ビッグデータ時代のニーズに合わせた進化したSAP BusinessObjects
SAP BusinessObjectsは、最初に注目された頃から提供されている歴史の長いBIツールだ。これまでに、多くのユーザーが利用してきた。SAP BusinessObjectsの最新バージョンは4.1、ビッグデータ時代に対応する進化がなされたバージョンだ。かつてのBIツールは、事業企画部門やアナリストなど、分析を専門に行うユーザーが使うものだった。そこからダッシュボード機能などで、経営層も利用するようになる。そして今、ビッグデータ時代となり利用は拡大、企業のさまざまなシーンでデータに基づいた判断をするために使われるようになった。
ビッグデータ時代にBIツールに求められる機能も増えている。その1つとしてSAP BusinessObjectsに実装されているのが、データマイニング機能だ。データを分析し現状把握するだけでなく、実績データなどから将来どうなるかを予測する。予測をもとに問題が発生する前に対処できるようになる。
また、利用するユーザーが増えたことで、それぞれの役職や業務に応じた分析環境の提供も求められる。従来のBIツールでは、情報システム部門などが手間をかけそれらを用意しなければならなかった。SAP BusinessObjects 4.1では、パワーユーザー自身が分析に必要なデータを“セルフサービス”で作り出せる。レポーティングや分析でも、そしてデータマイニングでさえもセルフサービスで取り組める拡張が取り入れられている。
SAP BusinessObjectsは、このように時代ニーズに合わせ進化を続けている。だからこそ、市場で長く評価を獲得している。ビッグデータに対応した新しい4.0、4.1といったバージョン製品は、すでに世界中の8,000社あまりで稼働している。たとえば、3Mでは数万ユーザーと大規模な利用もある。
モバイルデバイスやデータのリアルタイム活用にも対応
SAP BusinessObjectsには、多彩なレポート機能、経営者層などが情報を把握するのに便利なダッシュボード、直感的な操作で複雑な疑問にも答える高度な分析環境など、10を超えるアプリケーションが用意されている。これは、BIツールを利用する人が全社レベルに広がったために、それぞれの職種や職責に応じ、行いたいBIによるデータ活用が異なるためだ。
1つの環境だけで、すべてのニーズには答えられない。とはいえ、データ活用の環境が異なっても、参照しているデータは一元的に管理され同じものを利用することが重要だ。ツールごとに別々のデータベースを持つようでは、たとえデータソースが共通でもデータを集計する際などに誤差が発生する。さらには、データを集約、集計するタイミングが異なれば、これまたツールごとに異なるデータとなりかねない。異なるデータを参照していては、精度の高い意思決定はできない。
SAP BusinessObjectsでは、ユニバースと呼ばれる機能を利用することで、さまざまなデータソースを連結する。これは単なる技術的な統合ではなく、一般ユーザの現場の知見が分析に取り込める点で大きな意味がある。データの一元化には大規模なデータベースを別途用意することが多いが、それでも実現しにくい点がユニバースでは提供できる。SAP BusinessObjectsのユニバース機能を使うことで、仮想的に統合して分析ニーズの変化にも柔軟に対応できるようになる。
もう1つビッグデータ時代に押さえておかなければならないのが、モバイルデバイスへの対応だ。スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末が、幅広く普及している。ユーザーは、PCの前でだけでなくさまざまな場所、さまざまなシーンでデータ活用を行いたい。そのためには、モバイル対応は必須だ。
SAP BusinessObjects Mobileは、まさにそのニーズに応える機能だ。単に、モバイルでデータが見られるだけでなく、モバイル環境で使いやすい形で、PCと同等のデータ活用が可能になっている。他のBIツールもモバイル対応をうたっているが、モバイル用に画面を別途構築するなど手間のかかるものも多い。SAP BusinessObjectsの場合には、モバイル用に構築する作業は必要ない。1つの設定だけで、モバイルでもPCでも使い勝手の良いデータ活用環境が構築できる。PCを設置できない店舗や工場でも活用シーンが広がる。
さらに、忘れてはならないのがリアルタイムでのデータ活用だ。これを実現するプラットフォームとして、SAPではインメモリデータベースのSAP HANAを提供している。当然ながらSAP HANAとSAP BusinessObjectsは連携できる。ビッグデータのリアルタイム処理は、まだ必要ないと言うユーザーもいるだろう。しかし、たとえばPOSデータがほぼリアルタイムに手元のタブレット端末で参照できるようになると、従来のバッチ処理で用意される1日遅れの売り上げ動向データでは満足できなくなる。リアルタイムのデータが実際にあるかないかで、さまざまな意思決定の説得力は大きく違ってくるのだ。
これまでBIツールは、おもに社内で業務効率化のためなどに利用されてきた。最近は、さらに適用領域が拡大している。その1つが、情報サービスとしてデータと分析環境を販売する企業での利用だ。業種特化型サービスが多いが、分析による付加価値を顧客に提供する。その価値付加にSAP BusinessObjectsが活躍する。
この種の有償サービスはビッグデータ時代の新たな形である。企業が社内システムで活用するBIツールとは異なる意味を持つ。しかし、情報サービス産業がSAP BusinessObjectsを採用しているという事は、製品としてある一定の価値を認めているとも言えるだろう。
最新のBusinessObjectsを使いこなすためのガイド書籍が登場!
このようにビッグデータ時代のニーズに対応すべく進化したSAP BusinessObjectsには、豊富な機能が存在する。そのため、今回の記事だけでは到底説明しきれない。「これまでもSAP BusinessObjectsを使ってきたけれど、まだ最新版にバージョンアップをしていない」「ビッグデータ時代に新たなデータ活用を始めたい」――そういう人は、このSAP BusinessObjectsの最新版を紹介している書籍『SAP BusinessObjects BI Platform 4.1 ビッグデータ時代の分析プラットフォーム入門』が出版されたので、ぜひ手にとってみて欲しい。
最新のSAP BusinessObjectsとはどんなものか、利用するには具体的にどうすればいいのかがこの書籍では詳しく解説されている。インストール方法から、SAP BusinessObjectsに含まれている各種アプリケーションの概要とその特長、さらにはユニバースで実現できることとその方法、モバイルデバイスへの対応、SAP HANAとの連携シナリオなどが具体的に示されている。
また、SAP BusinessObjectsを使ってBI環境を作るところだけでなく、それを継続的に運用するのに必要なことについても解説されている。データ量が増えれば、必ず性能に関する課題が生まれてくる。さらに、活用するデータは業績などにも直結するものであり、企業にとっては最も重要な「資産」であり、安全かつ適切に管理しなければならない。当然ながら、バックアップやマイグレーション、災害対策なども考慮する必要がある。これら運用管理の一部についても、書籍では言及されている。
SAP BusinessObjectsの入門書という位置づけだ。この書籍と、同社が提供するマニュアルなどを合わせて読む事でより深い情報を取得して欲しい。
■目次
- 序章:ビッグデータ活用とビジネスアナリティクス
- 第1章:SAP BusinessObjectsの概要
- 第2章:SAP BusinessObjectsのインストール
- 第3章:SAP BusinessObjectsと各種アプリケーション
- 第4章:ユニバース、各種データベースへの接続
- 第5章:SAP BusinessObjects Mobile
- 第6章:SAP HANA環境でのSAP BusinessObjects活用シナリオ
- 第7章:サーバアーキテクチャとセントラル管理コンソール
- 第8章:High Availability構成とファイアウォール設定の考慮
- 第9章:バックアップと運用、マイグレーション
- 第10章:SAP BusinessObjectsの活用事例
■■■ 書籍 概要■■■
『SAP BusinessObjects BI Platform 4.1 ビッグデータ時代の分析プラットフォーム入門』(2014年2月21日、翔泳社発行)
本書は、このSAP BusinessObjectsを中心に、データ分析を実現するためのシステムをどう構築するかを解説します。データ分析システムの基本的な知識から、SAP BusinessObjectsのさまざまな機能を使ったレポート、状況を把握するためのダッシュボードなどの作成方法を解説するものです。SAPの新しいインメモリデータベースSAP Hanaの利用についても説明するなど、ビジネスインテリジェンスを実現する最新のデータ活用のノウハウをお届けします。