パラレルス(Parallels)といえば、MacユーザーにはWindowsをMacintosh上で動かす仮想化製品で有名だ。一方、クラウドコンピューティングの分野でも、先進的な仮想化技術でクラウドサービスプロバイダやホスティング事業者などに、サービスを提供している会社でもある。長年日本のIT業界を歩んできたパラレルスの富田社長は、「日本の中小企業向けのアプリケーションをSaaS化して、コンビニのように安く簡単に提供する」と語る。同社の仮想化を核にしたクラウド・インフラ事業とプラットフォーム戦略について話を聞いた。
データベース、通信、そしてクラウドへ続くストーリー

ーー富田社長は、現在のパラレルスに至るまで、数多くの会社を手がけられていますね。
昔の競争相手は、みんな偉くなって引退したか、あきらめて引退したかのどちらかです(笑)
社長をやったのは89年のアシュトンテイトが初めですね。dBaseというデータベースソフトを売っていました。データベース業界と言えば今ではオラクルが勝ったということになっていますが、その頃はデータベースアプリケーションはまだ創成期。技術だけではなく営業力、組織力の勝負の時代で活気があった。dBaseはその後ボーランドに買われましたが、当時はデータベースパッケージのメジャーソフトでした。それまでリサーチをやっていたので、ある程度データベースを知っていたつもりだったのですが、dBaseが高度なプログラミング言語であると知って驚きました。「データの組み合わせでプログラムができる」という考え方は衝撃でした。
その後インターネットの時代になって、テレビ会議システムのピクチャーテル・ジャパンの社長に就任しました。当時、NTTの128kビットのISDNで動画を配信するという、動画圧縮の技術に関しては先進的で、そのビジネスの腕を買われて、次にNTTと一緒にフェニックスという会社を作った。
ITバブルでドットコムブームの時はエンゲージジャパン、次にコラブネット・ジャパンの社長。これは、Apachなどのオープンソース系のソフトウェアのほとんどのプラットフォームを作った会社です。その後のOpswareはマークアンドリーセンの会社で、データセンターのサーバー運用自動化の会社です。そして、米ArcSightの本社副社長に就任しました。こちらは、全世界のサーバーのログを分析し、異常検知するというソリューションで、セキュリティ、コンプライアンスの分野では、今も定評があります。
データベース、ビジネス・アプリケーション、動画圧縮と通信、データセンター・オートメーション、そしてネットワーク上のログ管理や不正検知、セキュリティ、それぞれ別の仕事として自分では終えてきたつもりが、今になってみると、すべてがつながっていると思えます。
--- 絢爛たる歴史ですね(笑)。ひとつのストーリーが見えてきました。その集約地点が現在のパラレルスのクラウドコンピューティングのビジネスであると。
いろいろやってきて、今の立場で思うことは「ITは買うものではなく、使うものだ」ということ。「専門家のためのものではなく、ビジネスをする人が、使いたい時に、安全に安心に、使えるだけ使えればそれで良い。そのためにプラットフォームと、エコシステム(生態系)をつくる」ということで、それがパラレルスの基本的な考え方です。
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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