発起人企業は、日本電信電話(NTT)、アシスト、SRA OSS, Inc. 日本支社、日本電気(NEC)、NECソフト、日立製作所、日立ソリューションズ、富士通、富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ、日本ヒューレット・パッカードの10社。初代理事長の任に就いたNTTの研究企画部門 OSSチーフプロデューサー 木ノ原誠司氏は、「オープンソース・ソフトウェアは、利用者にとっての技術という側面があります。(商用製品では難しい)ユーザーがコントローラブルな状況で、プロダクトをブラッシュアップできます。それを行うために、今回は集まりました」とコンソーシアム発足の理由を語る。
また、運営委員長のNEC ITソフトウェア事業本部 第三ソフトウェア事業 部長代理 井上浩弓氏は「最近では、顧客からPostgreSQLはどうなんだということを聞かれることもあります。その際にSIとしてきちんと応えられないのでは困ります」と言う。こういった顧客からの声にもきちんと応えられるようにするために、各社の事例やノウハウを集結し、情報として整理し公表する。
コンソーシアムの正会員企業は総会での議決権を持ち、運営委員会となる技術部会、広報・発信部会で具体的な活動を行う。正会員は、今後広く募集するとのこと。正会員企業になる条件は、いっしょに汗をかいて活動してもらえるかどうかが重要とのこと。正会員になりたい企業は事務局に申し込み、審査を経た上で可否が決定される。また、正会員とは別に一般会員も募集する。こちらは、メーリングリストやWebなどからコンソーシアムの活動情報を取得することがきる会員だ。正会員、一般会員とも、入会金や年会費などの徴収は行わない。
具体的な活動は、各社がこれまでに積み上げてきた技術ノウハウを持ち寄って整理するところから開始される。2012年夏頃までを目処に、共有された情報の整理を行い最初の公開が行われる予定だ。そういった活動の中で、情報として足りない部分が出てきた場合には、優先順位を付け共同での技術検証も行う。
集められる情報は、PostgreSQLだけにとどまらず、周辺ツールなども含まれる。組み合わせるツールなどは、オープンソース製品を軸とするが、足りない部分は適宜各社が提供している商用製品なども組み合わせる。整理される情報のレベルは、たとえばバックアップをするためにはどういった方法、ツールがあり、それをSIできるのはどの企業で、サポートはどこができるといった、システムを構築する際に直接参考となるような情報としてまとめられる。
コンソーシアムでは、PostgreSQLの開発コミュニティにも成果をフィードバックする。そして、ミッションクリティカルな用途で必要となる機能のリクエストなどもコミュニティに対し行う。ただし、ソースコードを提示しての開発コミュニティへの提案は、コンソーシアムとして行うのではなく、各会員企業が個々に行う。
このコンソーシアムの活動の成否は、各社がどれだけ技術ノウハウをさらけだせるかにかかってくるだろう。各社が持っているノウハウの多くは、具体的な顧客案件にひも付いていることが予測される。そうなると、なかなか細かい点まで情報を公開できない可能性も懸念される。表面的な情報の共有に止まってしまえば、集まる情報は教科書的でミッションクリティカルな本番システムへの適用においてはあまり参考にならないものになりかねない。当然ながら、具体的な顧客案件が出てくれば、今回参集している企業はどこもライバルとなる。そういった中で、どれだけ自社の技術情報をオープンにできるのか。各企業の度量の深さが試されそうだ。