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ソーシャルジプシーに安住の地はあるのか?

第15回


ごく親しい知人同士の間でだが、ソーシャルジプシーという単語がたまに出てくる。数年サイクルで栄枯盛衰を繰り返すかのように見えるソーシャルサービスで、私たちが落ち着いてじっくり利用できる安住の地はあるのだろうか?という根なし草風来坊感を表現してのフレーズである 。

ソーシャルジプシーに安住の地はあるのか?

 ごく親しい知人同士の間で「ソーシャルジプシー」という単語がたまに出てくる。数年サイクルで栄枯盛衰を繰り返すかのように見えるソーシャルサービスで、私たちが落ち着いてじっくり利用できる安住の地はあるのだろうか?という根なし草風来坊感を表現してのフレーズである。

 結論から書くと、おそらくソーシャルという形態を前提とする限り、安住の地は出て来づらいだろう。現状のソーシャルサービスのメカニズムが長期のコミュニケーション構造維持と親和性の悪いところがあるのと、更にシンプルにユーザー側が飽きてしまうという身も蓋もない事情が重なることで、業界を制するような形での特定のソーシャルサービスの繁栄は長続きしない。携帯の機種交換よりは長いかもしれないけれども、テレビやHDDの買い替えサイクルよりも短いという非耐久消費財くらいの位置づけになってしまっている。

 このようなサイクルを経てしまうのに原因は幾つかある。簡単に整理してみたい。SNSあるいはソーシャルサービスをどのように捉えるかには幾つかのアプローチがあるが、とりあえずここではソーシャルグラフ(人と人との関係を表わす相関図)資産を軸として捉える。SNSの規模と活発度は、ソーシャルグラフへの参加数と内部のリンクの密度、更にはSNS上で飛び交うコミュニケーションやデータ参照関係の積算でざっくり表現できる。ラフな捉え方になるが三軸三次元といえようか。

 つまり、たくさんのユーザーが登録し、よりたくさんの友達関係を中で築き、頻繁にやりとりすればするほどソーシャルとして栄えており規模(と影響力)が大きいと考えられる。もっと細かく言えば、外部のメンバーがどれくらい情報を見られるかなどで対外影響力という話も出てくるのだが、そこは割愛する。

 事業者の側は、この三つの変数を様々な手を取って広げようとする。ゲームコンテンツを流し込んでみたり、「この人も友達じゃない?」とレコメンドしてみたり第三者の会話が自然な形で目に触れやすいようにしたいと手法は様々である。

 この成長モデルが行き詰るのは、概ね次のようなプロセスを経て起きる。

 友人があれこれいて便利⇒もっと世の中と繋がってください⇒知らない人もたくさん⇒なんか居心地が悪いや⇒トラブルが起きて気分が悪いからもういいや⇒離脱

 離脱に至ってしまうのは個々人の管理の範疇だから、個々人の責任と言えなくもないが、仲良くもない人とやたら繋がりが出来て面倒になったり、TwitterのRT構造がよく該当するが、界隈の荒れた空気が唐突に自分のタイムラインに飛び込んで来てなんだか雰囲気が良くないので足が遠のいてしまった、あるいは、次に移ってしまったということが起きている。

 同時に、この定期移動は一種の見直しリフレッシュの効果も含んでいるため、不活性化してしまったコミュニケーション関係をクリアにして一度見つめ直してリストを新鮮にするという効果も含んでいる。手帳の買い替えタイミングで見直しをかける人がいるように、ソーシャルサービスごとリセットをしてしまって…という使い方に実質なっているパターンは珍しくない。

 mixiからTwitterの住民移動にも似た空気があったり、目下流れとして強くなっているのがTwitterからFacebookであり、この数日で出てきた流れがGoogle+(グーグル プラス)に、ごくごくわずかであるものの流れ始めた動きである。この流れと、一定期間経つと文化が変わったり、一部で荒れてしまったりというサイクルと定期的な住人移動を指して、ソーシャルジプシーと呼称している。

次ページへ続く

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ソーシャルが長く機能するには、ソーシャルではない成立要因が必要

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この記事の著者

渡辺聡(ワタナベ サトシ)

神戸大学法学部(行政学・法社会学専攻)卒。NECソフトを経てインターネットビジネスの世界へ。独立後、個人事務所を設立を経て、08年にクロサカタツヤ氏と共同で株式会社企(くわだて)を設立。現同社代表取締役。大手事業会社からインターネット企業までの事業戦略、経営の立て直し、テクノロジー課題の解決、マーケティング全般の見直しなど幅広くコンサルティングサービスを提供している。主な著書・監修に『マーケティング2...

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