もはや「待ったなし」、世界・国・自治体で進むCO2削減に向けた目標設定
CO2削減の取り組みの本格化の背景としては、さまざまな世界的な動きが挙げられる。まず、2008年12月に行われるCOP15では、京都議定書で確定した2013年以降のCO2削減目標が、具体的な数値として定められる。米国では、CO2排出権「Cap&Trade」が両大統領候補の公約となっており、日本でもこの秋から排出権取引試行を表明している。1tあたり100ドル換算と試算されているが、それを鑑みても大きなインパクトを与えることは間違いないだろう。
そうしたCO2削減の取り組みが具体的になりつつある一方で、日本で消費される電力のうち、IT機器にかかる割合は、2006年の6%から、2050年には50%へと増加すると予測されている。環境負荷問題は長期的視点で取り組むべきといわれているとはいえ、もはや可及的速やかに解決すべき問題であることは明らかだ。
さらに、東京都条例でも排出権取引はもちろん、対象となる範囲や罰則規定などが明確化され、さらに本施行は2010年とあまりに準備期間が短い。これらの観点を踏まえ、IBMではあらゆる企業に対し、「今すぐに始められるエネルギー削減対策」として、さまざまな提案を行っているという。
Project Big Green~年間10億ドルの投資により環境負荷低減化を促進
まず、その提案について言及する前に、IBMの温暖化対策の取り組みについて紹介がなされた。2007年5月に発表した「Project Big Green」では、主に2つの方向性について示している。1つは、年間10億ドルの投資を行い、自社データセンターや自社製品の環境負荷低減化を進めること。そして、もう1つは、1000名の社員を「Green Team」として編成し、こうした施策に取り組んでいくことである。その1つの例としては、第三者検査機関であるNEUWINGとともに世界34カ国に展開している唯一の「エネルギー効率・証明書プログラム」があげられる。後述する「ボルダー・データセンター」への投資もその一環である。
そうした取り組みによって、IBM自身も年4%の省エネ率を達成し、15年間で1990年比40%を削減しており、日本アイ・ビー・エムにいたっては、5年間で同年比58%を削減している。
さらに2005年を基準として、2012年までに絶対量でさらに7%削減、年間使用エネルギー(電気と燃料)については毎年3.5%相当の削減を目標として掲げている。
こうした取り組みや実績は広く認められ、「コンピュータワールド」他、さまざまな媒体で「最もGreenなITベンダー」として認知され、高く評価されているという。
製品と自社の経験に基づくナレッジを組み合わせ、包括的なエネルギー削減を実現
こうした実績の裏側には、製品選びからオフィス環境の整備等、多岐に渡る施策を徹底させた地道な努力がある。そのノウハウやナレッジを蓄積し、ソリューションとして他社に提供しようというわけだ。
その手法は次の5つである。1つはCO2削減について企業のコンサルティングを行い、具体的な計画に落とし込んでいく「カーボン・マネジメント」。2つめは交通量を最適化してCO2の削減を図る「高度道路交通システム」で、日本では京都大学とともに研究を進めているという。そして、3つ目の「インテリジェント・ユーティリティー・ネットワーク」では、クリーンで信頼性の高い配電設備を研究しており、水資源関連については「アドバンスト・ウォーター・マネジメント」が用意されている。そして、5つめとしてデータセンターを対象とした「エネルギー効率化テクノロジー&サービス」。これは、再利用可能な建材の使用や、気候に応じて自動的にセーブモードに入るなど、さまざまな最先端技術と工夫が活かされた「最もグリーンなデータセンター」と呼ばれるボルダー・データセンターの経験を最大限活かしたソリューリョンとなっている。
通常、データセンターにおけるグリーンITというと、製品の導入を考えがちだが、エネルギー消費量は全体の30%に過ぎない。ファシリティーや空調、その他さまざまなものを含めてデータセンターを包括的に捉え、考える必要がある。
IBMの強みは、製品について熟知しながらも、自社のデータセンターという半ばラボ的な存在を保有しており、そこで様々な検証を行い、体系化されたナレッジとして提供できるところにあるという。
なお「Project Big Green」は2008年5月に1年間の総括がなされており、グリーンIT関連ソリューションや製品を提供した企業は全世界で2000件以上にのぼり、平均して40%以上のエネルギー削減を実現しているという。今後も、自社の取り組みを先駆的に進めつつ、その経験とナレッジを反映させたソリューションを全世界に向けて提供していく予定だ。
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