企業側の立場から見ても、経費精算や出張手配の業務には改善の余地が多く残されている。例えば出張申請ひとつをとってみても、果たして本当に社内の出張規定に沿った申請が行われているのか? そもそも、出張規定そのものがコストや利便性のバランスがとれているのか? これらの点を厳しくチェックし、コスト削減やガバナンス強化を図ろうと思っても、現時点ではどうしても人手によるチェックに頼らざるを得ず、限界が出てくる。実態はというと、多くの企業が「どんぶり勘定」で、かなり無駄な出費を強いられているのではないだろうか。
ここに鋭くメスを入れ、経費の徹底的な適正化による財務改善と業務効率アップを図るソリューションが、数年前から注目を集めている。海外企業では既に数年前から、日本国内においても昨年あたりから「経費精算業務の効率化・適正化」を謳ったIT製品が次々と登場している。中でも常に市場をリードしてきたのが、米Concur(コンカー)が提供するSaaSサービスだ。読者の中には、昨年9月に発表された、独SAPによる同社の巨額買収のニュースのことを覚えている方も多いかもしれない。それだけ、経費精算関連のソリューションは今、高い注目を集めているのだ。
ちなみに、日本国内においてコンカーは、2011年に日本法人を設立した後、経費精算向けSaaSサービス「Concur Expense」の日本語版を国内企業向けに提供してきた。このサービスの詳細については、別途「経費精算のリーサルウェポン! コンカーがやってきた!」で紹介しているので、そちらをぜひ参照していただきたいが、実は2014年10月には、もう1つの目玉サービスである出張予約サービス「Concur Travel」を国内向けにリリースした。本稿では、この新サービスの概要について簡単に紹介してみたい。
出張手配の際に社内の出張規定を自動的に適用
「Concur Travelの機能を一言で言い表すなら、『セルフ・ブッキング』。つまり、飛行機のチケットやホテル、レンタカーなどの予約を行うことができるパブリッククラウドサービスだ。企業の従業員が出張のたびに行う予約の作業を大幅に効率化すると同時に、企業の側には出張予約の適正化によるガバナンス強化やコスト削減といったメリットをもたらす」
こう説明するのは、コンカーの日本法人でConcur Travel関連ビジネスを統括する阪尾素行氏。一般的な業務システムでは、現場ユーザーの利便性を重視すればガバナンスが低下し、逆にガバナンスを強化すればユーザーにとっての使い勝手が低下する。しかしConcur Travelは、利便性とガバナンスの双方を同時に高めることができるソリューションなのだという。
Concur Travelの具体的な利用イメージは、こうだ。海外出張の予定が決まったら、ユーザーはコンカーのパブリッククラウドサービスにログインして、自身のポータル画面をブラウザ上で開く。ここから、飛行機やホテル、レンタカーなどの予約を一手に行うことができる。あらかじめ定められた作業フローに従って、行き先や日程などを入力していけば、該当するフライト情報が表示されるので、そこから1つを選んで指定する。続けてホテルやレンタカーの予約も、同じ画面から指示に従って簡単に行うことができる。
本来、出張手配を自身で行う場合は、飛行機やホテル、レンタカーの予約をそれぞれの業者と個別に行わなければならない。しかしConcur Travelではこれらをすべてワンストップで、しかも直感的なインタフェースを通じて容易に実行できる。
なお、こうした仕組みを提供するために、Concur Travelは裏で各航空会社やホテル、GDS(GlobalDistribution System)など、外部のさまざまなシステムと連携して予約情報を収集している。そのため、「旅行会社に問い合わせるより、むしろConcur Travelの方が多様な選択肢をユーザーに提供できることもある」(阪尾氏)という。
しかし、Concur Travelの真骨頂とも言える機能は、これとはまた別のところにある。ユーザーが予約作業を行う際に、社内の出張規定を自動的に適用できるのだ。例えば、部長職以上には自動的にビジネスクラスのフライト情報を提示するが、それ以外の従業員に対してはエコノミーのみを提示する。あるいは、法人契約を結んでいる航空会社のフライトを優先的に表示し、それ以外のフライトを選択する場合にはその理由を合わせて入力させるようにするといったように、会社で定めた出張規定が必ず順守されるよう、独自に予約フローを設計できる。これによって、どうしても属人化しがちな規定チェック作業をシステム化し、その順守を徹底させることができるのだ。
「従業員が実際にどのチケットを予約したか、またそのチケットが最低価格のものとどの程度のコスト差があったかなど、詳細な履歴が保存されるので、後ほどその内容を分析して経費適正化のための施策を練ることができる。こうした取り組みは、欧米の企業ではかなり以前から行われていたが、Concur Travelのような便利なシステムの登場で、日本でも今後は徐々に根付いてくるものと思われる」(阪尾氏)