AI時代に変わるPC調達の常識 価格・性能だけでなく「侵害後」をどう設計するか
検知をすり抜ける攻撃にどう備えるか 端末設計から考えるサイバーレジリエンス
調達要件にも変化 「耐量子暗号」への移行は現実に
長期運用する端末では、現在の脅威だけでなく、将来の暗号技術の変化も考慮する必要がある。量子コンピューターが暗号を解く能力を備えれば、RSAや楕円曲線暗号など、現在広く使われる公開鍵暗号の安全性が損なわれるおそれがある。この将来の転換点は「Q-Day」と呼ばれるが、その時期を正確に見通すことは難しい。
木下氏は、「脅威はQ-Day当日に突然始まるのではない。前夜である現在、既に攻撃は始まっています」と述べる。その一例が「Harvest Now, Decrypt Later(今盗み、後で復号する)」だ。医療情報や政府文書、重要インフラ、産業システムの設計情報など、長期間の秘匿性が求められる暗号化データを収集し、量子コンピューターで復号できる時期まで保管することを指す。
量子コンピューターの影響は、長期間秘匿すべきデータにとどまらない。端末を安全に更新しつづけるための、ファームウェア署名の仕組みにも関わる。PCや産業用IoT機器は、10年以上使われることも多い。もし、運用期間中に現在の署名方式の安全性が損なわれれば、攻撃者が正規の更新プログラムを装った不正なファームウェアを配布し、サプライチェーン経由で影響範囲が広がりかねない。
こうした長期的なリスクを踏まえ、端末の調達時点から量子コンピューター時代を見据える必要があると木下氏は訴える。PQC(耐量子暗号)への移行計画を立てるだけでなく、ファームウェア更新が正規のものであること、ハードウェアを信頼の起点として検証する仕組みが必要になるという。
そこで日本HPは、最新世代のEndpoint Security Controller(ESC Gen5)において、ファームウェアの完全性確認に、従来のRSA署名とLMS(Leighton-Micali Signature)を組み合わせて用いる。LMSは、量子コンピューターによる影響を受けにくいステートフル・ハッシュベース署名方式。ESC Gen5では、従来のRSA署名に加えてLMS署名も検証することで、将来の暗号移行を見据えたファームウェアの真正性確認を行う。これにより、将来の暗号移行も見据え、ファームウェアが改ざんされていないかをハードウェアレベルで検証する設計だ。
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耐量子暗号を遠い将来のテーマとして扱うのではなく、長期運用を前提とした端末調達の要件として検討すべきだと木下氏は訴える。既にNIST(米国立標準技術研究所)も最初のPQC標準の公開を受けて、組織に耐量子暗号への移行を促している状況だ。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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提供:株式会社 日本HP
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