ビジネスとITのゴールが融合しはじめた2000年代後半
――これまでのITの進歩が次世代のITを可能にしてきた。そして、次世代のITが新たな可能性を提供してきた。
はい。しかし、最近ではその視点も変わってきました。例えば、IBMが掲げる「Smarter Planet」というコンセプト。そのゴールは社会が抱える問題の解決です。例えば、交通渋滞や環境問題という現実の課題の解決がITのゴールでもある。長らく乖離していたビジネスとITのゴールがここにきて一体化したと言えるでしょう。
このような背景を受けて、IBMのソフトウェア事業では、より業務領域に踏み込んだソリューションの展開を行っています。例えば、近年IBMでは積極的なM&Aを行っていますが、その内訳を見ると、業務特化型ソリューションが占める割合が非常に多いことにお気づきになるかと思います。いずれも、各分野で非常に高い評価を受けている企業ばかりです。
さらに特徴的なのが、OpenPages(リスク管理)、UNICA・Coremetrics(マーケティングマネージメント)、Sterling Commerce (サプライチェーン)などを見てもわかるとおり、近年買収した業務特化型ソリューションが全てJava EEをベースとしていることです。これは、2000年代前半に進んだ標準化の流れの中を受けて、優れたソフトウェア製品が生まれたことを示唆しています。
また、このほど業界特化型のフレームワークの提供を開始しました。これまでの実績を生かして、ソフトウェアチーム、サービスチーム、サーバーチーム、そしてパートナー企業が総力を投入し、業界ごとにシステムの基本的なパターンを策定。そこにIBMが持つ製品や技術をマッピングしています。ユーザー企業が置かれた環境にフィットするソリューションが既にあれば、それを適用することで、システムの立ち上げに要する時間や手間を極小化することができるという仕組みです。
――ハードウェア、OS、ミドルウェアの標準化が進み、製品としても成熟してきた。それは、コモディティ化という側面もあるが、ユーザーにとってはビジネスの部分により注力できるようになったという点で、非常に大きな変化だと言えますね。
はい。さらに言うと、ソフトウェア開発における力点がビジネス、もしくはソリューションレイヤーに移ったということは、当然、ミドルウェア以下のレイヤーを自分達で一から構築することの必然性は薄くなります。従来は、自分達が好きなハードウェア、OS、ミドルウェアを組み合わせられることがユーザーの選択の権利でした。しかし、ハードウェアの差別化要素が少なくなり、なおかつ迅速な変化を求められる現在にあっては、ハードウェアの導入からミドルウェアの初期設定までに要する時間は煩わしいものとなりました。かつてのオプションは、今やコストになったのです。
それらを解決するための手段として、ミドルウェア以下のレイヤーを詰め込んだアプライアンスへのニーズ、意義が高まると考えています。例えば、IBMではDataPowerやNetezzaなど、多数のアプライアンス製品をリリースしています。さらに、エンタープライズ・クラウドを迅速に構築する製品なども提供していく予定です。アプライアンス製品によって、ITの俊敏性もより高まっていく。そんな流れが今後はさらに加速していくと思います。