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Interview

最新こそが最良である~カブドットコム証券が最新技術を研究し、プレスリリースでシェアする理由

カブドットコム証券株式会社 執行役 事務・システム本部長 兼 システム部長 阿部 吉伸氏


 サーバーの型番やソフトウェアの構成から、毎日のCPUやメモリの使用率まで、徹底した情報公開に取り組み、スマートフォンの素晴らしさを説明するためにプレスリリースさえ出してしまうカブドットコム証券。5月13日には、データセンターでの節電の取り組みをまとめたプレスリリースを、IT分野の消費電力削減に関するFAQ付きで公開した。なぜ、これほどまでに情報をシェアすることにこだわるのだろうか。同社のシステムを統括する阿部吉伸氏に話を聞いた。

プレスリリースに載せきれなかった節電に関するノウハウ

カブドットコム証券株式会社 執行役 事務・システム本部長 兼 システム部長 阿部 吉伸氏
カブドットコム証券株式会社
執行役 事務・システム本部長 兼 システム部長
阿部 吉伸氏

――先日、カブドットコム証券のデータセンターでの節電に関する取り組みを発表されました。まず、その概要をお聞かせください。

 当初は、震災の影響によって電力事情が悪化したことを受けて、BCPと言う観点からシステムの見直しを進めました。例えば、福岡に配置しているBCP用システムの利用も視野に入れて、事業継続の可能性を議論したのですが、東証さんの主な拠点が東京電力圏内に置かれていることもあり、電力需給が逼迫した場合にはそもそも取引自体ができなくなってしまうだろうという判断に至りました。

 その後は、ひとまず消費電力の削減に焦点を当てて、さまざまな手段を検討しました。例えば、自家発電装置をノンストップで数週間にわたって利用し続ける、もしくは、毎日切り替えるというのは機械に大きな負担を掛けてしまうので現実的ではない。万が一の時はそうせざるを得ませんが、運用に取り込むことで節電をおこなうことは難しいといった具合ですね。

 議論の結果、2011年秋にパフォーマンスアップを目的としてサーバーを刷新する予定があったのですが、それを前倒しで導入してはどうかと言うことになった。これまで消費電力のことは気にしてなかったのですが、シミュレーションをしてみたところ、半分以下に削減できること分かった。これで一気に節電できるぞということで、3月下旬から一気にプランを半年前倒しにして導入したわけです。

 ハードウェア自体はすでに購入してあり、パフォーマンステストや構成変更の試行錯誤をしていたところだったのですが、「まず節電」ということで、予定していたソフトウェアの変更は先送りにし、ハードウェアだけを先に置き換えることにしました。お客様情報用データベースサーバーと勘定系データベースサーバーの刷新で、当社計測の実測値からの算出で54.5%の削減を実現しています。

――サーバー機器の刷新直後、リプレイスに関する詳細なプレスリリース(※1)を出されています。狙いはどこにあるのでしょうか。

(※1)データセンター消費電力量15%削減を達成するサーバー機器刷新の実施

カブドットコム証券が2011年5月13日に公開したプレスリリース。同社のデータセンターにおける消費電力削減の取り組みを紹介するとともに、情報システムの節電に関する疑問について回答するFAQコーナーを用意している。

 新しいハードウェアを入れると電力を削減できる。それ自体も結構なのですが、実はトータルのコストも下げられるのですね。もちろん、前倒しで償却するとP/Lに一括で負担が乗ってしまいますが、半年、一年程度であれば、保守料の削減によってトントンになる可能性もずいぶんあるんです。期をまたがってしまうと予算の問題も出てきますが、年度内でなんとかやりくりできる会社さんも多いんじゃないかと。

 大型機って入れたら入れっぱなしになってしまいがちですが、4~5年前のハードウェアは電力消費量も大きかったので、それを刷新するだけでもある程度の消費電力と保守料が削減できる。そのアイディアが横に広がっていけば現在の電力問題もカバーできるんじゃないかなという意図でプレスリリースを出しました。

――今回のプレスリリースには、節電に関するFAQがつけられていますが、割と技術的な内容になっていますよね。投資家の皆さんがここまで気にされるのかとちょっと気になったのですが、実際にこのレベルの問い合わせなどがあるのでしょうか?

 あります。当社のお客様はIT関連のお仕事に携わってらっしゃる方が多いこともあって、今回のようなリリースも大変丁寧に読んでいただけるんですね。「こういう風にしたら良いんじゃないか」という提案や要望をお寄せいただくことも多々あります。例えば、システムのパフォーマンスやDBサーバーで使っている機器のモデル名、メモリー搭載量などは以前から明示していますが、今回のリリースもそういった取り組みの一環です。

 ただ、今回については、同業ではない一般的な企業さんにも情報システムの節電について理解していただければと考えて書いています。つまり、普段のニュースに出ている節電に関する情報で気になること、聞きたいことってたくさんあると思うのですよ。例えば、「使っていないサーバーの電源を切ることはできないだろうか」といった点は、システム担当者でなくても気になるはずです。そういったところをわかりやすく書きたいと思いました。

 本当は、もっとたくさん書きたいことはあったんですよね。「主系と従系があるなら、従系を止めてしまえば良いんじゃないか」とかですね。ただ、あんまり激しいことを書くと副作用も大きいと思いますから、議論を重ねた上でこの形に落ち着きました。

――なるほど、実際にはFAQの項目はもっとたくさんあったのですね。

 そうです。もっとありましたね。例えば、「BCPのバックアップ機器を落としてしまって、必要なタイミングで電源を入れるのはどうか」「会社に電池を蓄積すれば良いのではないか」といった質問項目もありましたが、結果としてこのような形に落ち着きました。どんな会社にもほとんど関係する内容になっているんじゃないかなと思います。

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システムは商売道具、だから徹底的にこだわる

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この記事の著者

久原 秀夫(クハラ ヒデオ)

フリーランス/ITライター

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https://enterprisezine.jp/article/detail/3213 2015/03/11 17:35

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