AIエージェントの過失は誰が責任を負うのか?弁護士に訊く、本格実装前に知るべきAIガバナンスの観点
「人のチェック」が最後の砦ではなくなる?AIエージェント時代のセキュリティと説明責任
ルール整備はビジネス部門を巻き込む。明文化すべき4つの要素
AIエージェントの導入にともなう損失を最小化し、企業の法的安全性を高めるためのルール整備は、専門知識をもつ法務部門やシステムを統括するIT部門に一任されがちだが、そのような縦割り型の対応は避けるべきだと清水氏は指摘する。「一部門だけだと全体像をつかみづらく、どうしても視野が狭くなってしまいがちだ」として、ビジネス部門を巻き込んでルールを策定することが重要だとした。具体的なルール作成の指針として、社内規定などで以下の4つの基本要素を明文化することを推奨する。
- 使用場面の明確化:AIを利用可能とする具体的な業務場面を明確にし、ルールとして明文化する
- 承認プロセスの定義:AIの回答を適用する際、誰がそれを確認して承認を与えるべきかをあらかじめ定義する
- AIへの入力ルールの制定:AIシステムに入力してよいデータの基準を定める
- AIによるアウトプットの取り扱い:AIによって出力されたものを誰がどのように管理すべきかを定める
AIガバナンスの本質は「データ」に。守る情報の優先順位をどうつける?
AIエージェントが企業で本格的に活用されるようになれば、将来的には国としてAIエージェントの利用に関するルールや規制が強化されることも考えられる。清水氏は「AIガバナンスの最重要ポイントの一つはデータガバナンスだ」として、AIモデルが安全かつ正確に機能するためのインフラとして、あらかじめ整理されたAI-Readyなデータを適切に配備しておくことの重要性を説いた。
「データガバナンスを実現する第一歩は、自社が本当に保護すべき“競争優位性の源泉となる高価値なデータ”を定義すること。守るべきデータを特定した上で、社内秘や極秘といったレベルに応じて“タグ付け”を行い、段階的な保護レベルを設定することが重要だ」と清水氏は語る。
また、AIガバナンスをコーポレートガバナンスの不可欠な一環として位置づけ、組織内に部門横断的な組織として「AIガバナンス委員会」を立ち上げることも有効だという。
「技術担当者、法務の専門家、そして各ビジネス部門のリーダーが一同に会し、多角的な知見からAIのリスクを継続評価する体制を構築することで、AIエージェントが実装されても強固なガバナンスを保てる土台を組織として築いていけるでしょう」(清水氏)

この記事は参考になりましたか?
- Security Online Press連載記事一覧
-
- AIエージェントの過失は誰が責任を負うのか?弁護士に訊く、本格実装前に知るべきAIガバナン...
- 元陸将 廣惠次郎氏が日本の「サイバー戦」能力強化に向けて期待すること──官民連携の発展を阻...
- AI時代の神経系「ネットワーク」、それを守る「セキュリティ」──2つの融合が企業生存の必須...
- この記事の著者
-
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
