パニック巨編・クローン桜の大襲撃！ （*武器は毛虫なのでとても危険）
交配でつくられたソメイヨシノは
すべての木がいわば１本の木のクローンなのである、
という説明はじつにＳＦっぽくて、
なんど聞いてもワクワクしますね。
まったく同じ顔をした何十人もの人間が、無表情で
道路の両側に半身を埋められて並んでいるのを想像してみてください。
……こ、怖い！
それはとても怖い光景でした。
「一体なぜこんなことに……」
それを今回はお話ししようと思います。
あ、いえ、違いました。
桜の話をしようと思ったのです。
この国で最もポピュラーな桜の木がクローンであることが、
毎年この時期になるとつくしのように沢山でてくる
桜をテーマにしたポピュラーソングの画一性や、
花びらの降るなかで入学式を行う各種教育機関の
生徒に制服を着せることを異常に好む性質や、
はたまたよく言われるところの日本人全体の均質性の
根本的な原因なのだとしたらどうでしょうか？
桜ってそんなにこわいんでしょうか？
いいえ、クローンだからといって、そんなに
こわがる必要はないのだと思います。
まったく同じ顔をした何十匹ものクローン羊が、無表情で
道の両側に半身を埋められて並んでいたら
それはそれでかわいいと思うのです。
あなたは、自分のクローンに会ったことはありますか？
そんなことをふと聞いてみたくなったのは
この文章が100年後あるいは１万年後に読まれる可能性に
思い当たったからですが、それをいうなら
ソメイヨシノがこの文を読む可能性だってないとは言えません。
遺伝的に同質であるために、同じ病気にかかるなどして
いっぺんに絶滅してしまうことが危惧されてもいる
ソメイヨシノですが、まさにそのクローン性ゆえに
とつぜん全国（＆全ワシントンなど）のソメイたちが
ひとつの群体生物として意識を持つことだって
ありえなくなくないことはなきにしもありうべからざる
（中略）
そうなったときに、桜餅はどうなってしまうんでしょうか。
葉っぱなんてフケみたいなもんだから好きに使って
いいよと許してくれるのか、それとも、
葉っぱを食べるとか心底キモいからダメ！ と
断られてしまっているのか、日本人としては大いに気になるところです。
そしてまた、桜餅といったときに思い浮かべるのが、
クレープ状の生地であんこを巻いたものか、それとも道明寺か。
これについてもソメイヨシノがはっきりした好みを
打ちだしてくれることを願っています。
希望だけはたくさん持っている、
そんな始まりの季節です。
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- この記事の著者
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倉田 タカシ（クラタ タカシ）
「ネタもコードも書く絵描き」として、イラストレーション、マンガ、文筆業、ウェブ制作、Adobe Illustratorの自動処理スクリプト作成など、多方面で活動。
イラストの他に読み札も手がけた「セキュリティいろはかるた」はSEショップより発売中。
河出文庫「NOVA2-書き下ろし日本SFコレクション」...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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