基調講演—日米スタートアップ環境の類似点と相違点
アレン・マイナー氏 サンブリッジグループ CEO
日米のベンチャーシーンで“差はあまりない”と感じている点
1:起業家の発想力と経営のケイパビリティは、日米でそれほど差が大きいわけではない。
日米両方で投資をしていると、アメリカでも駄目なアントレプレナーのほうが多いことがわかる。「LINE」と「WhatsApp」を比較したら、LINEのほうが面白さでは負けていない点も多いのではないか。たくさんのベンチャーからほんとうに光る企業に、能力、資源、時間を集中すれば、日本のアントレプレナーのポテンシャルはアメリカに劣っていないと感じる。
2:最初の数千万円の集めやすさは変わらない。
アイデアを具現化していくための、プロトタイピング、サービスインまでに必要な最初の数千万円の調達は、ひょっとすると日本のほうが集めやすいかもしれない。日本のベンチャーキャピタルは、その段階から数千万単位で出資するが、アメリカのベンチャーキャピタルはその段階では何もしない。そのため、アメリカでは個人投資家を見つけなければならないが、それはなかなか困難だからである。
3:設立当初のベンチャーはきわめてローカルである。
日本でもアメリカでも、スタートアップはほとんどの場合、東京であれば地下鉄で行き来できる範囲内、シリコンバレーなら車で30分以内での圏内で立ち上げられる。きわめてローカルにスタートするが、傾向としては日本のほうが変わりつつあるのではないか。
アメリカの場合、アメリカのマーケットだけで大きく成長させ、海外展開は余計なことという傾向になっている会社が多いのではないか。以前より世界展開が遅れている。
それに対して、JVR(ジャパンベンチャーリサーチ)の直近10年の研究によると、この2~3年で、海外に本社を置く日本人経営者の企業が増えている。「資金調達を行った企業の地域別の金額の割合」データで「海外」項目を辿ると、2011年には資金調達を実現した企業で海外に本社を置く企業が全体の1%となっており、日本のベンチャー投資のうち1%が海外へ行っていた。これが2012年には2%、2013年には10%に伸びている。2013年は、海外に本社を置く企業への資金調達の割合が飛躍的に増加したといえる。会社を立ち上げてから海外展開するGo global型ではなく、最初からBorn global型で取り組むベンチャーが少しずつ増えているということだ。