IT用語って、「アルファベット3文字もの」がやたら多い。いわくSQLだの、DWHだの、ERPだの……ああもう、そんなにいっぱい覚えきれないよ!! あと、SQLを「エス・キュー・エル」とちゃんと発話してくれればいいものを、中には「スウィークゥルル」とかややこしい読み方をする人もいたりして、あーもう……(本当にいるんだよ!)。でもって、今回のトピックも3文字もの、その名も「TPC」です、あーもう!! 日立がTPCに挑んだ、感動と涙の物語をお届けするんですけどね、ちなみにTCPじゃないですよ。あと、TPPとも関係ないからね。データベースエンジニアなら知ってるでしょ、TPC。そうそう、とってもプリティーなコンピュータ、略してTPC(*違います)
TPCベンチマークの「世界初」を目指す!
「TPC」って言葉、ある程度IT業界が長い人や、データベース関連お仕事に携わってる人なら、詳しいことはともかく、一度や二度は聞いたことあるのでは。TPCは“Transaction Processing Performance Council”の略で、日本語では「トランザクション処理性能評議会」とか呼ぶらしい。つまり、コンピュータシステムのトランザクション処理のパフォーマンスをベンチマークテストで測定して、その結果を審査・登録・公表しているところ。
よく目にする「TPCベンチマークで世界最高性能を記録!」とかいう謳い文句はこのことで、特にデータベース製品に関して言えば、このTPCベンチマークの結果がある意味「鑑定書」や「保証書」みたいな役割を果たしている。
ちなみに、TPCベンチマークテストは幾つかのカテゴリに分かれていて、特に有名なのが「TPC-C」と「TPC-E」、それに「TPC-H」あたりである。TPC-CとTPC-Eは主にオンライントランザクションの性能を評価するもので、TPC-Hは意思決定支援システム、いわゆるDWH(データウェアハウス)とかの性能を測定するベンチマークだ。
で、今回紹介するのは、日立が今売り出し中の期待の大型新人、大規模データベースプラットフォーム「Hitachi Advanced Data Binder プラットフォーム(以下HADB PF)*」でもって、TPC-Hへの登録にチャレンジした感動の物語だ(ちなみに、HADB PFについては過去の回で詳しく紹介しているので、そちらを参照すべし!)。しかも単に登録するだけではなく、「世界初」に挑んだというから、これは見逃せないじゃないですか。
*内閣府の最先端研究開発支援プログラム「超巨大データベース時代に向けた最高速データベースエンジンの開発と当該エンジンを核とする戦略的社会サービスの実証・評価」(中心研究者:喜連川 東大教授/国立情報学研究所所長)の成果を利用。
では早速、今回の登場人物を紹介しよう。

開発統括本部 ソフトウェア開発本部 DB設計部

開発統括本部 ソフトウェア本部 DB設計部

藤原さんは、今回HADBでTPC-Hへの登録に挑んだプロジェクトの取りまとめ(要はPMね)を務めた偉い人。でもって賀来さんはこのプロジェクトに、HADB PFの製品開発部門から参画した若手エンジニア。そして田中さんは、このプロジェクトの技術開発チームの一員として、研究所から馳せ参じた若手研究員だ。
登場人物が出揃ったところで、そもそもなんでHADB PFでTPCベンチマークにチャレンジしようと思ったのか、そして「世界初」というのは、一体どのあたりが世界初なのか、藤原さんに聞いてみた。
「HADB PFという製品は、そもそも2007年に始まった文部科学省主導のプロジェクトで、東京大学と超高速データベースエンジンの共同研究を始めたことに端を発していて、その後内閣府のプロジェクトに移管された後に、その研究成果を基にHADB PFとして製品化しました。製品化プロジェクトは2010年にスタートしたのですが、当初から世界トップクラスの性能を目指していました。ただ、自分たちだけで勝手に『世界最速だ!』と謳っているだけでは、説得力がありません」
なるほど。そこで客観的な根拠を示すために、TPCベンチマークへの登録を目指したと。
「そうです。それも、どうせなら世界のトップを目指そうということで、TPC-Hの中でも最も大規模なクラスである『TPC-H 100テラバイトクラス』への登録を目指しました。データベース規模が10テラバイト以下のクラスでは、既に多くの登録があるのですが、100テラバイトクラスは2003年に新設されて以来、まだ登録がなかったんです。そこで、HADB PFで世界初の100テラバイトクラス登録を目指したのです」
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吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)
早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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