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Interview

米国の最新動向に学ぶ、クラウド活用のベスト・プラクティス

雲屋株式会社 取締役会長 鈴木逸平氏


パブリック・クラウドとプライベート・クラウドのいずれを選択するべきか。どのようなアプリケーションをクラウド上に移行するべきなのか。そもそも、パブリック・クラウドやプライベート・クラウドにコストメリットはあるのか。企業の情報システム基盤として利用を検討する上でのさまざまな疑問に対して、米国ではひとつの明確な回答が固まりつつあるという。同国のクラウド事情に詳しい、雲屋株式会社 取締役会長の鈴木逸平氏にお話を伺った。

米国で鮮明になりつつあるマルチクラウドとプライベート・クラウドの使い分け

雲屋株式会社 取締役会長 鈴木逸平氏
雲屋株式会社 取締役会長 鈴木逸平氏

―― 最近、米国ではハイブリッド・クラウドへの期待が高まっていると伺いました。

 はい。その背景を説明するためには、クラウド市場の状況をお話ししておく必要があるでしょう。現在、米国のIaaS市場ではAmazon Web Services(以下、AWSと表記)が大きな存在感を持っています。細かい数値の差はありますが、クラウド市場のシェアの半分近くをAWSが占めていることを多くの市場調査が報告しています。そして、AWSの周囲には、多数のサードパーティによって支えられる巨大なエコシステムが形成されている状況です。

 ただし、AWSが全てのクラウドニーズの答えになる訳ではない、という点に着目する必要があります。確かにAWSは非常に汎用性の高いクラウドサービスを提供しています。しかし、企業の多くが要求する、カスタマイズされたクラウド環境はAWS以外のエコシステムに大きく依存しています。具体的には、プライベート・クラウド、マルチクラウド関連のソリューションを通して、多くのベンダーがビジネスチャンスを獲得しようと動きはじめています。

―― AWSにも相対的に弱い部分がある?

 下の図は、ユーザー企業を対象としたクラウドに関するアンケートをまとめたものです。

 「企業規模とクラウド依存度の関係性」をグラフにしています。横軸は対象となる企業の従業員数、縦軸は各企業のパブリック・クラウドに対する依存度を示しています。右側に行くほど企業規模は大きくなり、上に行くほどパブリック・クラウドへの依存度が高くなります。

 さて、図を見ると、折れ線グラフに2つのピークがあることが分かります。つまり、クラウドに対して強く依存する企業規模が2つあるということですね。まずは、左側の山。こちらはAWSを代表とするパブリック・クラウドがガッチリと押さえているSMB、Web2.0、コンテンツ関係の市場です。これらの比較的小規模なユーザーは自社のインフラの大部分をAWSにアウトソースしているために依存度が高い。

図1:パブリック・クラウドへの依存度と企業規模の関係(※Techaisle社の調査結果をもとに鈴木氏がグラフを作成)
図1:パブリック・クラウドへの依存度と企業規模の関係
(※Techaisle社の調査結果をもとに鈴木氏がグラフを作成)

―― スタートアップの企業がAWSの恩恵に浴している事例は山のようにありますし、このあたりの規模の企業がクラウドに対して強く依存していることは比較的想像しやすいところですね。

 そのとおりです。ところが、もう少し大きい企業になると状況は変わってきます。目安となるのは、従業員数にして200人。これよりも大きな企業になるとクラウドに対する依存度は意外な事に下がっていきます。原因は主としてコストです。システムの規模が大きくなっていくと、パブリック・クラウドよりもオンプレミスにシステムを構築した方がコスト的に有利になる場合が出てきます。そうした事例は米国でも多数報告されています。

 つまり、この企業規模になるとパブリック・クラウドだけでIT要件が対応できなくなってくる訳です。各ベンダーが狙っているAWSの隙というのはまさにこの部分です。企業は、クラウド上で運用していたシステムを社内に戻したいと考えるようになりますから、彼らに対して様々なソリューションを売り込む余地が出てくる。実際、北米のソリューション事業者はこの層に対してかなり積極的にプライベート・クラウドの売り込みを掛けている状況です。おそらく、日本でもそれに近いビジネスモデルが年内に本格化することになるでしょう。

―― 確かに、パブリック・クラウドは必ずしも安くなるとは限らないと以前から指摘されてきましたが、そのことを実際に体感する企業が増えてきたということがあるのですね。

 そうなのです。ただし、さらに企業規模が大きくなると、再びクラウドへの依存度が高くなっていきます。いわゆるハイブリッド・クラウドとしてのニーズですね。目安としては従業員500人を超えたあたり。この規模になるとオンプレミスだけでは運用しきれないニーズが出てきます。

 例えば、突発的な負荷への対応やデータのバックアップ、DR(障害復旧)目的のシステム多重化など、部分的にパブリック・クラウドが持つ柔軟性が欲しくなる。中小企業のようにインフラを丸ごとクラウドに預けるようなことはできないが、システムのある一部分だけを切り出してみれば、パブリック・クラウドのコストメリットや柔軟性を利用できる部分が出てくるというわけです。

 この規模での主要なプレイヤーは、HP, OracleやIBMといったベンダーやSAIC、CSC、EDSといった海外の大手SI企業。彼らは、クラウドソリューションと称しています。大規模ユーザーにとってパブリック・クラウドはリソースを提供する素材のひとつに過ぎません。中小企業の場合と比べると、ユーザーが直接的にAWSとやりとりする機会は少なくなります。

 冒頭、質問のあったハイブリッド・クラウドへの注目は、このような背景のもとにあります。つまり、多くの企業でAWSを始めとするパブリック・クラウドが利用される中で、その使いどころや強み・弱みが明らかになってきた。もちろん、これまでも議論としてはあったわけですが、それが実績を伴った形で証明されつつある。その結果、企業システムの現実解としてハイブリッド・クラウドに注目が集まってきているわけです。

―― 今まで、パブリックとプライベートのどちらを選ぶかという議論がありましたが、企業やシステムの規模によって利用すべきパターンがある程度決まってしまう部分もあるのですね。

 そのとおりです。プライベート・クラウドが効果を発揮する規模、パブリック・クラウドが効果を発揮する規模というものが鮮明になりつつありますね。逆に言えば、ユーザーがクラウドを利用する場合、もしくはベンダーがクラウド・ソリューションを提供する場合に、自社が目指すべき姿を考えるための有力な指針が現れつつあると言えるでしょう。

次のページ
社内のアプリケーション資産をクラウドに移行するか否かの判断基準が明確に

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この記事の著者

緒方 啓吾(編集部)(オガタ ケイゴ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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