モバイルで変わるワークスタイル、IoTで変わる社会
基調講演に登壇したのは日本マイクロソフト株式会社のエバンジェリストであり業務執行役員 西脇資哲氏。最新のモバイル活用からIoT事例までデモも交えながら短時間で一挙に紹介した。
西脇氏は「モバイルを活用すると働き方やワークスタイルが変わります」と話す。ただし中には所有するデバイスが多すぎてかえって非効率に陥ることもある。「目的を間違えてはいけません」と西脇氏は言う。目的は数ある端末にソフトウェアをインストールしたりセットアップすることではなく、業務の生産性を向上させることにある。
考え方を少し変えるだけでも変わってくる。例えばWebカンファレンスとは何をするものか。「画面共有するもの」と機能だけでとらえるのではなく、「労働力をインターネットを通じて提供するもの」ととらえてはどうか。西脇氏はWebカンファレンスで同僚と資料を共同作成する様子を実演しながら、時間を効率的に使うことや生産性を高める意義を強調した。
またIoTに関連して、インテルのIoT向け開発ボード「Galileo」や小型コンピュータ部品「Raspberry Pi」の実物を披露。こうしたものでいまIoTが進化している。さらにIoTシステム事例としてエレベーターの稼働状況をモニタリングするシステムをデモした。エレベーターがどのフロアに止まっているかなどがリアルタイムでグラフィカルに表示されるデモでは、会場からは驚きの声が上がった。
センサーからのデータを分析すると故障時期も予測できる。故障してから修理するより、故障する前に部品交換などの対応をすませたほうがコストは低く抑えられる。定期メンテナンスよりも前に故障しそうな設備はどれか、機械学習で検知できるようになっている。設備の監視や保守はこうしたシステムへと変わっていく。
モバイルの活用からワークスタイルが変わる。IoTから社会や生活環境が変わる。いままさに変わりつつある世界の未来図を垣間見ることができた。
セキュアなIoTソリューションの未来像
続いてIoTの実情とセキュリティに関してNTTコミュニケーションズの境野氏が解説した。総務省の報告書によると、日本は高速回線契約数に占めるFTTHの割合が高く、単位速度(1Mbps)あたりの通信量が安いなど「日本のICT基盤は世界最高レベル」と話す。固定回線だけではなくモバイルでも同様である。ウェアラブル端末も続々と登場している。こうした背景のなか「課題はセキュリティ」と境野氏は指摘する。
IoTで参考になるのが、国を挙げて「Industry 4.0」を掲げているドイツ。イノベーションリーダーと輸出大国の地位強化を目指しており、複数の生産拠点をインターネットを介して「1つの工場」と見立て、ロボットや人工知能で生産を自動的に最適化することを目指している。概念的にはIoTに近い。Industry 4.0にしてもIoTにしても、重要になるのが制御システムであり制御ネットワークとなる。
近年では制御システムに対するサイバー攻撃が増加傾向にあり、北米ではサイバー攻撃の大半が製造設備や電力の制御システムだという調査報告もある(ICS-CERT MONITORより)。制御システムは産業や生活を支えるインフラとなるため、万が一攻撃を受けると重大な影響を及ぼしかねない。「インターネットの世界とは異なるレベルの高度なセキュリティが求められます」と境野氏は言う。
IoTとセキュリティを考えるとき、要件となるのがプライベートクラウドの利用、管理の効率化、端末機能のシンプル化、ネットワークやクラウド運用の自動化、高度なセキュリティ監視の自動化など。境野氏はNTTコミュニケーションズが提供するセキュアなIP-VPNサービス「Arcstar Universal One」を挙げ、サービスの概要、特にセキュリティ対策に関わる機能や強みを解説した。
最後に境野氏は「新技術を積極的に活用し、異業種企業とも協力して取り組みたい」と今後の意向を話した。以降は協力体制の実例として、NTTコミュニケーションズのパートナー企業からIoTやビッグデータに関するソリューションが次々と紹介された。
IoT/M2M、ビッグデータ関連ソリューション――NTT Comパートナー各社が解説
データ分析の民主化を早くも実現「データダイバー」
データビークルは2015年2月に設立したデータサイエンス専門企業。折しも、同じころにガートナーは「2017年までに企業のユーザーやアナリストがデータ分析するためにセルフサービスツールを利用するようになる」と予測している。このセルフサービスツールを早くも具現化したのがデータビークルのBIツール「データダイバー」だ。同社取締役で『統計学が最強の学問である』の著者でありデータサイエンティストの西内啓氏のノウハウが凝縮したものとなっており、業務上の目的を設定してからデータを分析し、可視化するようにできている。
「M-Pin」によるパスワードレス認証でセキュアなシステム環境を
NTTソフトウェアはNTTグループの中でも先端技術開発事業を受け持ち、NTTの研究所で得られた成果を事業化できるところが強みとも言える。いま注目される「IoT」をレイヤで分類すると、クライアントレイヤ、アプリケーションレイヤ、インテグレーションレイヤ、デバイスレイヤなり、NTTソフトウェアはNTTコミュニケーションズのクラウド上にシステム構築して提供している。中でもセキュリティの観点から注目なのは、IoTを想定した次世代の分散型暗号技術と鍵管理プラットフォームとなる「M-Pin」だ。M-Pinを応用すれば、機器固有の番号を用いて安全に鍵を生成・配布できるので、機器の認証とデータの暗号化を容易に実現する。
IoTプロジェクトのフレームワーク「enebular」
IoTプロジェクトとなるとスケジュールは短く、コストは低く抑えられ、さらに不確実性が高い状態で進めていかなくてはならない。ウフルはクラウド活用により、初期投資を抑え、スピーディーな環境構築を行い、かつ一気通貫した対応が強みとなっている。特にIoTソリューションで特徴的なのが「enebular」というプラットフォームだ。Salesforce、heroku、Google、Amazon Web Serviceなど主要なクラウドサービス間のAPIを使った連携をグラフィカルに可視化し、一元管理できる。現在「enebular.com」にてベータ版公開中。風力発電機のストリームデータのリアルタイム解析などで実績がある。
IoTやM2Mの課題を解決するSensor Gateway Platform
ものづくりと技術にこだわり、品質を重視しているFITは独創的な技術でIoTやM2Mに取り組んでいる。FITではセンサ機器からサーバまでのインフラ環境構築はNTTコミュニケーションズのArcstar Universal Oneサービスを活用し、センサ機器への機能追加はFITが開発したSensor Gateway Platformを提供している。これは近接通信により各種センサ機器と接続し、スモールスタートや低コストを実現している。過去には車両センサ機器による車両運用管理システムで車両の監視や制御を実現したり、電力収集センサ機器で無理のない高齢者の見守りシステムなどを実現してきた。
インフラ設備のクラウド型遠隔監視システムをセキュアな回線で実現
いま上下水道などの処理施設は供用開始から長期間が過ぎ、更新時期を向かえている。新規整備、維持管理、改築を一体的にとらえ、事業の平準化とライフサイクルコストの最小化や長寿命化を実現することに目が向けられている。日本ソフト開発株式会社は、これら施設の監視ソリューションを提供している。まずセキュアで信頼の高いNTTコミュニケーションズのArcstar Universal OneモバイルのVPN回線と堅牢なデータセンターを東西に構え、各施設ではコルソスなど実績のある監視端末を用いたクラウド型遠隔監視サービスで提供をしている。Webブラウザにてタブレットやスマートフォンを用いてどこからでも監視業務が行えるなど、今後ますますシームレスなクラウド化が進むととらえており、サービス向上に余念はない。
MMLink機器とMMCloud併用でIoT/M2Mをワンストップで提供
安川情報システムはIoT/M2Mに長らく携わってきている。ハードウェア機器はシリアルモデムから、アプリケーションはパーキングシステムのカスタム開発から始まり、近年ではそれらが融合した形でデータ収集からビジネス活用までワンストップで提供できるような態勢となっている。通信機器のMMLinkシリーズは3GやLTEにも対応し、海外電波認証実績も豊富。クラウドサービスのMMCloudと組み合わせることによりFieldbus対応機器をカスタマイズせずセキュアにクラウドに接続可能となる。機器の制御ソフトから通信機器、回線、クラウド環境のアプリケーションまでワンストップで提供できるのが強み。