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企業組織はイノベーション向きではない-新規事業にあう「計画」と「組織設計」とは? 

第4回:イノベーションに効く翻訳書02:『イノベーションを実行する』 

異なるチームによる共同事業の設計

 一般的に「イノベーションの実行には専属のチームが必要」と言われている。それ自体は正しい。しかし、専属チームだけではうまくいかない。どんなイノベーションの取り組みであっても、実行段階では生産性や効率が必要になってくる。現実的には、既に社内に存在する優れたオペレーション担当者の協力が不可欠だ。

 フルタイムでイノベーションに関わる専任チームの構築と、専属チームを適宜支援するスタッフで「共同事業」を進めていくことが好ましい。

図2 共同事業の形
(書籍の図版を元に筆者が作成)

 では、どのように共同事業を設計していくべきだろうか?一般的に想定される課題は3つほどあり、本書では課題の解説とその対応法についてそれぞれ記述がある。ここでは、1つ目の課題である「リーソス」の取り合いについて紹介したい。

「不確実性」と「確実性」の対立

 イノベーションの取り組みが始まり出した頃に、あまりリソースは必要とされない。3Mのポスト・イットにせよ、GoogleのGmailにせよ、最初は担当者が時間外にコツコツと取り組んでいただけだ。

 しかし、ある程度芽が育ち、事業化の可能性が高まってくると投下すべきリソースも徐々に増えていく。難しいのは、イノベーション側の責任者は「不確実性」を前提としてリソースを要求する点だ。一方のオペレーション側の責任者は「確実性」を前提に日々リソースを活用している。

 たとえば、従来の顧客サービス部門に、イノベーション関連の問い合わせも取り次いで欲しいケースがあった。しかし、サービス部門の責任者は「数パーセントの誤差の範囲で、どの程度の問い合わせが増えるのか予測をしてもらう必要がある」と言う。仮に予測したところで、問い合わせ件数は想定の2倍あるかもしれないし、2分の1かもしれない。

 また、イノベーションの責任者は、顧客からの問い合わせに対して適切に対応できる能力を十分に確保したいとも考えていた。そこで、サービス部門に人材採用と新市場のニーズに合わせた訓練を希望した。しかし、サービス部門からすればそれは余計なコストに見える。本当に増えるかどうかわからない問い合わせのために、大量の人材を抱え込みたくはない。

 このように、イノベーション側の不確実性とオペレーション側の確実性という特徴が、常に衝突をもたらす。こういった対立をうまく処理するにはどうすればいいのだろうか?

次のページ
共同事業における対立を防ぐには?

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この記事の著者

柏野 尊徳(カシノ タカノリ)

岡山県出身。専門はイノベーション・プロセス。スタンフォード大学d.schoolでイノベーション手法:デザイン思考を学ぶ。同大学発行の『デザイン思考家が知っておくべき39のメソッド』監訳など、デザイン思考関連教材は公開6ヶ月でダウンロード5万件。岡山大学大学院で3年間教鞭を執った後、慶應義塾大学SFC(湘南藤...

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