ホームページのように人生も改竄したい、ただそれだけが願いです
とつぜん何者かによって自分のホームページが書きかえられてしまい、
ページを閲覧しただけでディスプレイにみるみるカビが生えるように!
そんな経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
(きっといらっしゃらないだろうという諦念を押し殺し、
希望に向かってはばたくような気持ちで書いています)
わたしたちの生活を脅かす、ホームページ改ざんの恐怖。
この「改ざん」という表記、読みにくい漢字をひらがなに開くという
報道関係の方の粋な計らいがなんとも味わいぶかいものですね。
でも、「改竄」と書くのも、なんとなく小さなねずみたちが
夜中に集まってちゅうちゅうと工事しているような
イメージがあって、かわいいんですよね……
「ホームページ改ざんで人生が変わる!」という本があります。
書店の自己啓発書のコーナーなどで見かけた記憶のある方も
いらっしゃるかもしれません。
(きっといらっしゃらないだろうという諦念を押し殺し、
希望に向かってはばたくような気持ちで書いています)
内容は、まず不運と困難にみちた著者の半生が語られ、
インターネットとの出会い、ホームページ作成によって
得られた人生の喜び、そして衝撃のホームページ改ざんへと
スリリングな筆致で一気に読ませます。
そして後半、著者による犯人探しが始まると文章のトーンが変わり、
ややミステリ小説のような色彩をおびてきます。
ホームページの画面に現れる謎の文字が
地球上のどの言語とも違うという事実が判明し、
また、背景に配置された謎のシンボルのようなものは、
麦畑になにものかによって残される図形に酷似していることも
インターネットを使った地道な調査のすえに明らかになります。
そのころから、著者は空に謎の物体が浮遊しているのを
ひんぱんに目撃するようになり、身辺に謎の人物たちが
見え隠れするようになるのです。
かくして、著者の人生は一変します。
著者は、全人類に宇宙からの脅威を知らせてゆくことに
以後の人生をささげる決意をかためるのでした。
「わたしは宇宙人にホームページを改ざんされた!」
というタイトルのほうがふさわしいような気もするのですが、
そこが編集者の腕というものでしょうか。
万が一書店などで目撃した場合は、写真を撮影するのを
忘れないようにしましょう。確かな証拠になります。
最後に、この本があきらかにする宇宙人の生態について
すこしだけご紹介して、本稿の結びといたします。
・宇宙人は『ホムペ』と略さない
・宇宙人は無断リンクをためらわない
・宇宙人はブログ炎上を泡で消火
・宇宙人はいつでも無線LANにただ乗りだけど悪気はないです
・地球人もある意味宇宙人であり、つまりインターネットは宇宙ネットなのです
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倉田 タカシ(クラタ タカシ)
「ネタもコードも書く絵描き」として、イラストレーション、マンガ、文筆業、ウェブ制作、Adobe Illustratorの自動処理スクリプト作成など、多方面で活動。
イラストの他に読み札も手がけた「セキュリティいろはかるた」はSEショップより発売中。
河出文庫「NOVA2-書き下ろし日本SFコレクション」...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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