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生成AI時代のデータガバナンス再設計

なぜAIエージェントが「データガバナンス」の論点になるのか? 高性能モデルを選定するよりも大切なこと

【第4回】AIエージェントに求められるデータ整備と統制

AIエージェントで最低限整えるべき「データの条件」とは

 では、AIエージェントを業務で使うために、最低限どのようなデータの条件が必要なのか。すべてを完璧に整備することは現実的ではないが、少なくとも下図の5点は押さえておきたい。

[画像クリックで拡大]

 ここでは、「データ資産の管理」をAIの判断にあわせて整備することになる。

オントロジーモデルやメタデータ整備の重要性

 AIエージェントにおける「オントロジーモデル」や「メタデータ整備」が重要だと言われても、直感的にはわかりにくいかもしれない。だが、AIエージェントの動きを考えると、その重要性は非常に大きい。

 AIエージェントは大まかに言えば、「指示を受ける ⇒ 業務上の意味を理解する ⇒ 必要な情報を探す ⇒ 判断する ⇒ 実行手順を選ぶ ⇒ 結果を返す」という流れで動く。

 従来の検索システムやRAGでは、「どの文書を探すか」が中心だった。しかし、AIエージェントでは、それだけでは足りない。「申請とは何か」「承認とは何か」「顧客とは誰か」「どの条件で処理を進めてよいのか」といった業務上の意味を理解し、判断する必要がある。このとき重要になるのがオントロジーモデルだ。

 オントロジーモデルとは、業務で使われる概念や用語、その関係性を定義した知識モデルである。たとえば、「顧客」「契約」「製品」「注文」「請求」「承認」といった概念を整理し、それらがどのような関係で結び付いているのかを定義する。

 人間であれば、「契約が成立した顧客に対して請求が発生する」「承認されていない申請は実行できない」といった“業務上の常識”を理解している。しかし、AIはその関係性を明示的に与えなければ理解できない。オントロジーモデルは、AIエージェントが業務上の意味を理解するための土台になるのである。

[画像クリックで拡大]

 一方、業務上の意味を与えるだけでは十分ではない。同じ業務に関する情報であっても、正式な規程と参考資料、最新版と旧版、公開可能な情報と機密情報では扱い方が異なる。

 そこで重要になるのがメタデータだ。たとえば、次のような情報が整備されていると、AIエージェントはより適切な判断を行いやすくなる。

  • 作成部門
  • 更新日
  • 版数
  • 有効期限
  • 機密区分
  • 文書種別
  • 対象業務
  • 対象製品、地域、顧客
  • 正本/参考/ドラフトの区分
  • 利用可能な業務範囲
  • 実行可否、承認要否

 これらがあると、AIエージェントは単に「本文が似ている情報」を探すのではなく、「人事部門が管理する最新版の正式規程を優先する」「失効済みの手順書は除外する」「機密区分に応じて参照範囲を制御する」「承認が必要な処理は自動実行しない」といった判断を行えるようになる。

 また、説明可能性にも大きく寄与する。利用者に対して、「この判断は人事部が管理する正式規程に基づいています」「この処理は承認権限が必要なため自動実行していません」と示せれば、AIエージェントへの信頼性は高まる。逆に、どの概念を理解し、どの情報を参照し、なぜその判断に至ったのかが説明できないAIは業務では使いにくい。

次のページ
継続運用に乗せるための役割とルール

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この記事の著者

小林 靖典(コバヤシ ヤスノリ)

ショーリ・ストラテジー&コンサルティング株式会社 ディレクター国内大手コンサルティングファームにて、データマネジメント・コンサルティングチームの立ち上げを主導。現在はショーリ・ストラテジー&コンサルティングにてデータ領域の専門チームを率い、データドリブン推進、AI導入支援、データマネジメント/データガバナンス領域のサービスを提供。データ領域のコンサルタントとして十数年以上にわたり、製造業(自動車、電機、機械、化学、食品)を中心に、小売業、通信サービス、金融・保険業、製薬...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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