e-ディスカバリー法の観点から、クラウドを考えるべき必要もある。最終回となる今回はクラウドとの関係と問題点を明確にしてまとめとしたい。
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クラウド化に伴う技術的な問題
アプリケーションをサービスとしてクラウドを利用する場合、必要なデータのバックアップが確保されるのか、また、それのアクセスは保証されるのか、はe-ディスカバリー法にとって重要な要件となる。このような機能や、極端な例では、データ差し押さえの令状を示された場合、クラウドなのでデータはありません、といった事例も考えられる。
やはり、明確な基準やポリシーを示せないと、クラウドだから、という理由は、意図的にクラウドにデータを置いて証拠が残らないようにしている、とも取られかねない。非常に高度な制御や判断が要求される部分だろう。
最近の技術的な動向で考えなければならないのは、スマートフォン対応もある。企業ITシステムのクラウド化が進み、シンクライアントやマルチデバイス対応が進むと、スマートフォンの普及にさらにドライブがかかるものと思われる。企業の中でもスマートフォンやスレート端末で、メールをやり取りしたり、コミュニケーションを取ることがますます増えるだろう。
スマートフォンのデータも、証拠として開示しなければならなくなる可能性は高い。いや、必至といっていいだろう。これからの時代、企業が保存・管理しなければならないデータは、ストレージやデータセンターといった「点」ではなく、クラウドやあらゆる端末といった「面」に展開される。当然、日々発生するデータは時間での管理も必要だ。e-ディスカバリー法対応や、関連のフォレンジック機能には、これらの新しいソリューションの開発が期待される。
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中尾 真二(ナカオ シンジ)
フリーランスのライター、エディター。
アスキーの書籍編集から始り、翻訳や執筆、取材などを紙、ウェブを問わずこなす。IT系が多いが、たまに自動車関連の媒体で執筆することもある。インターネット(とは言わなかったが)はUUCPのころから使っている。※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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