現在地と目的地が分かっていないプロジェクトは失敗する──「ITで儲かる計画」を描く実践フレームワーク
第2回:ITを「タマゴを産むニワトリ」に育てる。必要なROIの可視化方法
「儲かる計画」を示す──ROIを可視化する実践フレームワーク
As-Is/To-Be分析で「何をやるべきか」が見えたら、次は「それにいくら投資して、いつ回収できるのか」を示す必要があります。現代のITは非常に複雑化しており、単年度の投資だけで事業上の目的を達成することは困難です。特にDXや新規事業は複数年にわたる中長期の投資が必要となり、途中で中止してしまうと、せっかく投資を行ったにも関わらず成果につながりません。さらに、こうした中途半端な投資を繰り返すと、現場の担当者の間で「どうせプロジェクトで頑張っても途中でうやむやになる」という“学習”が生じ、最初から真剣に取り組まなくなる「学習性無力感」という状態に陥ってしまいます。
「ウチではせっかく新しい取り組みを始めても続かない」とボヤく経営者は多いですが、多くの場合、その原因となる問題が投資の継続性にあることに彼らは気づいていません。また、投資計画は社内だけでなく、株主や資金調達先にも説明を行う必要があります。何のためにプロジェクトを実施して投資するのかに関する見通しをもっておくことは、対外的にも重要な取り組みです。
ROIを明確にするために有効なのが、累積ネットキャッシュフロー(NCF)の考え方。支出と想定売上を算出し、いつ投資が利益を生み出す(儲かる)のかを明確にするのです。
累積NCFを前掲のA社を例にとって算出したものが、次の図1-15です。案件マネジメントシステムを導入した場合の費用と改善される効果を累積NCFに落とし込んでいます。この図を作成することで、同システムは4年度以降に大きな利益を生み出し、“タマゴを産むニワトリ”となることが明確になるのです。
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もちろん、これらの想定は実際の結果と大きく変わることも予想されます。初年度にこの規模の投資を行うことは難しいという判断もあり得るでしょう。ITプロジェクトでは進行とともに前提条件や情報の確度が変化していくため、この累積NCF分析も定期的なアップデートが求められます。定期的な計画のアップデートは「ローリング方式」と呼ばれますが、不確実性の高いプロジェクトでは特に重要な考え方です。
まずは見通しを立て、情報の確度が上がるにつれて投資対効果の計画もアップデートしていくことで、追加投資の可否に関する意思決定を行えるようになるのです。そうすることで、IT投資を「勘と度胸の一発勝負」から「不確実性を前提とした冷静な中長期の計画」へと転換していくことができます。
As-Is/To-Beの地図を描き、累積NCFで投資対効果を可視化する──これが「タマゴを産むニワトリ」を育てるための基本的なフレームワークです。しかし、こうした計画を立案する際に、多くの意思決定者が直面する問題があります。それは、ITプロジェクトの費用が「なぜそれだけかかるのかが分からない」という問題です。ベンダーから提示された見積もりの妥当性をどう判断すればいいのか。内製と外注、どちらが本当に安いのか。次回は、IT投資のコスト構造を理解するための基本認識をお伝えします。
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橋本 将功(ハシモト マサヨシ)
パラダイスウェア株式会社 代表取締役
早稲田大学第一文学部卒業。文学修士(MA)。IT業界25年目、PM歴24年目、経営歴14年目、父親歴9年目。 Webサイト/Webツール/業務システム/アプリ/組織改革など、500件以上のプロジェクトのリードとサポートを実施。「プロジェクトマネジメントの民主化」の実現...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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