ユーザー企業がPostgreSQLを採用する際の課題
次に一般のユーザー企業がPostgreSQLを採用する際の課題について考えてみたい。
大きな課題の1つが、サポート体制だろう。コミュニティベースのOSSのため、利用していて課題にぶつかった際には自己責任で問題解決するのが基本だ。こうしたサポートの観点から敷居が高いと感じているユーザーが多いようだ。特に日本企業の場合、自社内にPostgreSQLに精通したスキルの高いエンジニアを抱えていない企業も多い。そのため、問題の切り分けを行い、原因を追及するなどの作業を行うことが社内エンジニアだけではなかなか難しい現状がある。
問題の原因が明らかになった場合には、解決策を自分で探し、パッチを当てるなどの作業も自分で実施しなければならない。これには、ソースコードレベルでPostgreSQLに精通したエンジニアが必要になり、こうした作業を確実にこなせるエンジニアを社内で育成するのも大変だ。
また、障害などの原因が判明しても、その解決策がないという場合もあるだろう。解決策を得るには、原因の詳細をコミュニティに報告し、パッチなどを誰かに作ってもらう必要がある。
障害が深刻なもので、多くの人に影響を及ぼすものであれば、コミュニティはすぐに動いてくれるだろう。実は障害への対応は、コミュニティベースで開発、メンテナンスがなされているOSSのほうが商用製品よりも速いという声も聞こえてくる。これは極めて数多くの人が関わるコミュニティベースのOSSのメリットとも言えるだろう。
しかし、障害が自社環境のみで発生するものであったり、全体としてはそれほど影響がなかったりすると、コミュニティでのパッチ作成のプライオリティは下がる。深刻な問題でなければ次回のバージョンアップ時の対応になるかもしれない。そうなれば解決策が出てくるのを待つしかない。
また、PostgreSQLのサポート期間はメジャーバージョンアップから5年で終了する。これでは、安定したバージョンを長期にわたり利用したい企業の用途には、PostgreSQLは向かないことになってしまう。
他にも課題となるのが、データベースの信頼性や可用性などミッションクリティカルなシステムであるほどに運用上重要になる機能が一部不足している点だ。商用データベースであれば簡単に実現できることが、PostgreSQL単体ではなかなか実現できないこともある。
最近では、こうしたPostgreSQLの足りない部分を補うツールやオプション機能も多く登場している。しかし、世の中にどのようなツールや機能があり、どう組み合わせるとどんなことが実現できるのかは、自分で調べる必要がある。調べたらもちろん、それを組み合わせる環境を構築し、目的通りに動くかのテストが必要だ。それを行うのも自分たちだ。これらもまた一般企業のIT部門にはかなり敷居が高いものかもしれない。
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