膨大なデータをどうするのか
膨大な電子データについては、一般的な業務システムや基幹業務が必要とするバックアップデータを考えれば、その規模やコストが想像しやすいのではないだろうか。
もちろん、裁判のとき証拠として開示する必要のある情報は、日々の企業活動で発生するデータのすべてではなない。しかし、裁判のとき開示する必要のあるデータを予想したり、事前に特定することはほぼ不可能である。そもそも、いつ、どんな訴訟を起こされるか、起こす必要が生じるかといったことも、当事者ですらわからない問題といえるのではないだろうか。
そのため、e-ディスカバリー法対策を考える企業は、どれくらいの範囲のデータをいつまで保存しておけばいいのか、といった問題に直面することになる。さらに、それは、通常のバックアップデータやログファイルの保存の中で済む問題なのか、e-ディスカバリー法対策のために、独自のデータ保管システムを維持しなければならないのかを考慮する必要もあるかもしれない。
現実的には、e-ディスカバリー法のために独立したバックアップシステムを構築するのは、設備の二重投資になり、管理も複雑になる。あるいは、データを保存した媒体の物理的な保管場所の問題もある。通常は、バックアップで保存するデータの範囲や保存期間をe-ディスカバリー法も考慮した形で決定することになるだろう。
必要なデータの保存体制や管理手法については、専門家のコンサルティングを受けたり、システムインテグレータのソリューションを利用することになるだろう。しかし、実際の裁判では、保存データをそのまま提出するわけではない。膨大な電子データの中から、裁判に関係あると思われるデータを効率よく抽出、選別する技術も重要である。これには、単純な検索機能やデータベース機能だけでなく、データフォレンジックの手法を取り入れたソリューションも存在する。これは、裁判の事例ごとにどのようなデータが必要か、専門的な判断やノウハウが必要な部分でもある。効率よく開示データを収集しなければならない。