日本を代表するJavaの伝道師2人が仙台で講演
そんな仙台で「Java Meeting Sendai 2014」というイベントが、9月19日に東北デベロッパーズコミュニティ主催で行われた。東北デベロッパーズコミュニティは東北のICT、デバイス、インフラなどの開発、構築現場で頑張っている技術者、開発者を応援するためのコミュニティだ。主な活動はセミナーやワークショップ、勉強会、懇親会などのイベント開催による交流や技術交換、さらにはブログやメーリングリストなど新しい技術を利用した情報提供も行っている。
最新のJavaについて学ぶ場となったJava Meeting Sendai 2014には、東北地域のJavaに興味のあるエンジニアや当日会場となった東北電子計算機専門学校の学生らが数多く参加した。この日の目玉の講演は、日本オラクルのJavaエバンジェリスト 寺田佳央氏による、Java SE 8、EE 7についての詳細な解説だった。
寺田氏は1つ前のバージョンのJava SE 7、そして今回のSE 8とリリースする道のりが「けっこう厳しかった」と振り返る。これはある意味、Sun MicrosystemsからOracleへとJavaの開発元が変わったことも影響している。実装予定の機能の開発が遅れそれを実装してからリリースするのか、あるいは一部遅れている機能はあきれめ実装できるぶんだけの構成でリリースするのかといったことを、コミュニティに図るといったことも行った。
とはいえ今後は「決められた通りのスケジュールでバージョンアップしていくのでは」と寺田氏。なぜならOracleは実績あるエンタープライズ・ソフトウェアベンダーであり、ソフトウェア製品をリリースすることに対しては極めて厳しい会社だからだ。開発のロードマップを示したならば、それを守れるように最大限の努力をする。
なのでハードウェアベンダーのSun MicrosystemsがJavaを開発していた時代よりも、今後はきっちりと製品を出してくることになりそうだ。こういった話は、やはりSun Microsystemsが持っていたオープンソースのデータベースMySQLでも同様だと聞いている。オープンソースの製品をOracleが開発コントロールすることに懸念を示す人は多い。しかし、ソフトウェアベンダーのOracleだからこその品質管理や開発スケジュールの厳密さといったメリットもあるのだろう。
Java Meeting Sendai 2014のもう1つの目玉は、Javaチャンピオンである櫻庭祐一氏のセッションだ。グローバルなJavaコミュニティにおいて技術情報の発信などで大きく貢献した人物に贈られるのがJavaチャンピオン。この全世界で100名程しかいない名誉ある称号を、日本で唯一受けているのが櫻庭氏だ。彼は「Essential Stream Programming」と題し、Java SE 8の目玉であるLambda式とStream APIの利用方法についてソースコードを示して詳しく解説した。
「SE 8の目玉はLambdaです。これは、マルチコア時代に多スレッドを有効に活用するために、パラレル処理を容易に実現するためのものです」と櫻庭氏。SE 7のFork/Join Frameworkも同様にパラレル処理を行うためのものだったが、極めて使いにくいものだった。「それがSE 8のLambda式であれば1行核だけで済みます。簡単にパラレル化できます」と櫻庭氏は言う。櫻庭氏のセッションは、現場の開発者にとっては極めて技術的な内容の濃いセッションとなったようだ。
実践的なハンズオンセッションも
さて、イベント当日は、講演後に「Lambda式を使ったプログラミング」を行う、「IoTを実体験するためにロボットをJavaで制御するプログラミング」を行う2つのハンズオンセッションも用意されていた。ロボット制御のハンズオンセッションは、寺田氏が講師となり各種センサーや通信機能を装備したロボット「レゴ・マインドストーム」をJavaのプログラムでコントロールするものだった。
センサーを用い障害物を検知してぶつからないようにロボットを移動させる。この制御ためのプログラミングを、JDKとNetBeansを用いハンズオン形式で行った。レゴ・マインドストームの本体に直接プログラムするのではなく、NetBeansでサーバーからネットワークを通じロボットをコントロールする。組み込みのJavaとサーバーからのネットワーク経由での制御ということで、将来的なIoTの世界をイメージすることを目的としたというわけだ。
今回は、Javaの開発者に向けたかなり実践的なセミナーとハンズオンとなった。ところで東北地域は、震災後の3年間はIT関連の地元の仕事はかなり減ってしまった状況があった。これは東北電力などの東北地域で大きなIT需要を持つ企業も、まずは設備の復旧などに投資を集中したからだ。
ところが、今後は改正電気事業法が成立したことなどもあり、電力会社の分離にともなう新たなシステム開発も発生する。さらには、マイナンバー制度に関連した公共系のシステムの開発もあるだろう。さらに復興も進めば新たなIT需要も期待できるかもしれない。
一方で、3年間の空白のために多くの東北地域のIT開発者が、仕方がなく首都圏で仕事をするようになった。いったん首都圏で仕事を始めてしまうと、簡単には地元に戻ってこられないだろう。今後発生する東北地域での大きな開発者需要にどう対処すればいいのか。早急な人材の育成も必要だ。それでもおそらく開発者は足りなくなるだろう。その足りなさを最新Javaの便利で効率的な開発環境を駆使して補う、そんな発想も必要になるかもしれない。