EMCの2014年のテーマはREDEFINE、再定義ではなく新定義
一時期はGreenplum、RSAなどを次々と買収し、ストレージのEMCからなんでもありの総合ITベンダーへと移行するかとも思われた。しかし、昨年新たにVMware、GEらとともに出資しPivotal社を設立、こちらでSoftware-Defined Enterpriseを対象にし、VMwareがSoftware-Defined Data Centerを、そしてEMCがSoftware-Defined Storageをと、3社で棲み分ける体制を整えている。結果的には、本来のコアビジネスであるストレージに回帰したとも言えるだろう。
異なるのは、ストレージのハードのウェアビジネスから、ソフトウェアが中心的な存在となっていることだ。「ストレージはハードウェアですが、中身はソフトウェアが締めている部分がかなり大きいのです」と、EMCジャパン 代表取締役社長の山野 修氏。いまや、ストレージの世界ではソフトウェアが重要だ。もちろんストレージ装置の中のソフトウェアもあれば、ソフトウェアを取り出し仮想的にストレージ環境を提供する使い方も増えている。
「サーバーが仮想化で進化しているのと同じように、ストレージもそうなっていきます。さらにバックアップやディザスタリカバリなども、仮想化のストレージを使って実現していくのが1つの戦略です」(山野氏)
一方で、ハードウェア的にはやはり、オールフラッシュの台頭がEMCにも起こっている。昨年発表したオールフラッシュアレイの「XtremIO」は、1四半期中に300社に出荷、「EMCは後発だが、一気にこの分野のリーダーになりました」と山野氏は自信を見せる。
さて、これらを使ってEMCは、第3のプラットフォームへの移行をサポートする。第3のプラットフォームとは次世代のクラウドアプリケーションを活用するためのものであり、関連要素にはクラウド、ソーシャル、ビッグデータ、モバイルとお馴染みのものがある。この第3のプラットフォームは、従来ERPなどを動かしてきた第2のプラットフォームとはまったく異なるもので、第2がオペレーティング費用の削減に使われてきたのに対し、第3は新しいビジネスモデルへの投資的な意味合いが強いプラットフォームだ。
なので、従来の延長線上で考えるべきものではなく、まったく新たに考えていく必要がある。そのため、この第3のプラットフォームを支援するEMCの2014年のテーマは「REDFINE」、日本語では「新定義」としている。
「第3のプラットフォームの時代には、ITのユーザーなりの思考を変えていかなければなりません。これまでも顧客に変革して下さいと話はしてきましたが、さらに進めて考え方すべてを変えていかなければなりません。なので『REDFINED』、再定義ではなく新定義です。これは顧客だけでなく、EMC自身も新定義しなければなりません」(山野氏)
このためには、パートナープログラムも一新する。さらに、新たなブランディング活動として、F1レースのロータスのスポンサーもスタートする。これは、単なる広告活動ではない。F1ではセンサーなどを使い、さまざまなデータを集めそれを活用している。まさにビッグデータ活用の象徴のようなもの。EMCでは、ワールドワイドでロータスチームが利用するITの仕組みをサポートしていく。
ところで、発表会の最後の質疑応答で、EMCのライバルはどこかという質問が出た。これに対して山野氏は、「第2のプラットフォーム時代は、NetAppとかがライバルでした。第3のプラットフォームとなると、Amazon Web Servicesが気になる存在です」とのこと。ストレージベンダーのライバルにも、Amazon Web Servicesが登場する時代となった。EMCは、どう戦っていくのか。「エコシステムを考えた際に、Amazon Web Servicesがいいのかどうかを顧客に問いかけていきます。値段だけでなく、いろいろな尺度で戦略を出していかなければならないでしょう」と山野氏。ストレージ製品のスペックでは計れないメリットを、いかに顧客に提示できるか。それが、EMCが今後も順調なビジネスを続けられるかどうかの鍵となりそうだ。