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紛争事例に学ぶ、ITユーザの心得

システム開発プロジェクトにおけるユーザの協力義務(前編)

第1回


 私は普段、東京地方裁判所というところで、IT開発に関わる紛争解決のお手伝いをさせていただいております。開発に失敗したユーザとベンダが「ひどいシステムだ。カネ返せ!」、「悪いのはウチじゃない!」と争っている様を目の当たりにしているわけですが、裁判所で、実際の紛争事例を見聞きしていると、その原因が、実はありふれたことばかりで、裁判にまではならなくとも、誰もがこうしたトラブルの渦中に身を置く危険があることに気付きます。

 さて、今回の連載では、こうした裁判所に来る羽目になった失敗プロジェクトから、特にITユーザの皆様に知見となるようなこと、参考としていただき、それらを反面教師としてご自身の開発に役立てて頂くことを意図しています。こうした記事をキッカケに「さて、自分のところはどうだろうか」と少し立ち止まって考えていただき、「ああ、そういえば…!」 となんらかの気付きを得ていただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

成功率が3割に満たないITプロジェクト

 早速ですが、皆様は社内で、以下のような声を聞くことはありませんか?

 「社内システムが、不具合ばかりで使い物にならない。」
 「当初は5000万円でできるといってシステムが、結局2億円かかった。」
 「作業が遅れていつ終わるのか見えない。」

 中には、聞いたことがあるどころか、ご自分が、こうした台詞を吐いていたという方もいらっしゃるかもしれませんね。でも、こうした言葉が社内で聞かれるのは、皆様の会社だけではないんです。隣のビルの会社でも、競合相手のあそこでも、きっとIT導入にあたっては、何人もの人が、似たような声を上げていることでしょう。

 それもそのはず。ITプロジェクトというものは、一説に成功率が三割に満たないと言われるほどに失敗が多く、ときには、ユーザ企業に億単位の損失をもたらすことも珍しくないという代物です。IT開発について文句や愚痴を言う人を探すのは、きっと大阪の町で阪神ファンを探すより簡単でしょう。

 しかし、考えてみればこれは随分と異常な話です。世にプロジェクトというものは数多く存在します。中東の砂漠で石油プラントを作り上げるのも、AKB48の総選挙もプロジェクトです。しかし、そうしたプロジェクトと言われるもののなかで、成功率が3割に満たないものなど他にあるでしょうか。ユーザが望んだシステムを、多少のブレはあっても納得できるスケジュールとコストで完成させる。こうしたことがイチローの打率よりも低い今のシステム開発の現状は、日本の産業界にとっても、ユーザ企業にとっても、そして何よりユーザとベンダの担当者の健康とキャリアにとっても決して望ましいものではありません。遅れるスケジュールに焦りながら、社内の各所から、どうなっているのかと質され、ベンダに文句を言っても一向に改善されない。そんな異常な状態は、少しでも早く改善されるべきでしょう。

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ユーザの協力義務に関する裁判例

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この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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