を見直すのかといった管理が必要になる。「権限の壁とは、使える人を増やすだけでなく『誰が、どの範囲で、どの責任の下で使うのか』を設計することだ」と笹田氏は整理する。

同氏は、ある社内AI活用プロジェクトのユースケースとともに具体例を示した。プロジェクトの推進役である担当者Aは、PoC段階では数名の検証メンバーと営業用の「提案支援AIエージェント」を検証・試用していたが、そのときはAIが学習・処理するデータは、検証用に選んだ製品資料や提案サンプルに限られていた。
ところが全社展開の話になると、営業部門だけでなく人事部門、ひいては新入社員からも「使いたい」という声が上がってきた。しかし、部門や全社に展開するとなると、そこには特定部門や役員だけがアクセスできるような資料も存在する。そこでAは、AIエージェントごとに権限を設定し、入口に制限をかけることでこの壁を乗り越えた。
【セキュリティの壁】データをどこまで見せるのか、どう守るのか
続いて、「セキュリティ」でも勝手が大きく変わってくる。PoC段階では、サンプルデータや機密性の低い情報を使い、影響範囲を小さくした状態で検証できる。しかし、全社で業務に使うとなれば、AIはどうしても実データに近づいていく。
また、扱う情報が増えれば増えるほど、当然だが守るべき情報も増えていく。AIがアクセスしてよいデータ、してはいけないデータをどう分離するか。「機密性の高い情報に限っては、権限のない利用者には見せない」という設計が可能か。AIの回答に、本来出してはいけない情報が混ざらないよう設計できるか……。セキュリティの壁とは、AIにデータをどう渡すかではなく、「業務で使えるAIの精度を実現しながらも、守るべき情報をどう守るか」を考えることだ。

ユースケースでは、担当者Aがある案件について、AIに「次の対応方針を教えてください」と相談する場面が紹介された。AIはなかなか筋の良い回答を出してきたものの、Aはふと不安になる。この回答は、本来見せてはいけない資料まで参照していないか。機密情報や個人情報が混ざる可能性はないか……。そこでAは、エージェントごとにあらかじめ参照範囲の制限をかけておくことで、この壁を乗り越えた。
【データ整備の壁】「記録のためのデータ」と「活用のためのデータ」は違う
最後に「データ整備」の壁だ。PoC段階では、AIに資料を入れてみて「それらしい回答」が返ってくるだけでも手応えを感じられるだろう。ただ、壁打ち相手としては使えても、全社運用の観点では力不足である。
そもそも、ただ情報をそのままAIに読ませるだけでは不十分だ。なぜなら、業務データは「AIが使いやすい形」で整理されているとは限らないからだ。資料の形式や保管先の整理、最新版・正式版の判別、背景知識や暗黙知の言語化──これらが整って初めて、それぞれのデータが意味を持つ。笹田氏は、データ整備の壁とは「単にAIに情報を入れることではなく、AIが業務で『判断材料として扱える状態』にすることだ」と述べる。

こちらのユースケースでは、検証用にまとめられた綺麗な資料では上手く回答できたAIが、案件管理システムの商談履歴や問い合わせ記録、受注・失注理由の入力欄といった、「人が業務を記録するために残したデータ」では、判断材料として使いにくいという現実が示された。記録のためのデータを「活用のためのデータ」に変えるには、それなりの整理が必要となる。
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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提供:株式会社セゾンテクノロジー
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