“モノのインターネット”から“顧客のインターネット”へ
いまコンピューティングの世界は「第三の波」が到来している。最初の波はメインフレーム、次にクライアント・サーバー、そして今やクラウドである。来たる世界ではあらゆるコンピューターがWi-Fiを通じてクラウドに接続する。接続する端末はパソコンに限らず、携帯電話、タブレット、ゲーム機、車、さらに発電設備など大がかりなものからセンサーのような部品までも含む。これは「モノのインターネット」とも呼ばれている。
ベニオフ氏の日常も着実に変化している。日々iPhoneアプリからセールスフォースのサービスを利用するだけではなく、トヨタの車でカーナビを使い、キヤノンの6D(EOS初の無線LAN内蔵機種)で写真を送信しているという。あらゆる機器がネットに接続しつつある現在を「アメージング!(すごい)」と興奮気味に語る。インターネットに接続する機器は2020年には500億台にも上ると予測されている。
現在スマートフォンは世界で15億台、2017年には50億台に到達するという予測もある。スマートフォンの台数が増えれば、インターネットでソーシャルメディアに接する人間も増える。ソーシャルメディアのユーザーは自身が購入した製品について投稿し、その発言は拡散され、他ユーザーの購買行動に影響を与えていく。
今やビジネスでソーシャルメディアの影響力は無視できない。ベニオフ氏は「忘れてはいけないのはあらゆるモノの向こうにはお客様がいるということ」と強調した。どの時代のビジネスでも製品の向こうには顧客がいる。製品は顧客との接点となってきた。さらに現代では先述した変化が起きていて、顧客との接点は増えてきている。モノ(製品)だけではなく、あらゆるデバイス、あらゆるアプリ、あらゆる投稿が顧客との接点となりつつある。
ベニオフ氏はそれを「顧客のインターネット」と称し、観衆をこう誘う。「来たる新しい世界ではあらゆるモノの向こうに顧客がいます。なんてわくわくする世界でしょうか。新しい“顧客のインターネット”という世界にようこそ」。
販売者と顧客の間で大きな位置を占めるのがソーシャルメディアだ。ベニオフ氏はソーシャルメディアを「つながるための仕組み」と表し、従来のシステムとは異なると指摘する。「例えば顧客が銀行で取引をすればデータの処理になります。一方、顧客がソーシャルメディアを通じて銀行と接するなら対話の経験となります。これからはあらゆるモノがあなたに語りかけるようになるのです」。
「あらゆる機器がインターネットに接続することにより“モノのインターネット”から“顧客のインターネット”が形成されていきます」とベニオフ氏は説く。「私たちは大きな転換点にいます。準備はできていますか?」と観衆に問いかけた。