事業競争力の強化のためのコミュニケーション基盤とは?
ワークスタイル変革は法制度の変化や新技術の台頭など、外的要因により時代ごとに変遷してきた。古くは1987年の労働基準法改正で個人裁量が拡大し「フレックスタイム」が導入された。以来、グループウェアによるコミュニケーション改善、ダイバーシティによる多様化、モバイルデバイスによる時間や場所からの解放、社内SNSによる集合知の集成など。さらに対象は個人から事業へと拡大している。
大事なのは目的設定だ。ワークスタイル変革を経営課題とし、事業競争力の強化を目的に掲げる企業では制度や新技術を組み合わせて成果を出そうとしている。藤田氏は「素早く変化を成し遂げることが大きな効用を生んでいます」と話す。グローバルにビジネスを展開しようとするなら特にワークスタイル変革は重要になる。
変化の典型例で言えばメールがある。藤田氏はこう話す。「私が入社したころはメールを書いたら上司に怒られました。『メールですますな。なぜ電話しない。なぜ会いに行かない』と。年々メールの普及率は高まりましたが、今の20代ではメールの使用頻度は逆に低下しています。なぜだか分かりますか?」
答えはLINEだ。今の学生や20代はLINEがコミュニケーションツールとなっていて、メールを使わない。タイトルも冒頭のあいさつも習慣にない。実に合理的ではあるが、そうした年代がこれから社会に出てくる。昔の部下はメールを使うことで怒られたが、今ではメールの作法がなってないと怒られてしまう時代だ。それだけではない。かつてメールは知識の蓄積場所でもあった。しかしメールでは共有できず漏えいの温床となるなど問題も抱えている。
メールの登場から20年を過ぎ、今や終焉に向かうなか、今後企業はどうナレッジをためていくのか。ワークスタイルやツールの変化に伴い、企業内の情報受発信も変化していかなくてはならない。「(時代の)後追いでいいでしょうか?」と藤田氏は問題提起する。
変化する環境への対応はツールに限らない。多様な働き方を受け入れることも必要だ。そこにテクノロジーを活用する。そして先述したように目的は事業競争力の向上にある。それがワークスタイル変革であり、経営課題解決の視点なら「総合力を生み、事業競争力の向上をはかる施策」であり、企業情報視点なら「事業競争力の源泉になる次世代テクノロジーに備える施策」となる。
企業内でワークスタイル変革に取り組むならこうした目的意識や視点を持つことが重要だ。実際には複数の施策を組み合わせて取り組むことになる。成否の鍵となるのが対象となる課題解決のための技術要素をうまく選定することと、ロードマップを適切に制御しつづけることにある。
ワークスタイル変革では時間を必要とすることもある。小さな成功を積み重ねていくことも大事だ。多くの部門を巻き込み、新しい人材やアイデアを受けいれることも大事。取捨選択もあるだろう。何よりも目的や目標を見失うことなく推進し続けることが大事である。
NTT Comとパートナー各社が語るワークスタイル変革の実践手法
ワークスタイル変革で行こう――株式会社ジェクシード
ジェクシードは顧客の課題解決に着目し、ビジネス成功のためのコンサルティングサービスを提供する。野澤氏は28年以上のICT経験があり「ITで、人は幸せになれる」と話す。近年企業は労働力の確保と生産性の向上という課題を抱えている。ワークスタイル変革成功へのアプローチには導入目的の明確化、段階的導入、運用シーンを想定した対策などがある。システム導入をゴールとしてしまうのではなく、本来の目的達成にフォーカスしてシステムと制度と組織でうまくバランスを取ることが大事だ。加えて経営層が積極的に介入することも成功の鍵となる。
クラウド時代のタブレットPOS――株式会社テクニカル・ユニオン
テクニカル・ユニオンは独立系ソフトウェアベンダーで38年の実績がある。ここでは、身近なタブレットやスマートフォンを活用したPOSと勤怠管理システムを紹介した。タブレットPOSアプリはiPadの主な機種に対応しており、スキャナ、ジャーナルプリンタ、クレジット端末、キャッシュドロアと組み合わせたり、一体型もある。これでホテルの売店や屋外店舗でも手軽に開業できるのがメリットだ。海外からの引き合いもあるという。商品登録やレジのボタンレイアウトなどはクラウド側で管理できるのも特徴だ。勤怠管理は会社にビーコンを設置し、社員のスマートフォンで自動的に打刻できる。手動も可能。
テレプレゼンスはテレビ会議とはちがうんです――株式会社IIJグローバルソリューションズ
IIJグローバルソリューションズはIIJの100%子会社、IIJによるAT&Tジャパンの一部事業の買収により発足した。基盤からUXまで幅広く提供している。ワークスタイル変革の事例として、テレプレゼンスについて紹介した。ビジネスをグローバル展開したある企業では、数ヶ月に一度の各国役員会議をテレビ会議に切り替えた。成功の鍵となるのは対面と変わらないコミュニケーション品質で、複数拠点、複数人数の意思疎通が図れる仕組みや、運用サポートだ。必要なときに気軽にコミュニケーションをとれるようになると有効な仕組みとなる。
ワークスタイル変革を支えるソリューション――テクバン株式会社
テクバンの事業はシステムインテグレーションやネットワークソリューション、なかでもインフラ事業ではマルチベンダー体制で実績を積んでいるのが強みだ。近年テクバンは得意分野となるUC基盤とWLAN基盤を活かしてワークスタイル変革支援を行っている。今回紹介したのは手軽かつセキュアが特徴の企業向け無線LANサービス「Techvan Wireless Cloud」、ユニファイドコミュニケーションサービス「Techvan UC Cloud」だ。これらのサービスを導入することでペーパーレス、在宅勤務、テレワークを実現し、つながるワークスタイルやライフ・ワークバランスを実現している。
スモールスタートから始めるワークスタイル改革――トロシステムズ株式会社
トロシステムズのネットワークインテグレーション事業は今期で12年目。どこでもオフィスとなる働き方改革は吉田氏自身のライフワークの歴史でもある。ワークスタイル変革で大事なのは「仕組みづくり」。改善を繰り返すことも必要だ。同社では「Qumo for Collabo」をクラウドグループウェア、クラウドPBX、クラウドビデオで提供しており、多様な「はじめ方」を用意している。また同社は日本テレワーク協会のテレワーク推進賞を4年連続で受賞するなど、自ら挑戦と実績を出し続けてきている。在宅勤務を社員が自分で判断する、意思決定の迅速化など導入効果をアピールした。
NTT Comが提案するコミュニケーション変革を実現するUC導入の進め方
――NTTコミュニケーションズ株式会社
今や個人のコミュニケーション環境、企業のビジネスやワークスタイルは変化してきている。企業はコミュニケーション変革を求められつつも、疑問や課題が多くまだ発展途上である。今回はUC(ユニファイド・コミュニケーション)を成功に導くためのポイントを4つ紹介した(なお本講演における対象サービスはArcstar UCaaS Ciscoタイプ)。
ポイント1:UC導入の目的・ゴール・移行ステップを明確化
まずは検討から導入までどのように進めていけばいいか。できることならリスクも最小化したい。アプローチを考える上で重要なのは目的、ゴール、移行ステップを明確化しておくことだ。例えば目的をワークスタイル変革による生産性向上とし、移行ステップを段階ごとに整理し、数値目標も含めたゴールを掲げる。ステークホルダーとの意思統一も重要だ。小規模でスタートして順次更改することでビジネスリスクを極小化することができる。
ポイント2:ステークホルダーの立場に応じた効果的なUCの訴求、双方のGAP極小化
ステークホルダーとの意思統一は重要ではあるものの、どのように巻き込めばいいかも悩みの種となる。鍵となるのはそれぞれの立場に効果的なUCを訴求することと、立場の違いを埋めていくことだ。UCの効果を定量的、定性的に「見える化」して訴求したり、ユーザー部門における状況や変化をタイムリーに経営層へレポートすることで円滑に導入を進めていくことができる。
ポイント3:クラウドの利点を活かし、拠点毎に順次インフラを統合/マネジメント
実際に導入をしようとなると、技術的な困難に直面する。特に拠点毎に異なるコミュニケーションインフラをどのように運用し、統合していけばいいかは大きな課題だ。そこはクラウドの利点を大いに活かすべきである。拠点毎の事情に合わせてクラウド化をすれば投資の無駄を防ぐことができる。また運用ポリシーに合わせたマネジメント体制を確立し、徐々に範囲を拡大していくといい。無理に一気に進めるのではなく、全体のコンセプトを定めた上で徐々に展開していくのがポイントだ。
ポイント4:UC機能の理解/使い方のコツ習得、共有化
計画段階では具体的な利用シーンを想定しておく必要があるものの、具体的な業務活用の姿は導入前ではなかなか見通せないのも実情ではないだろうか。そこで藤田氏はNTT ComにおけるUC利用の一例を開示した。例えば相手や状況に応じたレベルを選択するというコミュニケーション方法がある。UCでは在籍確認、チャット、電話、Web会議など様々な方法があるが、慣れてくるとお互いの状況に応じて選択したりエスカレーションしたりできるようになる。これにより意思決定のスピードを向上させることができる。また会議中の電話着信にはチャットで一時対応したり、誰かと電話をしながら同時に違う人にチャットでアドバイスをもらうなど「ながらチャット」というワザもあるという。
NTT Comは自身も最新技術動向を追いながらUCを試し、ノウハウを多くためている。藤田氏は「パブリッククラウドの利点を最大限活かし、かつ各パートナーさまと連携し、UCサービスをご提供してまいります」と述べた。