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コグニティブビジネスは今や実用段階へと突入――IBM Watson Summit 2016が開催

コグニティブ技術を活用している企業がパネルディスカッション

 パネルディスカッションではIBM Watsonや機械学習をすでに活用している顧客らが活用方法や効果などを開示した。

左から日本IBM 池田 和明氏、富士重工業株式会社 武藤 直人氏、
株式会社かんぽ生命保険 廣中 恭明氏、東京大学医科学研究所 宮野 悟教授、日本IBM 吉崎 敏文氏

 まずは富士重工業の車両に搭載されている運転支援システム「アイサイト」。富士重工業と日本IBMは2016年4月、高度運転支援システムで協業を開始したと発表した。アイサイトの実験映像データ解析システムを構築、IBMクラウドや人工知能技術の活用に着手した。実験映像データの管理システムは2016年4月から運用を開始している。今後はIBMクラウドを基盤とした「IBM Watson IoT for Automotive」を活用したシステム構築を検討する。  

 富士重工業によると、1万台あたりの事故発生件数で見ると、アイサイト搭載車の事故件数は非搭載車と比べて61%少ない。富士重工業の武藤氏は「お客様の命を守るため、(実験映像)データをためて自動運転の精度を高めていきます。自動運転に安心と楽しさを」と話していた。  

 かんぽ生命保険では保険の支払業務にIBM Watsonを導入。保険契約者からの申請審査は約款のほか医療知識や法知識も必要となり、複雑な申請となるとベテランでも1人あたり1日5件処理するのが限界だという。この審査処理のスピードアップのためにIBM Watsonを導入する。  

 現時点では過去の申請履歴をIBM Watsonに読み込ませている。数百万件分にもなる全データを読み込めば、人間1人なら数千年分に相当する経験や知識をIBM Watsonが持つことになる。現時点ですでに正答率が9割となるなどいい成果を出しており、かんぽ生命保険の廣中氏は「ベテランの経験値を引き出したい」と話している。  

 東京大学医科学研究所ではヒトゲノム解析研究にIBM Watsonを用いている。ゲノム解析技術の向上で、ゲノム情報だけではなく関連した論文も毎年倍増する勢いで増えており、1人の人間では読破できない量だという。そこで関連する論文をIBM Watsonに読み込ませている。がん治療の候補となる遺伝子を探したり、治療薬の提案の一助になると期待されている。宮野教授は「臨床チームがわくわくしています」と話していた。  

 日本IBM 池田氏は「社会を変えるような新しい技術ではデータが鍵となります。2016年4月現在、世界では2000人、日本では300人のコグニティブ・コンサルタントがお客様のビジネスをご支援します」と話した。

IBMのスタートアップ企業支援、2度目の卒業式

クラスター Founder兼CEO 加藤直人氏

クラスター Founder兼CEO 加藤 直人氏

 IBMではスタートアップ支援プログラムとなる「BlueHub」を2014年から開始している。採択された企業は半年かけてメンタリングを受けながら、コンセプト作り、プロトタイプ開発、ビジネスモデル検討などを行う。起業相談などを行うサムライインキュベートや、シェアオフィスを提供しているツクルバなどが支援する。イベント当日は今年の優勝者発表があった。同時に2期生の卒業式でもある。  

 第2期となる今回のテーマは「IoT」、採択された企業は5社。見事優勝したのはVR空間上でイベントを開催するプラットフォームを開発したクラスター社が受賞した。クラスターのFounder兼CEOの加藤直人氏は「てっきり優勝者は事前に通知されているものと思っていました。まさか優勝するとは」と驚きを隠せない様子だった。

 次の第3期のテーマは「IBM Watson APIを活用したコグニティブビジネスの創造」。5月25日から募集が開始されており、説明会は6月16日に開催される。

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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