調査結果から見える遅々として進まないITを取り巻く環境
「正直なところ、2012年のIT投資はぼちぼちでした。ほぼ横ばいという企業がほとんどでした」
これは、同社が毎年実施している企業のIT投資動向調査の結果から出た言葉。リーマンショック以降、数年が経過し若干回復の兆しがあるものの、お金をどんどん使う時代からコスト削減を行い、削減分を投資にまわすという低成長時代に入っていると分析する。企業がIT投資先としてもっとも重要視する領域は、3年連続でIT基盤の統合、再構築というIT構造改革が入っている。この他にもビジネスプロセスの可視化、最適化、情報、ナレッジの共有、再利用環境の整備などの重要度が高い。とはいえ、これらは重要度は高いが、現時点での達成率はまだまだ低い。
一方で、ビッグデータの分析、活用、ソーシャル・テクノロジーのビジネスへの活用といった最近流行の領域については、重要度はまだあまり高くない。「これらはまだ話題先行ということになります。バズワードから企業が実際に取り組むまでには、タイムラグがあります」と内山氏。
アイ・ティ・アールでは、10年前に行った調査を2012年にも同じ内容で実施し、10年間でのIT部門の実績についても調べている。その結果から、この10年でもっとも実績が上がっているのは、コンピュータ利用の基準化やその文書化、あるいはシステム監査の実施となっている。これらについては企業が積極的に取り組んできたとも言えるが、個人情報保護法やJ-SOXなどへの対応に振り回された10年だったとも捉えられる。
また、この10年間ほとんど進んでいないのが、一般社員による情報システム部門の活動への理解、そして経営レベルでの自社情報システムの位置づけ向上といった領域だ。これらの結果からも、この10年は守りの戦略を情報システム部門はとっており、ビジネスをプラスに転じる戦略はほとんど行えていない状況が見て取れる。
さらにこれを裏付けているのが、情報システム部門の「3大永遠のテーマ」だ。情報、ナレッジの共有、再構築環境の整備、全社的なコンテンツ管理インフラの整備、マスターデータの統合。これら3つは、ビジネスをプラスにするITの活用領域であるが、常に重要な投資項目に挙げられているにもかかわらず、3年後の実施率がほとんど上がっていない。この永遠の課題に共通するのが、投資をしてもすぐに明確な効果が現れないものであること。そして、情報システム部門だけでなく、ユーザー部門を巻き込まないとうまくいかないものであることだ。