前回の記事では、変動損益計算書の特徴を説明しました。変動損益計算書で把握できる限界利益は、付加価値そのものです。今回は、変動損益計算書を作成するために必要となる変動費、固定費の特徴を紹介します。変動費、固定費の特徴を理解したうえで、変動損益計算書を作成することが、事業計画では非常に重要です。なぜなら付加価値を高める経営につながるからです。詳細を解説していきましょう。
変動費の特徴と内容-使えば使うほど付加価値が減少する

変動費は、2つの特徴を持っています。1つ目は、みなさんがよくご存知のとおり、売上高や販売数量に比例して増減する費用です。2つ目は、外部から購入した価値(費用)ということです。
変動費になる勘定科目を整理すると次のようになります。
1:製造部門、ソフト開発部門などで発生するもの(製造原価になる)
- 材料費、外注加工費、業務委託費(ソフト制作の委託など)
2:販売部門等で発生するもの(販売費一般管理費になる)
- 売上原価⇒商品売上原価、仕入に関連する運送費の負担分
- 販売費 ⇒発送配達費、容器包装費、消耗品費
- 特許使用料、ロイヤリティなど売上に応じて支払うもの
2つ目の特徴である、「外部から購入した価値(費用)」に注目すると、売上高から変動費を控除した「限界利益」は、会社内部で生み出した「価値(付加価値)」と考えることができるのです。
この特徴から、変動費を使えば使うほど、付加価値は減少していくことがわかります。ソフトウェア会社は、本来、人件費が多い固定費型の業界ですが、他社に、開発の業務委託費を支払えば支払うほど、自社の限界利益(率)は小さくなります。これは売上高に対する付加価値の割合が小さくなることです。もし戦略的に高付加価値を目指すなら、ソフトウェア開発の内製化率を高めなければなりません。製造業やハウスメーカーなども同様の課題を抱えています。
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千賀 秀信(センガ ヒデノブ)
公認会計士、税理士専門の情報処理サービス業・株式会社TKC(東証1部)で、財務会計、経営管理などのシステム開発、営業、広報、教育などを担当。18年間勤務後、1997年にマネジメント能力開発研究所を設立し、企業経営と計数を結びつけた独自のマネジメント能力開発プログラムを構築。「わかりやすさと具体性」という点で、多くの企業担当者や受講生からよい評価を受けている。研修、コンサルティング、執筆などで活躍中。日本能率協...
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