LCCとイケアから得たコスト削減のヒント
1996年に米国でベル研究所出身者が設立した会社を母体とするゾーホーグループ。事業の中心となっているのは企業向けIT管理製品「ManageEngine」の提供であり、全世界で5万社を超える顧客を抱えている。その日本法人であるゾーホージャパンの松本伸也氏によるセッションのテーマは、「IT運用管理の運用コスト削減と業務負荷軽減」。
松本氏はまず、課題解決のヒントとして他業界、LCCと家具販売のイケアの事例を紹介した。両者ともコストメリットを提供しているわけだが、イケアは資材の運搬と組み立ては顧客の役目とすることで、LCCはチェックインバゲージ、機内の飲み物、食べ物等を別料金とすることで実現している。この「日本の顧客が慣れてきた、または当然と思っていた、従来のフルサービス提供とは異なるモデル」という考え方は、「IT運用管理のコスト削減にもヒントになる」(松本氏)
IT運用管理のコスト削減、ポイントは「内製化」
まずビジネス環境とIT投資の現状について、経済産業省や(財)日本情報システム・ユーザ協会が公開しているデータから、昨今はIT投資の絶対額が減っていることが分かる。内訳は、およそ開発費が40%、保守運用費が60%
そのため、アウトソーシング先のベンダーを乗り換えるという方法もある。しかし、アウトソース前のリソースをリストラ等で減らさない限り、結局トータルコストは減らない可能性が高い。そこで松本氏が提案する外部委託費を堅実に減らす方法が 「アウトソースしていた業務を内部リソースで巻き取る」こと。つまり「ベンダー任せから内製化へ」だ。
オーバースペックな既存ツールがコストを押し上げる
続いて松本氏が運用管理コスト削減におけるもう1つのポイントとして挙げるのが、運用監視ツールの見直しだ。コスト全体に占めるソフトウェア費に保守費用も含めると、外部委託費よりも多い32%にも上っているからだ。
松本氏が顧客から聞く話では、実はその組織が導入した運用ツールに備わっている全機能の2/3も使っていない、ということが多々あるという。「使うかもしれない」と期待して導入したが、結果として使わない機能に多大なコストを投入していることになる。
IT運用管理ツール、その前身のネットワーク管理ツールは、通信事業者の大きなネットワークをきめ細かく管理できるようなツールとして開発されてきた。そのため、非常に高い要求に合わせた、付加価値の高い機能を持っているものが多い。多くの一般企業にとっては、オーバースペックだと言える。
松本氏によれば、運用管理ツールは大きく2つに分類できる。一つは機能の深さ、網羅性を重視した結果、高度な知識や技術力をもったアウトソースを利用する必要があるなど、トータルコストが高くなるもの。もう一つは、機能の深さや網羅性は最低限であるが、使いやすく、内製化(自社運用)ができ、コストが安くなるものだ。前者は昔からある運用管理ツールの典型的なものであり、後者は提供される機能は基本的なものになるが、コストパフォーマンスが良く、扱いやすさが重視されている。松本氏は「扱いやすいツールを使えば、技術リソースに余裕のない企業でも、内製化が可能になる」と語る。
内製化を実現するツールの特長
では、自社が必要としていることが検証されている機能に絞った、扱いやすい高コストパフォーマンスのツールを選ぶためには、どのような視点を持てばよいのか。 松本氏はツール提供側であるベンダーの設計思想として、「画面操作のわかりやすさ」、「インストールや設定の容易さ」、「ドキュメントの充実」、「サポート体制」に配慮していることが重要だと指摘する。機能重視の複雑なGUIでは、短期の訓練では使いこなせない。インストールや設定が容易で、支援体制が整備されていれば、ユーザーの運用管理者で導入や設定、運用が完結できる。
自社にとってコストパフォーマンスが高い製品を見出すには、ベンダーの提案に任せるだけでなく、自身で製品を比較選択することがキーになる。自社だけで判断することが難しければ、中立的なコンサルタントの提案や、調査会社の資料も参考になる。
運用負荷を軽減する「可視化」と「標準化」
「運用管理コスト削減」と並ぶ、本セッションのもう一つのテーマは「運用負荷の軽減」である。昨今、仮想環境の増加、高密度化やクラウド環境により、システムがより複雑化する傾向にある。それにともない、「操作ミス等運用のミス」すなわちヒューマンエラーも増えている、というのが松本氏の見立てだ。
一方、実際にクラウドを導入している企業は、10%台にとどまっているというデータが公表されている。一般的によく取り上げられるクラウドの導入を阻害する主な要因は、セキュリティとパフォーマンスだ。 実際、クラウド環境では柔軟にリソース配置が変わるため、パフォーマンス管理が難しい。
そこで松本氏が提言する業務負荷軽減のポイントは、仮想化環境やクラウド環境のパフォーマンス監視も取り入れた「仮想化・クラウド環境のシステムの可視化」による、障害発生の予測や迅速な障害対応の実現だ。さらに「構成変更プロセスを標準化」し、ヒューマンエラーによるインシデント発生数を削減する。
それらを実現する一つの手法は、今までの物理環境監視の機能に加えて、仮想化環境の監視にも対応した統合監視ツールと、トラフィックの現状把握ができるツールの導入だ。同時にITシステムの構成変更プロセスだけではなく、仮想化環境の導入プロセスを標準化し、作業負荷を低減できる構成変更管理ツールを使う。
「ドンキ」や「ユニクロ」が選んだ運用管理ツールとは?
以上の内製化、コスト削減、仮想化/クラウド対応を可能にし、コストパフォーマンスに優れていると評価されているのが、ゾーホーの運用管理ツール ManageEngineだ。製品のキャッチフレーズとして掲げられているのが「90:10 Promise」。欧米での運用管理における大手4社の運用管理ツールが備える90%の機能を、10%のコストで提供する、というコンセプトを表している。そのコストパフォーマンスの高さは、米国のIT市場調査会社であるInfo-Tech Research group社の調査資料「Vendor Landscape: Systems Management」において価値スコアがNo.1、として示されている。
本セッションではユーザー事例として、以下の4つが紹介された。
1.ドン・キホーテ社は、以前使用していたツールがバージョンアップに伴い、ライセンス料金が上がることや、一部のサーバーや機器の死活監視しかできていないという問題を抱えていた。同社はゾーホーのツールを導入し、監視コストを1/2に抑えただけでなく、仮想化環境の監視にもこぎつけた。
2.ユニクロを展開しているファーストリテイリング社では、既存のサービスデスク支援ツールがグローバルに対応していない、データ量が増えるにしたがって操作性が悪くなった、問い合わせ管理とFAQのシステムの連携ができない、という課題に直面していた。ゾーホーのサービスデスク構築・運用ツールは、これらの要件を満たすだけでなく、運用管理コストを1/2まで削減し、業務効率の向上や業務の可視化という効果ももたらした。
3.楽天グループの通信事業者であるフュージョン・コミュニケーションズ社は、新しく立ち上げるクラウドサービスを、いかにコストを抑えて安定供給できるか、という課題を抱えていた。ゾーホーのネットワーク・トラフィック解析ツールを導入後、トラフィック増加の原因を迅速に把握できるようになり、大きなトラブルもなく安定したクラウドサービスの提供している。
4.室蘭市役所は既存の監視システムでは設定や運用が難しく、業者に依存せざるをえないという問題を抱えていた。ゾーホーのサーバ・ネットワーク統合監視ツールの導入後は、内製化(完全自主運用)を実現し、ネットワークの変更に合わせた監視設定の変更も効率化された。コストメリットも大きいという。
松本氏は最後に「適切なツールの導入と活用は、運用管理コストの削減と運用管理業務の負荷の軽減の有力な方法です。その結果余ったリソースをITILのようなプロセス改善活動や人材育成に充当することができ、運用管理サービスの安定化、さらにはビジネス競争力の強化にもつながると考えています」と述べ、セッションを閉じた。
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