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「次世代EAIでデータに基づく経営を」アイ・ティ・アール甲元氏
甲元氏は、「ビジネスに貢献するデータ統合システムの構築指針」と題した基調講演を行った。テーマは、データ分析がいかに重要であるか、データ分析を行うための「データ統合基盤」はどのような価値を持っているか、そして、データを重視した経営を行うためのポイントは何かについて解説した。
まず、データ分析の重要性については、「見える化」と「分析」の違いをとらえることが重要だと説明した。企業が取り扱う情報やデータの量が飛躍的に増加しているものの、多くの企業はそうしたデータを生かしきれていない。その理由の1つが、多くの場合「何が起こったかがわかる」という段階でとどまってしまうからだ。
「『何が起こったかが分かる』の次にくるのは『なぜ起こったかが分かる』ということだ。『なぜ起こったかが分かる』と『これから何が起こるかを予想できる』ようになる。また『何をすべきも分かる』ようになる。ここ数年のITのキーワードだった見える化は、『何が起こったかが分かる』段階で止まっていた。大事なのはそれ以降であり、それが分析の段階になる」(甲元氏)
甲元氏によると、見える化から分析へのステップアップが最も高い障壁だ。そこで、その障壁を超えるために、データを分析するためのツールや仕組みを用いる。一般的には、そのためのシステムは、さまざまなデータソースからデータを収集、変換、ロードし、システム間の連携・協調をおこなうための「データ統合基盤」、収集したデータを蓄積しておく「データ蓄積」の基盤(DWHやRDBMS、NoSQL、Hadoopなど)、それらデータを実際に分析するための「分析ツール」(BIツール、統計ツールなど)で構成することになる。
とはいえ、データ分析における格言に「Garbage in, garbage out」(ゴミのようなデータを用いてもゴミのような結果しか得られない)とあるように、品質の低い、鮮度の古いデータをいくら高度に、高速に分析しても意味はない。重要になるのは、つまりデータ統合基盤を構築し、適切なデータを渡し、価値のあるデータを収集するということだ。
そのうえで、甲元氏は、データ統合基盤において障壁を超えるためのポイントとして、3つを挙げた。1つは、「システム/データの多様化」に対応できるようにすることだ。これは、対象のシステムやデータが増えているのに、それらをうまく扱えないという今日の課題に対応するものだ。2つめのポイントは、「高速開発と内製化」だ。これは、分析のためのシステムの開発に時間とコストがかかり、データをタイムリーに分析できないという課題に対応するものになる。最後のポイントは「自動化」だ。分析のために手作業でデータを加工していては、迅速な分析はできない。
そして、この3つのポイントを満たすソリューションとして注目できるのが、次世代EAIと呼ばれるソリューションだと説明した。甲元氏によると、次世代EAIは従来型のEAIと違って、多種多様なシステムとの連携やデータに対応しており、データの抽出や変換といった処理を自動化できることが特徴だという。また、ESB製品やETLツールのように、SOAシステムやDWHへのデータ取り込みといった限定的なシーンで利用されるのではなく、幅広いシーンでデータ連携ツールとして利用したり、ノンプログラミングでの高速開発ツールが提供されたりする。
「次世代EAIは、データ分析準備にかかる開発工数を下げ、ビジネスへの貢献度を向上させる効果が期待できる。また、IT部門がユーザー部門のより多くの要求にこたえられるようになり、IT部門の意識改革にもつながる。GUIでの開発によって開発言語に起因する技術継承の問題を解消にもつながるだろう」(甲元氏)
このほか、データ分析への取り組みでありがちな、社内に大量のExcelファイルが作成、保管されてデータが生かせなくなる「Excel氾濫」の解消にもつながるという。
当然、こうした次世代EAIをツールとして導入するだけでは成果は上がらない。重要なのはデータ重視の企業風土を醸成し、経営者から現場スタッフに至る誰もが、データに基づくPDCAサイクルを、労なくまわすことだ。甲元氏は、最後に、次のようにアドバイスした。
「自社の企業風土が分析に対して未成熟と思われるIT部門は、データ重視の経営の重要性を、経営者やビジネス部門に能動的に訴求することから始めてほしい。そのための大前提となるのがデータ統合基盤の整備だ。IT部門にとってデータ統合基盤は、もはやインフラと同義だ思って取り組んでほしい」