e-ディスカバリー法に対してはいくつかの問題点も指摘されている。問題点は大きく2つある。ひとつは、日本企業にとっての問題である。つまり、日本に同様な法律が存在しないこと、日本の法慣習と異なることによる問題だ。
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大陸法主義と判例法主義
そもそも、日本の法律およびその裁判は「大陸法主義」による運用が基本となっている。これに対してアメリカでは「判例法主義」を採用している。
両者の主な違いは、演繹(大陸法)による裁判を行うか、帰納(判例法)による裁判を行うかの違いとなる。これは、どちらが優れているとかいう問題ではない。当然ながら、どちらの方式にも一長一短がある。
日本の裁判では、ルールや規範が明確であり、その意味で裁判官の裁量範囲が限定され、証拠や証言など裁判の条件が同じならば、裁判官の違いによる判決の違いは生じにくい構造になっている。
これに対してアメリカの裁判では、証拠や事実を積み重ね、そこから事実を判断することを重視する。そのため、裁判の条件が同じだとしても、裁判官によって判決の違いが発生することがある。アメリカ式の裁判のほうが、そのつどの事実や証拠が吟味され、より公正な裁判が行われるという意見もあるが、逆に、証拠や証言の「解釈」に裁判官の認識の違いが発生することを防げないという見方もある。
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中尾 真二(ナカオ シンジ)
フリーランスのライター、エディター。
アスキーの書籍編集から始り、翻訳や執筆、取材などを紙、ウェブを問わずこなす。IT系が多いが、たまに自動車関連の媒体で執筆することもある。インターネット(とは言わなかったが)はUUCPのころから使っている。※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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