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データ活用にかける人生!―ウイングアーク1st 島澤甲さん

3000年かかる処理を1月で終わらせる

 MotionBoardでもう1つ力を入れているのが、地図の活用だ。「Ver.5.0から地図機能を搭載しています。Ver.5.5で搭載するリアルタイムGEOコーディングは他社にはないものです」と島澤さん。MotionBoardは、地図機能の実装は遅いほうだ。理由は、地図情報を取り込むにはお金がかかるから。「地図機能の多くはオプションなどで、場合によってはその値段が本体より高いこともあります」と島澤さん。さらに地図情報は印刷などさまざまな利用制限があるものも多い。なので要望があるのは知っていたが、なかなか実装できていなかったのだ。

 しかし他の会社から地図情報を提供してもらい、それを取り込んだ地図機能のプロトタイプは構築してあった。ある日それを営業担当に見せると、これは是非実装して欲しいという話に。自由に使える地図情報を取り込むのは大変だと思ったが、なければ作れば良いかと島澤さんは考えた。そこで、その営業担当に「焼き肉をおごってくれたら地図の機能を付けるよ」と軽く約束してしまうのだった。

 調べてみると、オープンソースの地図データを使って、独自にレンダリングすれば地図が作れることは分かった。すぐにプログラミングしてみたが、処理にはかなり時間がかかった。「最初に作ったプログラムは、1画像をレンダリングするのに5分くらいかかりました」とのこと。使えるレベルの地図データを揃えるには、20億枚の画像が必要。このプログラムで地図データを作ると終了予定が何と3000年後くらいという計算結果に。この時点で地図機能を含む次期バージョン出荷予定日の半年前だった。

 「3000年を1ヶ月以内に縮められるのか。とりあえず1台で3000年なら10台で300年になる。まずはマシンを並べ、さらにアルゴリズムの見直しをしました。結果的には、なんとか1ヶ月以内で20億枚の画像レンダリングができる見通しを立てました」(島澤さん)

キャプチャ入る
地図データと分析結果が連動。より分析を深められる

 この方法でユーザーが自由に使える地図情報を製品に取り込むのは、ある意味画期的だった。成功したのは地図の専門家がチームにいなかったからでは、とのこと。「お客様のやりたいことを実現するにはどうしたらいいかを考えた結果です。既存の地図情報を扱う常識にとらわれなかったのが功を奏したのでしょう」と島澤さんは言う。

 Ver.5.0で標準機能として自由に使える地図データを搭載し、さらにその地図上に描画する情報の数にほとんど制限がない機能が実現できた。現在の仕様では、地図上に100万ポイントがプロット可能だ。これなら例えば全国10万店あると言われるコンビニエンスストアも、地図を地域に分けることなくすべてプロットできる。

 「分割したり絞り込んだりしすぎると、条件を切り替える時に結局はユーザーの思考を分断してしまうのです」(島澤さん)

 Ver.5.5で実装するリアルタイムGEOコーディングも他にはない機能だ。名刺情報などには住所情報がある。しかしそれは緯度経度情報(GEOコード)ではないので、そのままでは地図上にプロットできない。住所から緯度経度情報に変換する必要があるがこれには時間がかかる。なので通常はバッチ処理や人手で変換を行い、結果の緯度経度データを格納する中間データベースを構築する。

 「WebのAPIなどで変換してくれるものもありますが、それだと1秒間に30~40件くらい。これだと数万件のデータを変換するのに数分から数十分はかかります」(島澤さん)

 これではリアルタイム処理はできない。そこでMotionBoardでは変換をほぼリアルタイムに実現できる独自エンジンを開発した。結果的に1秒間に32万件の変換処理が可能となり、数万件の変換も1秒以内に終了する。データが増えれば住所は増える、さらに変更も発生する。その場合にもあらかじめ緯度経度の中間データベースを作ることなく、リアルタイムに変換し情報をリアルタイムに地図にプロットができる。

キャプチャ入る
交換した名刺の情報を地図上にプロット

データを活用して世の中をびっくりさせるようなもの作りをしたい

 島澤さんはデータの可視化が趣味だと言う。実際自宅には、複数のモニターや機器が並べられた「趣味の部屋」を作っている。家の中には各種センサーも設置し、この部屋で家の中の電気使用量や温度や湿度の変化など、さまざまな状況が手に取るように分かるようにした。さらに、MotionBoardの遠隔地の情報を可視化する機能を使って、外出先からそれらの様子がリアルタイムに可視化できるようにもなっている。

キャプチャ画像入る
島澤さんの自宅に作られた「趣味の部屋」

 「私はデータ活用に人生をかけてます。情報を知っているか、さらにはその見方を知っているかで人生が分かれたりします。データを活用することと、その利便性を是非皆さんにも知って欲しい」

 ウイングアーク1stは「サプライズ1st(ファースト)」というスローガンを掲げている。「世の中をびっくりさせるもの作りたい」―そんな島澤さんの熱意が「サプライズ1st」の支えとなっているのだろう。

■■■ Profile ■■■

島澤 甲  SHIMAZAWA,Ko 

 

2010年、ウイングアーク1stの前身であるウイングアークテクノロジーズの研究開発子会社、フォー・クルーに入社。

一貫して「MotionBoard」の開発に携わり、その高い表現力や高速処理を実現させた立役者となる。2014年より現職、BIソリューション製品全般の開発を統括している。

 

島澤さんが手がけた製品のテクノロジーがわかる!

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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