SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

EnterpriseZine Day Special

2024年10月16日(火)オンライン開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

週刊DBオンライン 谷川耕一

IBMのクラウド戦略は「Dynamic Cloud」―中核はSoftLayer


 先週は、IBMのカンファレンス・イベント「Pulse 2014」を取材するために米国ラスベガスに赴いていた。このイベント、以前はTivoliなどのシステム運用管理製品に関連するソリューションが中心だったが、今年からはそれが大きく変化しクラウドのイベントに。テーマも「The Premier Cloud Conference」となった。

IBMが目指すのはオンプレミス、オフプレミスが1つとなるDynamic Cloudだ

cap
 SoftLayer CEO
ランス・クロスビー氏

 今回のイベントでもっとも数多く登場したのは、昨年買収したSoftLayerだろう。IBMは以前からSmarterCloudという名称でさまざまなクラウド関連ビジネスを展開してきた。それが、このSoftLayerの買収で一気に加速。というよりも、SoftLayerを核にクラウドのソリューションを再構築したと言っても良い。

 いまやすっかりIBMに取り込まれた感のあるSoftLayerだが、組織的には買収前のまま独立して動いているそうだ。SoftLayerのCEO ランス・クロスビー氏によると、IBMは買収後も24から36ヶ月はSoftLayerの既存ビジネスを見守る方針なんだとか。SoftLayerがどんなビジネスをしているかを見極めた上で、今後の体制をじっくりと整えるとのこと。

 とはいえそういった動きとは別に、IBM自体はSoftLayerを活用するクラウドシナリオをすでに書き上げている。それを発表したのが、今回のイベント。そのシナリオのキーワードは、「Dynamic Cloud」。これは、いわゆるハイブリッド・クラウドのことだ。とはいえ、たんにオンプレミスとオフプレミスの両方が混在する状況を指すのではなく、オンプレミスとオフプレミスの両方があたかも1つの環境に見えるようするのがポイントだ。

 これまでのハイブリッド・クラウドは、せいぜいオンプレミスとオフプレミスでデータ連係するのが関の山。それぞれは独立した存在だった。OracleやMicrosoftは両方において同一のアーキテクチャを採用しているので、顧客が望めば自由に両者間を行き来できると主張してきた。つまりは、そこがオフプレミスのクラウドしか持たないセールスフォースドットコムなどとの違い。

 IBMの場合は、それをさらに一歩進めた考え方だ。行き来するだけでなく、オンプレミス、オフプレミスのリソースを1つに捉え、動かしたいアプリケーションのワークロードに応じダイナミックに両方のリソースを利用できるようにする。これを実現するには、たんにオープンな口を持っているだけでなくクラウドのアーキテクチャそのものがオープンでなければならない。

 このオープンクラウドの考え方を、1社で主張していても始まらない。ということもあり、オープンなPaaS基盤であるCloud Foundryを進めてきたPivotal、それに賛同していたHPやSAP、Rackspace、もちろんEMCやVMwareらとともに「Cloud Foundry Foundation」を設立し、この活動に積極的に貢献していくことを発表した。IBMはクラウドの世界におけるオープン化のリーダーシップをとっていくと言うことだ。

 このFoundationの活動からどのような成果が生まれてくるかは未知数。今後は「オープンなクラウドを推進」する陣営と「それ以外」という構図ができあがりそうな予感がする。いまのところ「それ以外」側は個別の存在であり、彼らが手を組むことはなさそうだ。

 さまざまなクラウドサービス、さらには既存のオンプレミス環境があっても、あたかもそれが1つの環境のように運用できる。これは理想的な姿だろう。とはいえ実際に真にシームレスな環境を実現するのは、そう簡単なことではない。それを楽にするためのツールやオープンスタンダードなインターフェイスがこれから揃ってくるだろうが、それらを使ったとしても1つのダイナミック環境に仕上げるにはそれなりに手間がかかるはず。手間が大きくなれば、素早く手間なく実現できるクラウドのメリットを損ない兼ねない。むしろ、ベンダーロックインし1ベンダー環境にすれば、Dynamic Cloud環境も作りやすいかもという矛盾も。ユーザーサイドとしては、現時点のメリット、デメリットだけでなく、中長期的に選ぶ環境がどのように進化するかを見極める必要がありそうだ。

次のページ
BlueMixはDynamic Cloudを実現するための鍵となる開発者のためのPaaS

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
週刊DBオンライン 谷川耕一連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/5668 2014/03/04 10:48

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング