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野口悠紀雄が語る「日本の停滞を打破する究極手段」とは?

2008/11/11 15:33

世界最大のストレージベンダーEMCの主催による「EMC Forum 2008」が11月4日、「次世代情報インフラを実感する1日 ―グリーンITを実現する「企業情報インフラの全体最適化」」をテーマにグランドハイアット東京 (東京都港区六本木)で開催された。

早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授野口悠紀雄氏
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授野口悠紀雄氏

 EMCコーポレーション グローバル・マーケティング兼カスタマー品質担当主席副社長フランク・M・ハウク(Frank M. Hauck)氏、および早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授野口悠紀雄氏による基調講演のほか、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社や日本電気株式会社、ブロケード コミュニケーションズ システムズ株式会社など11社が提案する次世代データセンター技術や仮想化ソリューションなどに関するセミナーが開催され、企業のIT担当者など1000名弱が参加した。

情報ビジネスの変遷

 ハウク副社長は「EMCのビジョンと戦略」と題した基調講演で、現在ミッションクリティカルなストレージのシェアでは50%を超えるEMCが、情報化社会が向かうベクトルと、次世代の情報インフラとして要求されるソリューションをどのように認識しているかを、自社戦略をベースとしながら論じた。

 今日ではインターネットを利用する人口が増加したことにより、人が移動するだけで情報つまりストレージに保存すべきデータが日々増えている。例えば、セキュリティの分野では、屋内外に監視カメラが数多く設置されるようになり、そのデータをテラバイト単位で保存するようなことにもなっている。

 また、インターネット上のコミュニティサイトが発展していることで、コミュニケーションのためのデータも増加している。例えば米国で成長著しいSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)「Facebook」には100億枚の写真がアップロードされており、1秒間に30枚の写真が流れている。

そういった量的な変化に加えて、ユーザーがデータを扱う場所も変化している。ユーザーは、いつでもどこでもどんなデバイスでもコミュニケーションが取れることを望んでいる。モバイルコミュニケーションの要求も高く、カメラが搭載された電話が6億台も出回っている。

 ユーザーはデータを本人が管理するのではなく、70%のデータが専門家に預けられている。価値ある資産である情報を責任と規律を持って管理することが専門家には求められる。データが流動化している現在では、情報を保護しつつ、協業企業とも共有しなければならなくなっていると、2008年における情報ビジネスがそれまでと大きく変わっていることを指摘した。

 その上で、EMCでは70ドルから数億ドルまで、あらゆるストレージを1社で提供できる。プレッシャーは大きいが、プロフェッショナルとしての責任に応えていきたいと、自社の強みをアピールした。

野口悠紀雄が語るジェネラルパーパス・テクノロジー

 引き続き基調講演に登場したのは「超整理手帳」の野口悠紀雄氏。野口氏は、「ジェネラルパーパス・テクノロジー 日本の停滞を打破する究極手段」と題して、サブプライムローン破綻後の世界的な産業構造の変革のなかで、日本が選択すべき道について講演を行った。

 まず、ジェネラルパーパス技術(GPT)を「あらゆるひとがつかう技術」と定義し、その時代のGPTを使いこなせないと、その国や会社は成長できないという考え方を示した。GPTを上手く使えるかどうかは企業や社会の仕組みと深い関係があり、仕組みが適していなければ上手く使うことはできない。

 かつては「電力」がGPTであり、1970年代には蒸気機関車の釜焚き夫組合の圧力で電気機関車を効率的に運用できなかったイギリスが、電力を使いこなせないで「イギリス病」と呼ばれた。現在の日本では「IT」の分野で同じことが起きている。なぜなら企業の決定権を握っている年長者が、本質的にITを敵だと思っており、嫌々ながら最低限だけ導入しようとするからである。

 しかし、かつてヨーロッパでもっとも貧しい国だったアイルランドが、今や世界のITセンターとなって急成長をしているように、90年代は脱工業化した国が豊かになった。アメリカでもGMの経営破綻は時間の問題で、トヨタのほうが10倍の資産価値があるから日本は大丈夫ということではなく、アメリカは自動車産業をもう必要でないとして捨てている。

 代わりに、アメリカではグーグルのようなIT関連企業が現れている。トヨタは日本ではもっとも効率がよい企業だが、それよりGoogleは10倍も効率がよい。この未曾有の経済困難のなかでも、Googleは収益を上げている。投資銀行も自動車産業もダメになったなかで、利益を伸ばしている。それは不景気になるほどITが力を発揮するからだ。

 一方、日本ではITを敵だと考える経営層が、Googleを恐れている(グーグルフォビア)。Gmailすら使うことができない。自社のデータが手元から離れることに恐怖感がある。日本の企業が、グーグルフォビアを克服するのは非常に難しい。合理的に考えれば、HDDにデータを入れて持ち歩くよりも、プロフェッショナルに預けてしまったほうが安全であるはずだが、日本の企業はそういう発想の転換が伝統的にできない。

 これは、企業の経営や雇用、社会全体のあり方が間違っており、修正する必要がある。経済が大混乱に陥っているときこそ、修正のチャンスであり、そのなかでITの価値が重要。新しい技術の活用が日本に活力をもたらす最も大きな要因であり、不況のときこそIT投資が重要だと、会場に埋めた企業担当者に語りかけた。

次世代データセンターの条件

 なお本イベント開催と同時に、EMCジャパン株式会社は、次世代データセンター向けコンサルティング・サービスを提供開始したと発表した。

 EMCではこれまでもデータセンターに関するコンサルティングサービスは、企業のITインフラを最適化する「情報インフラストラクチャ・コンサルティング・サービス」のメニューの1つとして行ってきた。新しいサービスは、現在のデータセンター移転・統合に対する国内需要の拡大を背景として、既存のサービスを拡充し、データセンター移転・統合・最適化を検討する企業向けに特化して提供するもの。

 EMCジャパンでは、サービス開始に伴い、コンサルティング部門に新組織を設立し、約20名の専従技術者で事業展開を図るとしている。

【関連URL】
EMC Forum 2008
次世代データセンター向けコンサルティング・サービス
 

著者プロフィール

  • EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)

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