企業の業務システムにとって、「入力」は重要な要素となる。サポートセンターやカスタマーセンター、管理部門などにとっては、入力のオペレーションをスムーズにおこなうことが生産性を高めることにもなる。業務システムのクライアントマシンが、WindowsのPCである場合、ユーザーインターフェイス(UI)が上手く作られていないと、入力にストレスが生じることになる。このストレスを減らすためのUIづくりのツールは、リッチクライアントの製品が対応してきた。しかし、リッチクライアントといった場合、「操作性の向上」よりも、むしろWeb画面の表現機能の拡大を中心に語られてきた感がある。
アクシスソフトの「Biz/Browser」は、基幹業務システムの効率的な入力のためのフロントエンドとして、Webシステムの操作性、レスポンスなどの向上に特化した製品として、約800社の企業に採用されてきた。
今回、新たに最新バージョン「Biz/Browser V」発表したアクシスソフトの永井一美社長に話を聞いた。
業務システムに特化したフロントエンドをつくる
--- 今回のバージョンアップの特長についてお話ください。
永井 まずWebブラウザーを統合したことです。一般にリッチクライアントといった場合、ブラウザにプラグインを埋め込むタイプが多いのですが、発想を転換して、クライアントソフトの側にブラウザを包含しました。
--- ブラウザを強化するのではなく中に入れるということは、どんなメリットがあるのでしょうか
永井 Webベースの業務システムを導入していて、改善したいというお客さんが多い。ただWebシステム全体をリニューアルしようとして見積もりをとると目玉が飛び出るぐらいの金額になり、時間もかかることになる。
そこで稼働中のWebシステムをブラウザとして組み込んだアプリケーションをつくり、併存させながら段階的に移行していくことが可能になります。
--- ブラウザが外側にあるのと違い、余計なことができなくなりますね。
永井 社員にPCで余計なことをさせたくないという会社は多い。特に金融系や流通などのオペレーション業務やコールセンターなどはそうですね。昔のダム端末の方が良かったと(笑)。IEなどの「戻る」ボタンを殺すことで、誤動作なども減ります。またFlashなどもブラウザの中にあるので、Biz/Browserの側から制御することができます。
--- コンプライアンスやガバナンスの面でも良いですね。
永井 Biz/Browser VはHTML表示のセキュリティ機能も強化しています。またブラウザによる環境差も吸収することができる。
また画面のスケーリング機能で表示を強化しました。端末ごとに異なる解像度で表示ができ、拡大・縮小も自在になりました。
また今回、開発ツールとしての強化という面では、.NETのクラスライブラリが使えるというポイントがあります。これはSIerさんや開発パートナーさんからの要望を反映しました。入力のレスポンス面でも通信機能の向上で大幅に改善しました。
もうひとつは、スプレッドシート機能。Excelのような表示機能を備えて、表入力などの画面をつくることができますし、Excelからの移行を支援するツールも提供する予定です。
---Excelを業務システムとして活用する企業は意外に多いですからね。
永井 海外の企業ではあまり考えられないのですが、日本は現場部門で入力ツールとして使っている企業が多い。そうすると統制もとれないし、データの管理も一貫性がなくなります。スプレッドシート統制という言葉まであるように、Excelアプリの場合、数式や関数が後でわからなくなることがあります。Biz/Browserの側で、スプレッドシートの数式や関数を制御することも、セル単位の制御もできるようにしました。
開発ツールを無償化、パートナープログラムをスタート
---かなり多くの企業に採用されているようですが、今回の新バージョンに移行させるために、どのような展開を考えられていますか?
永井 まず開発ツールである「Biz/Designer V」を無償にします。現行のバージョンでは開発ツールは1つの開発者ライセンスで25万、利用料が年間5万円ですが、これを無料にすることで、初期の導入コストを削減します。「Biz/Browser V」自体はオープン価格です。
また今回から、パートナープログラムを開始しトレーニングやワークショップを無料で開催します。
--- 日本のユーザー企業や情報システム関連企業の細かなニーズの声が反映されていますね。今後の予定についてはいかがでしょう?
永井 これまでも多くのユーザー企業様の声を反映してきました。クライアントサーバー型でつくったVBなどのアプリケーションをWebシステムに刷新したいが、エンドユーザーの操作性は失いたくないという企業や、HTMLベースの入力インターフェイスに失敗した企業、ユーザー現場の環境差を吸収したい企業など、様々な企業のニーズを反映しています。。
今後の課題としては、モバイルの対応があります。クライアントマシンが多様化してきていますから、PCだけではなくモバイルデバイスへの対応が必要です。Androidへの対応バージョンを年内に予定しています。
--- どうもありがとうございました。