利用が増えているOSSデータベース「PostgreSQL」
国内のPostgreSQLに関わるベンダーやユーザー企業が集い、さまざまな企業システムでPostgreSQLの利用を広めようと「PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)」が発足したのは2012年4月。この時期から、開発や研究、実験的な利用だけでなく、企業の業務システムでPostgreSQLを利用する動きが活発になった。
しかし、現時点でPostgreSQLを率先して利用しているのは、PostgreSQLをビジネスとして扱っていて、かつ自社内のシステムに適用している企業か、OSSに先進的に取り組んでいる企業が中心となっている。PostgreSQLの利用は増加しているものの、まだまだ商用データベースのように、広く企業が採用している状況に至っていないのが実情だ。
一方で、PostgreSQLは商用のデータベースのエンジンに使われていたり、アプリケーションの一部に組み込まれていたりする例も多い。ビッグデータやデータウェアハウス用途のデータベース「Greenplum」や、Amazon Web Servicesのデータベースサービス「Redshift」なども同様だ。つまり、知らないうちにPostgreSQLを利用しているケースも多いのだ。
企業がPostgreSQLに関心を寄せる理由
企業がPostgreSQLに関心を寄せる理由はいくつかある。その1つが、Oracle Databaseのライセンス体系変更だろう。Oracle Database Standard EditionおよびStandard Edition Oneのライセンスの新規購入、更新が今後はできなくなり、Standard Edition 2への移行となった。
これによりStandard Editionからは一部「デ・グレード」となり機能に制約が出てくる。Standard Edition Oneからはコスト増になるため、データベースの移行を検討し始めているユーザーも増えてきている。また、中小企業でも利用しやすかったStandard Edition Oneがなくなったことで、安価にOracle Databaseを利用したかったユーザーの選択肢が狭まったことは間違いないだろう。
Oracleからの移行候補の1つは、他の商用データベースだろう。もう1つの候補がPostgreSQL、MySQL等のOSSデータベースだ。世界的な利用数からすれば、PostgreSQLよりもMySQLのほうが多い。しかし、フルスペックのOracle Databaseからの移行先としてはMySQLよりはPostgreSQLのほうが向いている。MySQLはオープンソースとはいえOracleが開発、管理するデータベースであり、商用からの脱出を考えるユーザーがベンダーコントロール下にあるMySQLを嫌う傾向もあるようだ。また、Webアプリケーションで数多く利用されているデータ表現のJSON型に対応するなど、MySQLにはない、PostgreSQLならではの特徴や機能もさまざま存在する。
企業がPostgreSQLに関心を寄せる2つ目の理由は、PostgreSQLのデータベースとしての成熟度が上がってきたことだ。PostgreSQLでは、データを更新し続けるとデータベースファイル・サイズがどんどん大きくなる。この問題を解消するにはVACUUM処理が必要になるが、PostgreSQL 8以前のバージョンではこれに問題があり、24時間、365日稼働し続けるようなシステムでの運用が難しかった。また、データベースの性能、可用性機能なども十分ではなく、特にミッションクリティカルなシステムには適さなかった過去がある。
ところがバージョン9となるころからこれらの問題が解決し、機能面でも、性能面でも商用データベースに見劣りしないデータベースに進化している。さらに、地図情報機能やJSON形式データのサポートなど、新しいデータ活用のための機能もいち早く実装されている。こういった機能を用いたデータ活用のニーズが増えていることも、PostgreSQLへの関心が高まっている理由だ。
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