富士通が目指す社会の実現をICTで支援する
富士通は現在、様々な種類の大量データ、いわゆる「ビッグデータ」を利活用するためのクラウド基盤「コンバージェンスサービス・プラットフォームCSPF(仮称)」を開発しており、2011年度第4四半期から提供される予定だ。CSPFは、世界初のビッグデータ対応のPaaSであり、様々なセンサーから収集されるデータや、既存のデータを蓄積・分析し、知恵を組み合わせて人々をナビゲーションするサイクルの確立を可能にする。必要な技術がすべて統合されたトータルサービスであり、異種情報を多様な目的で融合することができる。また、パブリッククラウド型であることから、小さく始めて必要なだけ使うことが可能となっている。
富士通では、目指す社会(ビジョン)を表すものとして、ヒューマンセントリック(人間中心)・インテリジェントソサエティ(HCIS)という言葉を掲げている。その由来について戦略企画統括部の部長である徳永奈緒美氏は「富士通がこれまで主に提供してきた企業の業務を支えるバックオフィス系のシステムなどに加え、エンドユーザーに直接貢献するようなシステムや、お客様の商品やサービスそのものにダイレクトに価値を提供したいという意志がある」と語る。そのビジョンを実現するため、具現化された1つの形が今回発表されたCSPFだ。
ヒューマンセントリックなシステムのイメージとしては、例えば「雨」や「傘」というキーワードを含むTwitter やFacebookの発信が急に増えてきた地域の駅に、タクシーの配車をリアルタイムに増やす。また、子どもの歓声が多い地域や、あるイベントが行われている地域では、その付近で運転しているドライバーに注意を喚起する。一方、従来は熟練者が行っていた業務を、センサーによるデータの取得をすることで、経験の浅い担当者でも対応できるようにする、などといったイメージだ。
現実世界の写像であるデータを収集し融合
以上のように人に直接作用を及ぼす、現実世界に存在する様々なものを対象にしてセンシングすると、ビッグデータという世界にたどり着く。もちろん、データを取得するだけでなく、そのデータを意味のあるものに組み立てていく処理も必要になる。
例えば、留守宅において、玄関ドアの開閉検知に続いて居間の人感センサーが反応すれば、居住者の帰宅と判断できる。一方、その検知の順番が逆であった場合、不審者の侵入が疑われる。それは人間ならすぐに判断できることだが、それを機械でもわかるように教え込まなくてはならない。徳永氏は、「このデータの組み立てや意味付けが、ビッグデータを扱う上で非常に重要なポイント」と指摘する。
富士通の構想するインテリジェントソサエティでは、リアルワールドの写像である大量データを収集し、バーチャルワールドで融合する。そこから生まれた知恵をリアルワールドにおけるナビゲーションにつなげていく。そうしたサイクルを実現するのがヒューマンセントリックであり、その世界を実現する技術の体系がヒューマンセントリック・コンピューティングということになる。提供形態としては、今回発表されたクラウド型のコンバージェンスサービスに加え、そこで使われた様々な要素の技術を個別に部品化したオンプレミス型も構想されている。