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クラウドで情報システム部門は、ベンダーは、SIやメーカーはどうなる?―AWS Summitパネルディスカッション録


クラウド時代の到来で、情報システム部門やベンダー、Slerの存在はどのように変化していくのか?去る6月6日、AWS Summit内で行われたパネルディスカッション「クラウドで変わるSI,ISVとエンドユーザーの関係」の模様をお届けする。

 モデレータ

 -片山 暁雄(アマゾン データ サービス ジャパン株式会社 技術統括本部 エンタープライズソリューション部 部長/ソリューションアーキテクト)

 パネリスト

 -宮本 眞一(ミサワホーム株式会社 企画管理本部 情報システム部 部長)

 -中村 輝雄(株式会社日立製作所 事業主管)

 -平野 洋一郎(インフォテリア株式会社 代表取締役社長 / CEO / CPO)

 左から、片山 暁雄氏、宮本 眞一氏、平野 洋一郎氏、中村 輝雄
左から、片山暁雄氏/宮本眞一氏/平野洋一郎氏/中村輝雄氏

クラウドでなにが変わったか?

片山:このパネルディスカッションではクラウドにかかわる様々な方にお越しいただいて、これからのクラウドについてご意見をいただければと思います。今年3月ユーザーイベント「JAWS DAYS」でSIerさんを集めたパネルディスカッションがあり、前日はエンドユーザーさんを集めたパネルディスカッションがありました。今回はSI、ISV、エンドユーザーさんがそろい、個人的にはエンタープライズパネルディスカッション3部作の最後をしめるものとして考えております。まずは自己紹介から。私はアマゾンデータサービスジャパンの片山です。お客様の導入支援などを行っております。

宮本:ミサワホーム株式会社の宮本です。ユーザーの立場で参加しました。私どもは住宅メーカーで、システムの再構築を進めているところです。会計システムやイメージデータなど、順次AWSに乗せようとしており、2014年にはすべてクラウドで動かすことを目標としています。

平野:インフォテリア株式会社の平野です。インフォテリアはデータ連携のASTERIA、モバイルのコンテンツマネジメントシステムHandbookなどを開発し提供しています。弊社ではクラウドを積極的にサポートしています。なぜなら、クラウド連携することにお客様に圧倒的な価値があると考えているからです。あとMIJS(Made In Japan Software Consortiumの副理事長もしています。今日はISV代表として参加しています。

中村:株式会社日立製作所の中村です。SIer代表です(メーカーでもあります)。日立の売上高は連結で9兆円、そのなかで情報通信システムなどコンピュータ関連が1兆7千億円です。4月1日に(後者で)組織再編があり、プラットフォーム(サーバーやストレージ、管理製品など)とシステムソリューション(金融や公共などのSI/SE)の2部門に分かれていたところ、その中間を束ねるサービス部門が追加になりました。クラウドはプラットフォーム部門からサービス部門に移り、今後はサービス化が進んでいくと考えています。

片山:ありがとうございます。日経コンピュータ 2013年1月24日号にて「クラウドファーストが常識に」という特集がありました。アメリカのオバマ大統領の提案からはじまり、日本の企業もクラウドを選択するようになってきたとあります。記事には宮本さまの体験や問題提起もありました。そのときの話を宮本さま、お願いします。

宮本:AWSをやろうとベンダーさんに相談したところ「このソフトウェアはAWSでは稼働しない」と断られ、残念だなと断念しかけました。しかしよくよく理由を問いただすと「できない」のではなく、「やったことがない」、「やりたくない」でした。なぜやりたくないかというと「まだやったことがない」から。疑問点を解消していくようにするからやってくれないかと働きかけ、調査や検証を進めました。先ほども「そろそろ(話題にするのは)勘弁してください」と言われて今度こそ最後にするつもりですが、なかなか勘弁できないのですよ(笑)。AWSではないクラウド、つまりオンプレミスやプライベートクラウドなど伸縮できないものを利用するとなると長期間それに拘束されてしまうからです。結果的には対応していただけてよかったです。

片山:クラウドを利用しながら変わったことなどを話していただければと思います。

平野:AWS導入で変化したものというとコストや可用性がよく挙げられます。しかし最も変わったのはソフトウェア提供のスピードです。クラウドサービスの「Handbook」はいまマンスリーアップデート(月次で機能強化)をしています。オンプレミスのASTERIAではできません。クラウドサービスでソフトウェアの俊敏性や進化が劇的に変わります。このサイクルに入るとオンプレミス製品を提供している企業はクラウドサービスを提供している企業には絶対に追いつけません。ISVは特に意識してもらいたいです。

片山:変わったのは考え方でしょうか?

平野:デプロイです。オンプレミスは最新版を顧客にお届けし、アップデートはお客様に実施していただかなくてはなりません。しかしサービスならAWSで稼働させているソフトウェアを私たちがアップデートします。お客様はアップデートした結果だけを受け取ることができます。

片山:中村さんはいかがでしょうか?

中村:先に話したように組織改編がありまして、なかなかつらい立場です(苦笑)。なぜならプラットフォーム部門から言うとサービスになると売上が立たないのです。ゼロスクラッチしていたフロントからしても同じく。月額料金にすると(5年分なら)1/60となってしまいます。流れなので仕方がないのですけどね。ビジネスモデルが全く変わるという状況です。ただ長期的にはいいことなのです。過渡期にはいろいろと経営的な苦労や議論が必要になります。

平野:売上が変わるとのこと。中村さん、営業の評価システムは変わりましたか?

中村:まだ変わっていないので大問題なのです(笑)。サービスのインセンティブを上げるように変えなくてはいけません。直近の売上にこだわってしまうと、どうしても「売り切りたい」という心理が働いてしまいます。ただ最近の動向を見てもクラウドの流れは必須です。覚悟をもってやっていきたいです。

片山:力強いお言葉、ありがとうございます。ユーザーの立場から見て、AWS導入で変化したことはありますか?

宮本:今の話を聞いていると、ユーザーが得するかのような。いい感じですね(一同、笑)。AWSになり、ユーザーは要件定義でつめよられることが減り、相手に対して「ちゃんと決めていない」と怒ることも減ったように思います。「AWSならスモールスタートすればいい。だめならやめればいい」と変わり、互いに優しく接することができるように変わりました。

片山:その境地に至るまではどうでしたか?

宮本:考え方を変えるのは容易ではありませんでした。気持ちもありますし、知見、つまり知識不足による不安や抵抗もありました。いま情報システム部門はもうサーバーを選択する楽しみはなくなりましたが、AWSに接しながら新しい知識を得るときめきを楽しんでいます。

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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