SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

Enterprise IT Women's Forum

2025年1月31日(金)17:00~20:30 ホテル雅叙園東京にて開催

Security Online Day 2025 春の陣(開催予定)

2025年3月18日(火)オンライン開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2024年秋号(EnterpriseZine Press 2024 Autumn)特集「生成AI時代に考える“真のDX人材育成”──『スキル策定』『実践』2つの観点で紐解く」

DB Press

マクラーレンもより速く! HANAが加速するのはデータベースだけじゃない - SAPPHIRE NOW 2012 2日目基調講演


今年で創業40周年を迎えるSAPは、看板製品である「SAP ERP」とともにビジネスを大きくしてきた。SAPといえばERPであり、ERPといえばSAP、そのイメージが顧客にもSAP自身にも強く刷り込まれていると言っていい。初代ERPであるR/3の登場は、業務アプリケーションの世界を大きく変えたが、それは顧客にとっても大きな痛みをともなう変革でもあった。

 そして現在、時代の変化とともにSAPは再びパラダイムシフトを迎えようとしている。創業者ハッソ・プラットナー氏が提唱したインメモリプラットフォーム「SAP HANA」ですべての同社製品を動作させ、顧客のビジネスのスピードを加速すると宣言、ERPにこだわらない製品展開を、40年前のような"痛み"を伴わずに実施していくという。米オーランドで5月14日~16日に渡って行われた年次イベント「SAPPHIRE NOW 2012」の2日目に登壇した共同CEOのジム・ハガーマン・スナーベ氏の基調講演から、SAPがHANAでもって顧客にどんなベネフィットをもたらそうとしているのかを検証してみたい。

すべてはモバイルに、クラウドに、そしてインメモリに

ジム・ハガーマン・スナベ氏
ジム・ハガーマン・スナーベ氏

 いまから40年後の未来をここで想像するのは無意味だが、5年後のことならおおよそが見えている - スナーベ氏はこう前置いたのち、SAPが現在注力する3つの分野「モバイル」「クラウド」「インメモリ」について、自身の予測を披露した。

 ・これから5年以内にすべてがモバイルでつながる  
 いまのモバイル端末は、40年前のメインフレームが有していた性能の数千倍のパワーを備えている。これがテクノロジの進化というもの。モバイルでしかつながらないユーザは今後ますます増加する。

 ・これから5年以内にすべてがクラウドに置かれる
 いまはまさにリアルタイムクラウドの幕開け。プライベートであろうとパブリックであろうと、ユーザはどこにデータが置かれているかをまったく気にする必要がなくなる。クラウドがあたりまえになりすぎて、もしかしたら"クラウド"という言葉を聞くことすらないかもしれない。

 ・これから5年ですべてがインメモリで動く
 ディスクはもう必要ない。すべてのデータがインメモリに載ればものすごいスピードが実現し、ものすごいビジネスチャンスが到来する。「ディスクとインメモリのハイブリッドという選択肢は?」という人には「石器時代が終わったのは石がなくなったからではない」というリチャード・シアーズの言葉を贈りたい。

 SAPはここ1、2年、グローバルでビジネスソフトウェアにおける「Any Device, Anytime, Anywhere」を提唱し続けており、インメモリプラットフォーム「SAP HANA」を基盤にしてこれを実現しようとしていることはすでに何度かお伝えしてきた。40年前、リアルタイムコンピューティングの実現を掲げたものの、テクノロジが追いついていないこともあり、また、基盤となるデータベースの自社開発を断念した過去をもつSAPだが、「40年経ってようやく、リアルタイムコンピューティングを実現するための基盤 - モバイル、クラウド、インメモリを手にすることができた」とスナベ氏は語る。そしてこの3つを高度に洗練された状態でつないた"Intelligent Business Web"を構築し、同社の製品やサービスをリアルタイムに提供していくという。

「Intelligent Business Webは既存のネットワークとはまったく違うコンセプト。コアとなるビジネスソフトウェアがクラウドというネットワーク上に置かれ、インメモリで動き、モバイルからアクセスされる」(スナーベ氏)。

 そしてHANAを基盤とするIntelligent Business Webは、すでにいくつかのユーザ企業が徐々にその世界を体感しつつある。そのひとつがモータースポーツのF1グランプリで有名なマクラーレン・グループである。

マクラーレンを加速せよ - HANAがもたらす新たなビジネスチャンス

 SAPはこの基調講演と同じ5月15日(米国時間)に、長年のSAPユーザであるマクラーレン・グループが、SAPのモバイルテクノロジとHANAを使った新しいITバックボーンの構築を開始することを発表している。会場ではこの発表にあわせマクラーレンのロン・デニス会長が登壇、思わぬ豪華なゲストの登場に聴衆からも嬉しい驚きの声が上がった。

マクラーレン ロン・デニス会長
マクラーレン 
ロン・デニス会長

 「私はテクノロジを駆使するのが非常に好きなんだ」と語るロン・デニス氏はHANAを心から信頼していると言う。現在、マクラーレンでは"タイヤチェンジャーからエクゼクティブまで"をキーワードに、全従業員がモバイルからアクセスできるリアルタイムソリューションをHANAで構築中だ。このシステムはSAPが提供するパッケージタイプの早期導入システム「SAP Rapid Deployment Solution」での導入が検討されている。

 「マクラーレンという組織はビッグデータを扱うことに慣れている」というロン・デニス氏の言葉通り、マクラーレンは1980年代からデータ至上主義ともいえるほど徹底したデータ分析を行ってきたチームとして知られている。

 その最たる例がレーシングカーやドライバーに取り付けたセンサーから遠隔操作でデータを受信し、その場で分析する移動体テレメトリーシステムだ。F1だけでなく、インディカー・シリーズやNASCAR、さらにはテスト走行などでも使われているシステムで、マクラーレンの勝利に大きく貢献してきたことは言うまでもない。

 そしてHANAを基盤に構築する新システムは、このテレメトリーシステムを、データ分析のスピードと精度の面でさらに強化することになる。ロン・デニス氏は「我々はデータ分析の力を得たことで、レースをただのスポーツからサイエンスに変えることができた。変化を受け入れなければ、決して力を向上させることはできないし、勝利もまた得ることはできない」と強調、スポーツビジネスにおいてはデータ分析こそが勝利への重要な導線であると語る。

 なお、マクラーレンはこのテレメトリーシステムを自社だけでなく、他の企業にもライセンス供与している。たとえば、サンフランシスコの交通網としておなじみのBART(Bay Area Rapid Transit)では、乗客の安全を守るためのモニタリングシステムに同技術を採用している。このテレメトリーシステムがHANAでさらにパワーアップすれば、ビジネスの幅もより拡がりそうだ。

次のページ
HANAにはすべてを載せられる、それは事実でしかない

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
DB Press連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

五味明子(ゴミ アキコ)

IT系出版社で編集者としてキャリアを積んだのち、2011年からフリーランスライターとして活動中。フィールドワークはオープンソース、クラウドコンピューティング、データアナリティクスなどエンタープライズITが中心で海外カンファレンスの取材が多い。
Twitter(@g3akk)や自身のブログでITニュース...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/3992 2012/05/25 17:42

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング