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コンシューマー分野のキラー・ソリューションに注目せよ!企業はどのようなIoT戦略を立案すべきか?

■後編


 前編と中編では主にテクノロジー的な観点からIoTを考えてきた。後編の今回は、ビジネスや市場に近い観点からIoTのインパクト、そして、一般企業(エンタープライズ)が取るべき戦略を考えていこう。

IoTがもたらす情報通信産業全体へのインパクト

 まずは大局的視点からIoTが情報通信産業全体にもたらす影響について考えてみよう。IoTが、スマート ホーム、テレマティクス、スマートグリッド、ITS(高度道路交通システム)等の様々なブルーオーシャン市場を開花させる可能性が高い点に議論の余地はないだろう。

 典型的な動きのひとつがGoogleによるNest社の買収だ。Nest社は家庭用のスマートサーモスタット(室温調整器)を提供する企業である。室温調整器とは何とも地味な分野であり、情報通信産業で重要な位置を占めるとは想定し難いように思える。

 しかし、Googleは来たるべきIoTによるスマートホーム市場に賭けた。現時点でNestができることは、サーモスタットをWiFiやZigBee経由でコントロールできることだけだ。しかし、将来的にはスマートホームの中核的「モノ」となる可能性がある。

 インテリジェントな室温調整器によるソリューションは、ユーザーの特定の悩み(たとえば、電気代の高さ)を解消できるキラー・アプリケーションになり得る。そして、いったん機器の普及が進んでクリティカル・マスを越えれば、いわゆるキャズムを越えた状態になり、新たな関連ソリューションが次々と登場し、ホームオートメーション市場の新たなエコシステムが登場する可能性がある。

 そして、Googleはその新たなエコシステムの中核となることを狙っている。実際、Nestは自社製品を他のサービスと連携させるためのAPIと開発キットを6月23日に発表している。また、監視ビデオ機器のメーカーであるDropcam社を買収するなど、パズルのピースを着々と埋めている。

 同様に、Appleは、まだ具体的なスマートホーム製品を発表してはいないものの、スマートホームを操作するための端末としてのiOSデバイス、そして、ホームサーバの戦略を推進していくと見られている。スマートホーム向けプラットフォームであるHomeKitのWWDCにおける発表、そして、特許出願(米国特許8577392号)等の内容からもそれが伺い知れる。

 やや余談ではあるが、このように、市場黎明期から多大な先行投資を行なってプラットフォームでの影響力を獲得しようとする米国のメガベンダーと比較して、M2Mの世界でさまざまなスポット・ソリューションを提供してきた日本国内ITベンダーや家電メーカーは、エコシステム内のうまみのある位置に立つための十分な投資を行なっていないように思える。情報通信技術の歴史で過去に起きてきた典型的パターン(たとえば、スマートフォン市場のプラットフォーム)が繰り返されるかもしれない。

 いずれにせよ、IoTが「全体として」大きな市場機会であることに疑いの余地はない。IDCは、2020年にIoTの市場規模が8.9兆ドルに達し、2120億個の「モノ」がネットワークに接続されると予測している。マッキンゼーは、今後10年間の重要IT関連ビジネストレンドのひとつとして「あらゆるモノのネットワーク化」を挙げている。(出典:英文)

 情報通信技術市場全体におけるIoTの重要性は明らかとして、企業内のITプロフェッショナルにとっての重要な論点は、情報通信技術市場のサブセットであるエンタープライズIT(一般企業向けのIT)において、IoTがどのような位置を占めていくかだ。クラウド、モバイル、ソーシャル、ビッグデータという重要メガトレンドがエンタープライズITにおける不可欠な要素になるまでの時間は短かった。IoTも同様に急速にエンタープライズITの世界での重要性を増していくのだろうか?

次のページ
自社にとって重要な「モノ」とは?

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この記事の著者

栗原 潔(クリハラ キヨシ)

株式会社テックバイザージェイピー 代表、金沢工業大学虎ノ門大学院客員教授日本アイ・ビー・エム、ガートナージャパンを経て2005年6月より独立。東京大学工学部卒業、米MIT計算機科学科修士課程修了。弁理士、技術士(情報工学)。主な訳書にヘンリー・チェスブロウ『オープンビジネスモデル』、ドン・タプスコッ...

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