新しいカスタマープラットフォーム「Salesforce platform」
ソーシャルメディアやモバイルアプリの活用に有効性は見いだされているものの、実際にはまだ準備ができてない企業が多い。IBMがCMO(Chief Marketing Officer)に行った調査によると、実に2/3が「準備できていない」と回答した。主な理由は「モバイルアプリケーションの開発が困難」と技術面での課題が挙げられた。
その解決策として同社が紹介するのが新しいカスタマープラットフォーム「Salesforce platform」である。データやUI用のAPIなどが提供され、同社のサービスを統合的に利用できるようにする基盤となるものだ。これによりユーザーはあらゆるデバイスでセールスフォースのサービスを利用できるようになる。
セールスフォースにより「顧客のインターネット」が実現できた未来図を同社 専務執行役員 保科実氏がデモで披露した。医療機器メーカーにて担当営業、コンタクトセンター、フィールドサポートなど別々の役割を持つメンバーがセールスフォースのサービスを活用して顧客の情報をスムーズかつ素早く共有するストーリーを示した。
簡単に流れを追うとこうだ。担当営業はある顧客の機器が定期メンテナンスの時期が近づいており、その顧客とは重要な営業案件が進行中のため、早期対応リクエストをコンタクトセンターに送信する。メンテナンスする機器はインターネットに接続しているため、クラウドを通じて機器の利用状況を把握できる。コンタクトセンターの担当者は機器の利用状況のデータを添付するとともにフィールドサポートに早期対応リクエストを伝達し、フィールドサポートのエンジニアは添付されたデータを参考にしながらメンテナンスを実施するというもの。
ベニオフ氏はフィリップス製の電動歯ブラシを愛用しているという。この歯ブラシがインターネットに接続すれば、歯ブラシの使用状況がクラウドを通じて共有できるようになるかもしれない。たとえば歯科医が患者の電動歯ブラシの利用状況を閲覧できるとしたら、こんな風に言うかもしれないとベニオフ氏は予想している。「ベニオフさん、今週はきちんと歯磨きしているようですが、先週はたまに稼働していない記録があるので磨き忘れがあるようですね」。あらゆる機器が通信機能を保有すると世界が変わってくる。
セールスフォースが目指すのはサービスそのものよりも、サービスを通じて顧客とよりつながることができる世界だ。CRMでクラウドをけん引してきた同社らしい。基調講演ではセールスフォースのサービスを利用して顧客と良好な関係を築き、ビジネスにつなげている企業や団体がいくつか紹介された。
ゲストとして登場したキヤノンシステムアンドサポート 代表取締役社長の神野明彦氏は当初「セールスフォースをセールスツールとして認識し、案件管理に活用できると期待していた」という。しかし効果はそれだけではなかった。顧客の行動管理もできることがわかり「顧客への提案が変わってきました。(セールスフォースの利用が)ターニングポイントとなりました」と語った。
セールスフォースを利用しているのは企業だけではない。経済産業省が中小企業・小規模事業者の支援向けに提供しているサイト「ミラサポ」でもセールスフォースが活用されている。「ミラサポ」はちょうど10月17日から本格版として稼働するようになったところだ。
経済産業省 中小企業庁 長官官房 参事官 三又裕生氏は「日本に中小企業は420万、日本の企業数のほとんど、従業員数の7割を占めています。日本の浮沈は中小企業が元気かどうかにかかっています。ゆえにミラサポは大事なサイトであり、官公庁が提供するサイトにしては珍しくSNS機能も保有し、企業同士がつながることもできます。ぜひ一度サイトをのぞいてみて、よかったら使ってみてください」と会場に呼びかけた。
基調講演の最後には会場へのサプライズプレゼントが発表された。会場の椅子に11月18日からアメリカで開催される年次イベント「Dreamforce '13」への招待状が20人分潜ませてあるというもの。幸運にも招待状のある椅子に座っていた人は航空券とホテル宿泊も込みでイベントに参加できることとなった。世界最大のクラウド・コンピューティングイベントである同イベントでは、毎年新しい製品・サービスについて紹介されており、今年も大いに期待できそうだ。